茂木敏充外相と、来日中のアンッティ・ハッカネン・フィンランド国防相は10月26日午後1時25分から、東京の外務省で「防衛装備品及び技術の移転に関する日本国政府とフィンランド共和国政府との間の協定」に署名した。外務省が同日発表した。両国の間で移転する防衛装備品と技術について、目的外の使用や第三国への移転を管理する法的な枠組みを定める。署名に続いて両氏は約30分間会談し、安全保障・防衛分野を中心に今後も緊密に連携していくことで一致した。

移転した装備は「他の目的に転用してはならない」

外務省が公表した和訳によると、協定は全7条からなる。第1条で、一方の政府が、両政府が決めた個別の事業を実施するために必要な防衛装備品と技術を、相手国政府の使用に供すると定めた。対象となる事業は、国際の平和と安全に寄与するもの、共同研究・共同開発・共同生産に関わるもの、安全保障協力と防衛協力を強化するためのものとしている。

移転する装備品と技術を決めるのは、両国で設ける合同委員会だ。日本側は防衛省・外務省・経済産業省の代表者各1人、フィンランド側は国防省の代表者1人と、国防省が決める関係当局の代表者で構成する。移転の当事者や詳しい条件は、日本の防衛省・経済産業省とフィンランド国防省の間で結ぶ細目取極で定める。

管理の中心は第3条にある。受け取った側の政府は、装備品と技術を国連憲章の目的と原則、細目取極で決めた目的に適合する方法で使用しなければならず、「他の目的のために転用してはならない」と書いた。さらに、移転した側の政府の書面による事前の同意がなければ、自国政府の職員と委託先以外の者や、他の政府に移転してはならないとした。第4条では、相手国から提供された秘密情報を保護する措置をとる義務を定めている。

条 主な内容
第1条 両政府が決める事業のため、装備品と技術を相手国政府の使用に供する
第2条 移転する装備品と技術を合同委員会で決め、細目取極で条件を定める
第3条 目的外の使用を禁じ、第三者・他国政府への移転には事前の書面同意が要る
第4条 相手国から提供された秘密情報を保護する
第7条 国内手続きの完了を通告し合い、5年間有効。その後は毎年自動延長
日・フィンランド防衛装備品・技術移転協定の主な条文

出典: 外務省「防衛装備品及び技術の移転に関する日本国政府とフィンランド共和国政府との間の協定」(和文)

協定は東京で英語の正文2通を作り、署名した。効力が生じるのは、両国がそれぞれ国内手続きを終えたことを外交ルートで通告し合い、遅い方の通告が受け取られた日の2か月後の月の初日となる。有効期間は5年で、その後はどちらかの政府が90日前までに終了を通告しない限り、1年ごとに自動で延長される。協定が終わった後も、すでに移転した装備品と技術については、第3条から第6条までの権利と義務が引き続き有効となる。

武器の完成品を移転できる相手は協定の締結国に限られる

この協定が持つ意味は、日本の防衛装備の輸出ルールと結び付いている。政府は2026年4月、防衛装備移転三原則の運用指針を改正し、完成品の移転を救難・輸送・警戒・監視・掃海の5類型に限ってきた制限を撤廃した(詳しくは防衛装備の輸出、完成品の「5類型」撤廃 救難・輸送・警戒・監視・掃海に限ってきた制限をなくす 武器に当たる完成品は協定を結ぶ17か国に限定 令和8年版防衛白書)。

令和8年版防衛白書に載った改正後の運用指針によると、自衛隊法上の武器に当たる完成品の移転は、国際共同開発・生産のパートナー国への移転と、ライセンス元国からの要請に基づく提供を除き、移転した装備を国連憲章の目的と原則に適合する方法で使うことを義務付ける国際約束を、日本と移転先の国が結んでいる場合に限られる。白書は、この国際約束が防衛装備品・技術移転協定を指すと注記している。

白書によると、日本は2026年4月現在、米国、英国、オーストラリア、インド、フィリピン、フランス、ドイツ、マレーシア、イタリア、インドネシア、ベトナム、タイ、スウェーデン、シンガポール、アラブ首長国連邦(UAE)、モンゴル、バングラデシュの17か国とこの協定を結んでいる。北欧ではスウェーデンと2022年12月に署名し、同時に発効させた。フィンランドとの協定が発効すれば、同国は武器に当たる完成品の移転を検討できる相手国に加わることになる。ただし、協定は個別の移転を自動的に認めるものではなく、移転する品目は案件ごとに両政府が決める。

外相「欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分」

外務省の発表によると、会談の冒頭で茂木外相は、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分だと述べ、価値や原則を共有する戦略的パートナーであるフィンランドとこの協定に署名できたことは「大変意義深い」との考えを示した。ハッカネン国防相は、両国の安全保障分野の協力が進んでいることを歓迎すると応じた。両氏は二国間関係と地域情勢について意見を交わした。

外務省は発表で、協定によって両国間の装備品・技術協力がより緊密になり、安全保障・防衛協力の強化につながるとともに、日本の防衛産業の生産・技術基盤の維持・高度化に資することが期待されると説明した。政府は防衛産業の基盤づくりを別の場でも検討しており、10月には有識者会議に新しい法人の設立案が示された(防衛産業を支える新法人の設立を検討 政府の有識者会議に資料 財務省は利払費16.6兆円を示す)。

中立からNATO加盟へ 2019年に防衛協力の覚書

外務省の基礎データによると、フィンランドの人口は約556万人(2023年)。冷戦期は中立を志向し、1995年の欧州連合(EU)加盟後は「軍事的非同盟」を掲げてきた。2022年2月のロシアによるウクライナ侵略を受けてこの方針を転換し、同年5月にスウェーデンとともに北大西洋条約機構(NATO)への加盟を申請、2023年4月4日に加盟した。

兵力は1万9250人で、有事に動員できる兵力は約28万人とされる。兵役期間は165日、255日、347日のいずれかだ。外務省は、ロシアのウクライナ侵略後、同国がウクライナへの軍事支援を積極的に行っていると記している。

日本とフィンランドの防衛協力は、ここ数年で往来が増えている。防衛白書によると、両国は2019年に防衛協力・交流に関する覚書に署名した。2022年10月には東京で防衛相会談と第4回の防衛当局間協議を開き、2024年9月にも東京で防衛相会談を行った。2025年5月には吉田統合幕僚長(当時)が統幕長として約7年ぶりにフィンランドを訪れ、同年8月には本田防衛副大臣(当時)が同国でハッカネン国防相と会談し、防衛装備・技術協力を含む協力の強化に向けて連携することで一致した。白書は、NATOに新たに加盟したフィンランドとの防衛協力・交流の「進展が見込まれる」と記している。

装備の面では、陸上自衛隊が現有の96式装輪装甲車の後継として、フィンランドで開発された装輪装甲車(人員輸送型)AMVの取得を進めていると白書は記している。

両国の外交関係は、日本が1919年にフィンランドを国家承認したことに始まる。1944年に一時断交し、1957年に再開した。外務省の基礎データにある二国間の条約・取極は、通商航海条約(1924年)から社会保障協定(2021年)、ワーキング・ホリデー協定(2023年)まで7件で、防衛装備品・技術移転協定は安全保障分野の取り決めとして新たに加わる。