自営業者やフリーランス、学生などが加入する国民年金第1号被保険者について、1歳未満の子を育てている期間の保険料を免除する「育児免除」が10月1日に始まる。所得の多い少ないを問わず対象になり、免除された期間も保険料を納めたものとして扱われるため、将来受け取る老齢基礎年金は減らない。

会社員の育休にあたる支援が、第1号被保険者になかった

会社員や公務員が入る厚生年金には、育児休業の間の保険料を本人分・会社分ともに免除する仕組みが以前からある。一方、自営業やフリーランスには育児休業という制度自体がなく、子どもが生まれても保険料は毎月そのまま発生していた。

厚生労働省年金局の資料は、今回の育児免除を「自営業・フリーランス等の育児期間中の経済的な給付に相当する支援措置」と位置づけている。根拠は、令和6年6月12日に公布された子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号)で、これにより国民年金法が改正され、第88条の3として育児免除が新設された。施行日は令和8年10月1日と定められている。財源には、全世代と企業から集める子ども・子育て支援金が充てられる。

国民年金第1号被保険者は、令和6年度末で1368万人。前年度末から19万人減っている。公的年金の加入者6755万人のうち、24か月分の保険料が未納になっている人は72万人だった。

母は9か月、父は12か月 産前産後免除に続けて適用

免除の対象になるのは、子を養育する第1号被保険者の父母である。「養育する」とは、子との親子関係が続いていること、子と住民票上の住所が同じであること、子が生存していることの3つをすべて満たす状態を指す。実子だけでなく養子も含み、特別養子縁組の監護期間にある子や、養子縁組里親に委託されている要保護児童も対象になる。

免除される期間は、父母で起点が違う。実母には2019年(平成31年)4月から産前産後免除(出産予定月の前後4か月)があるため、育児免除はそれに続く9か月分となる。出産予定日が令和9年5月1日であれば、令和9年8月から令和10年4月までが育児免除の対象だ。実父や養父母は、子を養育することになった月から1歳の誕生日の翌日が属する月の前月までで、原則12か月。同じ例なら令和9年5月から令和10年4月までとなる。父母の両方が第1号被保険者であれば、それぞれが免除を受けられる。

令和8年度の国民年金保険料は月額1万7920円である。この額で単純に計算すると、12か月の免除は21万5040円、9か月なら16万1280円にあたる。実母は産前産後の4か月(7万1680円)と合わせて13か月・23万2960円が免除される計算になる。ただし保険料額は年度ごとに改定されるため、実際の金額は期間のまたぎ方で変わる。

「申請免除」との違いは、年金がまるまる残るかどうか

国民年金には以前から、所得が一定額以下の人が申請して保険料を免れる全額免除の制度がある。所得の基準は「(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円」で、免除される期間は当年7月から翌年6月までの12か月だ。ただしこの全額免除では、その期間に対応する基礎年金は国庫負担分の2分の1しか支払われない。

育児免除はここが違い、産前産後免除と同じく保険料納付済期間として算入される。老齢基礎年金の満額は令和8年度で月額7万608円(昭和31年4月2日以後生まれ)で、40年・480か月納めた場合の額である。12か月分をこの満額から割り出すと月1765円になるが、全額免除だと同じ12か月が月883円ほどにしかならない。育児免除を使えば、この差が生涯にわたって残ることになる。

このほか、免除期間中も月400円の付加保険料を納めたり国民年金基金に加入したりすることはできる。死亡一時金や外国人の脱退一時金の支給要件でも納付済期間として数えられる。一方、60歳以降などの任意加入被保険者は育児免除の対象外で、会社員らの第2号被保険者と、その配偶者である第3号被保険者も対象にならない。

届け出は市区町村かマイナポータル 期限はない

届け出の受け付けは10月1日から始まる。提出先は住民登録をしている市区町村の国民年金担当窓口で、郵送でもよい。同日からマイナポータルによる電子申請もできる。親子関係と同一住所を確かめる書類は原則として添付が要らず、急ぐ場合に戸籍謄抄本や住民票を付ける扱いになっている。

産前産後免除の対象になっていて、基礎年金番号とマイナンバーが結び付き、子との関係がマイナンバーの情報連携で確認できる実母は、届け出なしで自動的に適用される。また、10月1日の時点ですでに1歳未満の子を育てている場合も、さかのぼって適用を受けられる。すでに納めた保険料は還付されるか、別の期間の保険料に充てられる。

届け出の期限(時効)は設けられていない。届書の受け付けは市区町村の法定受託事務と位置づけられ、国民年金法施行規則第86条などに基づき日本年金機構でも受け付けられる。周知のため、日本年金機構が令和8年3月以降、自治体の国民年金担当課や母子保健、児童福祉の部局にポスターとリーフレットを順次送っている。

10月1日は、パートやアルバイトの社会保険加入を分けてきた「年収106万円の壁」の賃金要件が撤廃される日でもある。こちらは別の法律(年金制度改正法・令和7年法律第74号)に基づく措置だが、働き方によって年金の扱いが変わる部分が同じ日に二つ動くことになる。