日本共産党は10月30日、自民党、日本維新の会、国民民主党の3党が前日に合意した衆院比例代表の定数31削減に反対する党アピールを発表した。比例の議席配分を修正サン・ラグ式に改める案などを「少数政党の議席獲得を阻む配分方式」と批判し、法案の阻止に向けた世論づくりを呼びかけた。31日には田村智子委員長が東京・新宿駅前で街頭演説し、反対を訴えた。3党は今の第222回国会に法案を共同で出し、成立させる方針だ。

3党合意は8項目、削減は比例代表だけ

3党が10月29日に幹事長名で交わした合意文書は、衆院選挙制度協議会が衆院議長に出した報告にある「理想の選挙制度に向けた抜本改革」の結論が出るまでの措置として、「現行制度の見直し」を8項目にまとめた。議員定数を31削減し、削減は比例代表で行う。比例の議席配分方式をドント式から修正サン・ラグ式に変え、中国ブロックと四国ブロックを統合して全国10ブロックにする。

ほかに、小選挙区と比例代表に重複して立候補した人の当選基準を有効投票数の10分の1から6分の1に引き上げる、比例で各党の当選者に不足が出たときは欠員とし供託金の没収点を引き下げる、統一名簿方式を可能にする、比例選出議員が別の党へ移った場合の政党交付金の扱いを検討する――が並ぶ。文書は「速やかに立法作業を進め、共同提案にて今第222回国会に法案を提出し成立を期す」と結んでいる。

公職選挙法第4条は衆院の定数を465人とし、うち289人を小選挙区、176人を比例代表と定める。合意どおりなら定数は434人、比例代表は145人になり、小選挙区の289人は変わらない。合意の詳しい経緯は自維国3党、衆院定数31削減で合意 比例のみ減らし配分方式も変更 今国会に法案にまとめている。

「比例を縮小し小選挙区中心を強める」

共産党のアピールは「民意を切り捨て、民主主義の土台を破壊する議員定数削減をやめさせるため力をあわせましょう」と題する。3党合意について、現行制度の問題である小選挙区制には「いっさい手をふれず」、比例を縮小して「いっそう小選挙区制中心の制度につくりかえる」ものだと位置づけた。ほとんどの野党が反対するなか、国民的な議論を経ずに一部の政党がまとめた案を多数の力で押し付けることは「断じて許されません」としている。

アピールは、定数を減らせば国民の声を国会に届ける経路が細くなり、地方の議席や少数政党が減り、若者や女性の政治進出も妨げられると主張する。国会に多様な声が届かなくなれば、政府を監視する機能が弱まるという。

根拠として示したのが、2026年2月の総選挙の結果だ。アピールによると、自民党の比例代表の得票率は36.7%だったが、小選挙区では49.2%の得票率で86.2%の議席を得た。議席に結び付かなかった票(死票)は2735万票と投票の半数に達し、死票が5割を超えた小選挙区は133にのぼるとする。比例だけを減らせば比較第一党の議席占有率がさらに高まり、自民・維新の議席が増える、というのが党の見立てだ。

2026年2月総選挙の自民党の得票率と議席占有率(共産党アピールによる)(%)

025507510036.7比例得票49.2小選挙区得票86.2小選挙区議席
出典: 日本共産党「議員定数削減をやめさせるため力をあわせましょう」(2026年10月30日)
数値で見る(単位: %)
項目%
比例得票36.7
小選挙区得票49.2
小選挙区議席86.2

党機関紙のしんぶん赤旗は11月1日付の解説記事で、2月の衆院選の得票に当てはめた自民党の試算として、自民の総議席占有率が現行の70.97%から71.43%に、維新は7.10%から7.37%に上がると伝えた。

配分方式の変更を「足きり」と批判

アピールが最も強く反対するのが、比例の議席配分方式の変更だ。現行の公職選挙法第95条の2は、各党の得票数を1、2、3……の整数で順に割り、得られた商の大きい順に議席を割り振ると定めている。これがドント式と呼ばれる方式だ。

これに対し、サン・ラグ式は1、3、5……の奇数で割る。赤旗の解説によると、合意にある修正サン・ラグ式は最初に割る数だけを1.4に置き換える方式だ。アピールは、1議席目の配分で得票を1.4で割ることは「得票の7割しか評価しない」ことになり、ブロックで1議席を争う少数政党の議席獲得を阻む「足きり」を組み込むものだと主張する。3党側の「少数政党に配慮した」という説明は当たらず、「中小政党有利」などというものではないという。

重複立候補の当選基準を6分の1に引き上げる項目も「足きり」を強めると批判した。小選挙区の結果を比例代表の当選資格に結び付ける仕組みそのものが問題だという立場だ。中国・四国ブロックの統合についても、31削減と一体で比例全体を縮小し、地方の議席を減らすものだとした。

「人口減少に応じた削減」に反論、総定数500を提案

3党側は削減数の根拠に人口の変化を挙げる。国民民主党の榛葉賀津也幹事長は29日の会談後、記者団に、自民党から2015年から2030年までの推計値を含む人口動態に基づいて31という数字が示されたと説明した。比例だけを削る理由については、小選挙区に手を付ければ人口減少が進む地方の選挙区を削ることになり、地方の声が国会に届きにくくなるためだと述べた。同党の30日の定例会見では、今回の合意は時間のかかる抜本改革までの「当面の策」だとの説明があった。

アピールはこれに反論する。人口が増えた時期に定数は増やしてこなかったのに、将来の人口減少を理由に減らすことに「一片の道理もありません」とした。主要国は人口11万〜15万人に下院議員1人を置くのに対し、日本は人口26万人に衆院議員1人で、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国で36番目の低さだと指摘する。1925年の男子普通選挙法の制定時は人口12万人に議員1人を基準に定数を466とし、現在の465は普通選挙100年の歴史で最少だという。

2016年の前回の定数削減の際、衆院議長の下の有識者調査会が「削減する積極的な理由や理論的根拠は見出し難い」と答申した経緯にも触れ、これを国会論議の前提とすべきだとした。そのうえで、党として総定数を500に戻すよう提案している。

アピールは、定数削減が維新の連立入りに際し、裏金問題や企業・団体献金の禁止を棚上げする「すり替え」として持ち出されたとも批判した。「身を切る改革」という説明に対しては、「切られるのは国民の代表」だと反論している。

田村委員長が新宿で街頭演説

赤旗の報道によると、共産党は10月31日、東京・新宿駅東口で街頭宣伝を行った。田村委員長は「多様な意見を切り捨て、与党による独裁的な政治を進めるための定数削減に、反対の世論を緊急に広げよう」と呼びかけた。消費税の5%への恒久減税を求める声は多くの国民の要求だが国会の中では少数の主張だとして、「自民・維新は比例定数削減で、こうした声を国会から締め出そうとしている」と述べた。

塩川鉄也国対委員長は、自民と維新の連立合意の際に裏金問題を隠すために持ち出されたのが定数削減だと指摘した。30分ほどの宣伝で、定数削減に反対する請願署名に28人が応じたという。

赤旗の解説記事は、3党合意に加わった国民民主党の方針転換も取り上げた。同党が当初は与党の比例45削減案に反対していたこと、10月26日に比例19削減の独自案を決め、29日に31削減で合意したことを挙げ、他の野党と足並みをそろえていた立場から離れたと批判している。

議席の増減は試算で確かめられる

選挙制度は、どの党が何議席を得るかを直接決めるルールだ。今回の合意は定数の削減に加え、配分方式、ブロック、重複立候補の基準を同時に変える。共産党の主張は、変更の一つ一つが少数政党に不利に働くというものだが、その当否は党派別の議席の試算で確かめられる。地方の小選挙区を残すために比例だけを減らすという3党の説明も、同じ試算があれば有権者が検証できる。

修正サン・ラグ式で1議席目の割る数を1.4とするかどうかは合意文書には書かれておらず、条文で初めて確定する。赤旗は、2月の衆院選の得票に当てはめた自民党の試算があると伝えている。票を投じる側から見れば、配分方式とブロック統合を反映した党派別の議席の試算を、3党が法案とともに示すべきではないか。