高市早苗首相は10月29日、モンゴルのニャムオソル・オチラル首相と電話で会談した。外務省の発表によると、会談は日本時間午後3時10分(現地時間午後2時10分)から約10分間。首相は10月8日にモンゴル東部のドルノド県で起きた草原火災について見舞いを述べ、被害地域の回復に向けた協力を「パッケージ」として行う考えを伝えた。オチラル首相は謝意を示した。両首脳が言葉を交わすのは、9月29日に東京で首脳会談を開いて以来、1か月ぶりとなる。

会談の中心は草原火災 専門家の報告を踏まえて支援

外務省の発表によると、高市首相は冒頭、ドルノド県の草原火災について、日本政府としても被害の大きさを深刻に受け止めているとし、モンゴル国民に心からの見舞いを述べた。

そのうえで首相は、10月27日に派遣した森林・自然環境保全分野の国際協力機構(JICA)の専門家からの報告も踏まえつつ、モンゴル政府と緊密に意思疎通しながら協力を進める考えを示した。中身として挙げたのは、モンゴルへの必要な機材の供与と、火災復興・環境回復分野での人材育成の2つで、これらを被害地域の回復に資する協力のパッケージとして行うとした。

オチラル首相は被害の状況を説明し、見舞いの言葉と支援の表明に深く感謝すると述べた。

発表には、供与する機材の種類や数量、協力の金額、人材育成の規模や時期は書かれていない。火災の焼失面積や人的被害などの被害の規模も、発表では触れていない。協力の具体像は、派遣した専門家の報告を受けて詰めることになる。

官邸のホームページ「総理の一日」は、電話会談を行った事実だけを伝え、内容は外務省のページに譲っている。電話会談は10分と短く、発表に記された話題は火災への対応と、次に述べる来年の節目の2つにとどまる。

来年は国交55周年 関係の「更なる深化」で一致

会談ではオチラル首相が、来年の日本とモンゴルの外交関係樹立55周年は重要だと言及した。高市首相は、来年に向けて二国間関係を更に深めたいと応じた。

外務省の基礎データによると、日本とモンゴルは1972年2月24日に外交関係の設定に関する交換公文を交わし、国交を結んだ。2027年がその55年目に当たる。

モンゴルは中国とロシアに挟まれた内陸国で、面積は156万4100平方キロメートルと日本の約4倍、人口は約359万1000人(2025年、モンゴル国家統計局)。外務省は、モンゴルの外交方針の基本を、中国、ロシアの両隣国と均衡のとれた関係を保ちつつ、過度に依存せず「第三の隣国」との関係を広げることだと説明している。中でも日本との関係は特に重視されているという。

両国は2022年に「平和と繁栄のための特別な戦略的パートナーシップ」の設立に関する共同声明を出し、2022年から2031年までの行動計画も定めている。

1か月前の東京会談で経済協力を幅広く確認

オチラル首相は9月27日から30日まで日本を公式訪問した。外務省によると、就任後初めての二国間訪問だった。9月29日の首脳会談は約35分間で、続けて約60分間のワーキング・ディナーを開いた。

高市首相は、モンゴルにとって最も重要な「第三の隣国」として、進化した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の下でモンゴルの自律性・強靱性を支えていくと述べた。オチラル首相は、2022年の共同声明の内容を着実に実施していく考えを示した。

両首脳は来年の55周年に当たり、この会談を「キックオフ」として経済分野をはじめとする協力の進み具合を共に確認し、連携を強めることで一致した。具体的には、11月に予定される官民合同協議会を使ってビジネス環境の整備を議論すること、租税条約の締結に向けた交渉を早く始めること、社会保障協定の予備協議を今後行うことで一致した。オチラル首相は日本貿易振興機構(JETRO)のモンゴル事務所の開設を求め、高市首相は開設に向けて協力すると述べた。

安全保障面や人工知能(AI)など新しい分野での協力についても議論していくことで一致した。国際社会での協力では、高市首相がモンゴルの2047年の国連安全保障理事会選挙への立候補を支持すると伝え、拉致問題へのモンゴルの理解と協力に改めて謝意を示した。

10月29日の電話会談では、この東京会談で確認した55周年に向けた関係強化を、両首脳が改めて言葉にした。高市首相は10月20日にもフィリピンのマルコス大統領と約20分間電話で会談している(高市首相、マルコス大統領と20分の電話会談 11月のASEAN関連首脳会議とAZEC首脳会合で協力確認)。

空港拡張に円借款1582億円 援助の積み上げは3700億円超

9月の会談では、首都ウランバートル近郊のチンギスハーン国際空港を拡張するための円借款の交換公文が署名・交換されたことを、両首脳が歓迎した。

JICAの発表によると、JICAは9月29日、東京でモンゴル政府と「チンギスハーン国際空港拡張事業」の円借款貸付契約に調印した。借款の上限は1582億8400万円で、金利は1.10%、償還期間は据置10年を含む40年。新しい旅客ターミナルビルや誘導路、駐機場、アクセス道路などを整備し、2033年12月の完成を予定する。同空港は円借款で整備されて2021年に開港し、開港以来、日本企業が運営に参画している。

外務省の基礎データによると、日本の対モンゴル援助は2023年度までの累計で、円借款が1829億4400万円、無償資金協力が1287億1600万円、技術協力が603億7700万円に上る。合わせると3720億円余りとなる。今回の火災への協力が、どの枠組みで、どれだけの額になるかは発表されていない。

人の行き来と貿易の規模は次の通り。

項目 数値 時点
日本に住むモンゴル国籍の人 2万1186人 2025年6月
モンゴルに住む日本人 337人 2025年6月
日本からモンゴルへの輸出 約1474億2000万円 2024年
モンゴルから日本への輸入 約24億円 2024年
モンゴルに進出した日系企業の拠点 226 2024年10月
日本とモンゴルの往来と貿易

出典: 外務省「モンゴル基礎データ」(法務省在留外国人統計、外務省海外在留邦人数調査統計、財務省貿易統計など)

日本からの輸出は自動車や一般機械、建設・鉱山用機械が主で、モンゴルからは蛍石などの鉱物資源や繊維製品が入る。貿易は日本側の大幅な輸出超過になっている。日本に住むモンゴル国籍の人は、モンゴルに住む日本人のおよそ63倍に当たる。