こども家庭庁は9月30日、「旧優生保護法問題の全面解決に向けた協議」の第3回を開いた。優生保護法被害全国原告団、同全国弁護団、優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会(優生連)の3団体が、高市早苗首相や中司宏こども政策担当相ら5閣僚に宛てた要請書を手渡し、補償金の支給認定が遅れているとして、認定を審査する部会の数と開催回数を増やすよう求めた。同日公表された資料によると、2026年8月末時点で、請求を受け付けてから6か月を超えても支給の可否が決まっていないものが103件あった。
受付から1年半たつ請求もある
こども家庭庁の資料によると、8月末時点で支給の可否が決まっていない請求は222件ある。受付からの期間別では、3か月以内が66件、3〜6か月が53件、6〜12か月が91件、12か月以上が12件だった。このうち審査会の審議を待っている段階のものが187件を占める。
ただし、請求書の書類が足りない場合や、審査会に諮ったうえで追加の情報を求められ、自治体に問い合わせている最中のものを除くと、12か月以上は0件、6〜12か月は73件、3〜6か月は52件になるという。こども家庭庁は、最大で受付から1年半程度が経過した請求もあるが、いずれも必要な書類の提出を依頼している段階だと説明している。足りていないのは、戸籍などの基本的な書類が2件、審査会が求めた追加書類が10件である。
処理が長引いている理由として、こども家庭庁は、制度の施行当初と比べて書類や当時の情報が乏しいケースが増えていることを挙げた。
審査時間を1時間延ばして滞留を解消する
認定審査会には「補償金・優生手術等一時金」と「人工妊娠中絶一時金」の二つの審査部会があり、それぞれ月1回程度開かれている。こども家庭庁は2026年9月から、毎月の開催時間を3時間から4時間に延ばし、年度内に、受付から6か月以上が経過した請求を解消することを目指すとした。
これに対し要請書は、開催時間ではなく審査部会の数そのものを増やすよう求めた。被害者が高齢であることを踏まえ、請求できても認定までに1年以上かかる事案があり「国からの謝罪と補償を受ける前に亡くなられる方も出ている」と指摘。滞留が解消されるまでの間は、遺族ではなく被害者本人からの請求を優先して審査するよう要求した。
請求は月500件から35件へ、推定被害者は2万5千人
制度の利用そのものも伸び悩んでいる。相談件数は施行直後の2025年1月が1322件だったのに対し、2026年8月は220件まで減り、累計は8659件。請求件数は2025年2月の491件が最多で、2026年8月は35件、累計は2804件となっている。認定は2026年8月が28件で、累計2028件だった。
要請書は、統計上の優生手術等の被害者が約2万5千人、人工妊娠中絶の被害者が約5万9千人と推定されるのに対し、認定件数は「あまりに少ない」としている。月ごとの相談が200〜300件、請求が数十件程度という状況は1年前の協議から変わっていないとして、障害者手帳と自立支援医療受給者証の全保有者へのリーフレット送付、国立病院・療養所での徹底的な資料調査、精神科病院への協力要請などを挙げた。件数の推移は旧優生保護法の補償金、請求2804件・認定2028件 推定2万5千件に対し1割台 月ごとの請求は500件から35件へ減るでも詳しく伝えている。
次期学習指導要領への明記も求めた
要請書は補償以外の恒久対策にも触れた。小学校から高校までのすべての段階で優生保護法問題を人権教育として取り上げることを次期学習指導要領に明記し、2026年8月31日付の「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ(素案)」に書かれた内容を確実に反映させるよう求めた。性教育のいわゆる「歯止め規定」の削除、政府から独立した国内人権機関を設けるための工程表の作成、精神保健福祉法の将来的な廃止に向けた強制入院制度の見直し、被害の記録を残す資料館の設立も挙げている。
旧優生保護法は1948年に制定され、障害や特定の疾病があることを理由に不妊手術や人工妊娠中絶を強いる根拠となった。2024年7月3日の最高裁大法廷判決は、この規定が憲法13条と14条1項に違反し、国会議員の立法行為は国家賠償法上違法だとして国の賠償責任を認めた。これを受けて補償金等の支給法が同年10月8日に議員立法で成立し、2025年1月17日に施行された。国と3団体は2024年9月30日に基本合意書を結んでおり、今回の協議はその枠組みで続けられているものである。
