国民民主党は10月26日、党の政治改革・行政改革推進本部と選挙制度調査会の合同会議を開き、衆議院の選挙制度見直しを巡る与野党の協議について党の方針をまとめた。比例代表での議員定数の削減を、抜本改革までの「1回限りのつなぎ」に限ることなどを条件に受け入れる。協議会の座長が示した31削減については、2015年と2025年の国勢調査の確定値を比べて削減率を計算するよう申し入れる。古川元久政治改革・行政改革推進本部長は会議後の会見で「単純に計算すると19(削減)という形になります」と述べた。

合同会議で了承した事項

党が公表した会見の記録によると、古川氏はまず、協議会の鈴木馨祐座長が示した案のうち、定数削減以外の事項について了承したと説明した。挙げたのは、比例代表の議席配分方式を「修正サン・ラグ式」に変更すること、重複立候補者の当選基準を引き上げること、当選者が不足した場合に欠員とすること、供託金を引き下げること、比例代表選出の議員が離党した場合の政党交付金の扱いを定めることだ。古川氏はこれらを列挙したうえで「この4つについては了とするということで確認をいたしました」と述べた。記録の上では5つの事項が挙がっており、党がどの事項をまとめて1つと数えたのかは記録からは読み取れない。

いずれも、現行の公職選挙法の仕組みを部分的に改める内容だ。比例代表の議席配分について、同法第95条の2は、各党の得票数を1から名簿登載者の数までの整数で順に割り、得られた商の大きい順に議席を割り振ると定めている(ドント式と呼ばれる)。修正サン・ラグ式は、割る数の取り方をこれと変える方式だ。

重複立候補の当選基準は、小選挙区で落選した候補者が比例代表で復活当選できる条件を指す。現行法では、小選挙区での得票が有効投票総数の10分の1(第93条が定める供託金没収の水準)に届かなかった候補者は、比例名簿に載っていないものとみなされる。これを引き上げれば、復活当選できる候補者は減る。

当選者の不足は、割る数を名簿の人数までに限る第95条の2の定めから起きる。得票に見合う議席が名簿の人数を上回っても、その党は名簿の人数を超えて議席を得られず、残りの議席は他党の商に回る。座長案は、この場合に議席を他党に回さず欠員にする。供託金は、第92条が小選挙区の候補者1人につき300万円、比例代表の名簿登載者1人につき600万円(小選挙区との重複立候補者は300万円)と定めている。

削減幅「19」の計算根拠

焦点の定数削減について、古川氏は、座長案の31削減は「2015年(の国勢調査結果)と2030年の推計(人口)の比較」によるものだと説明した。そのうえで「つなぎの措置としては確定値が出ている2015年と2025年を比較して削減率の計算をすべきではないか」と述べ、国民民主党として申し入れる考えを示した。

記者から、昨年12月の党の試算では人口2.9%減で14削減だったと指摘されると、後藤斎選挙制度調査会長は、当時は国勢調査の速報値を使っていたことと、日本人人口と総人口の違いを挙げた。今回は日本人人口に絞って19と試算したという。後藤氏は「与党の31が日本人人口だったので、それに合わせた形」とも述べた。

衆院の定数は公職選挙法第4条で465人と定められ、うち289人が小選挙区、176人が比例代表だ。削減を比例代表だけで行う場合、案ごとの構成は次のようになる。

現行 国民民主の提案 座長案 与党の法案
削減数 - 19 31 45
定数 465人 446人 434人 420人
比例代表 176人 157人 145人 131人
比例の割合 約38% 約35% 約33% 約31%
比例代表だけで定数を削減した場合の衆院の構成(小選挙区は289人のまま。割合は本紙計算)出典: 国民民主党「ぶら下がり会見」(10月26日)、衆議院「衆議院議員の選挙制度改革及び定数削減に関する法律案要綱」、公職選挙法第4条

19は党の試算で、古川氏も「単純に計算すると」と前置きした。記者から2025年を基準にする案は条件なのかと問われると、古川氏は「条件というか、我々としての考え方として申し上げる」と答えた。

「1回限りのつなぎ」とする条件

古川氏は「今回の削減はあくまでつなぎの1回限りのもの」だと強調した。抜本改革での定数は選挙制度と一体で決めるべきもので、「現行の定数が次の抜本改革の時にも既定路線となるものではありません」と述べた。抜本改革では「削減ありきではなく」、選挙制度全体を見直して必要な代表の数を議論することが大前提だと確認したうえで、条件付きで削減を受け入れるという。

比例代表だけで減らすことについては「本来は現行の数を維持すべきところ」だとしながら、「やむを得ず苦渋の判断」として了承すると述べた。理由に挙げたのは区割りの作業だ。2025年の国勢調査の確定値に基づき、衆議院議員選挙区画定審議会が小選挙区の区割りを見直す作業を進めており、小選挙区を減らせばその作業を中断することになるという。区割り審の審議の状況は衆院の区割り審、10月20日に区割り基準の審議入り 鳥取1区との較差2倍以上は18選挙区で伝えた。

「1回限り」の意味を問われると、古川氏は、次の衆院解散までに抜本改革が間に合わなければ現行制度で選挙を行うしかなく、今回の見直しはその場合の範囲に限る措置だと説明した。人口減少に応じて今後も削減を重ねる考えではないとしている。

記者が、抜本改革で削減ありきでないことを確認できれば31削減も受け入れるのかと尋ねると、古川氏は「いや、そういうことではありません」と否定した。「全ての他のいろんな項目を含めて、全体として受け入れられるかどうかです」と述べ、削減数だけを切り出して判断するものではないとの立場を示した。

古川氏は、党としては今回は定数を減らす必要はないと考えているとも述べた。そのうえで、与党が比例代表の45削減を主張し、まとまらなければ現行制度のまま比例だけを削減する構えだとの見方を示し、「お互いこれ何かまとめないといけない、譲り合うことも必要」だとして、人口減少を指標に一定の削減を提案すると説明した。

座長案に加えて求める3項目

国民民主党は、座長案に入っていない事項の追加も求める。1つ目は、党が提案してきた「共通名簿」の導入だ。古川氏は、現行の小選挙区比例代表並立制は政党が集まるほど選挙で有利になるため、「無理な政党合流を促し政治不信を招いてきた側面があります」と指摘した。「穏健な多党制による連立政権を可能にする」ために導入すべきだと述べた。

2つ目は、比例代表の11ブロックの区割りの見直しで、人口の少ないブロックを統合することも含めて検討するよう求める。古川氏は、人口が減って定数が少ないブロックでは大政党が議席を独占してしまうとして、多様な民意を反映させるための見直しだと説明した。比例代表のブロックとそれぞれの定数は、公職選挙法第13条が別表第二で定めている。

3つ目は、被選挙権年齢の引き下げで、合同会議で明確に盛り込むよう求める声があったという。古川氏は、これらを鈴木座長に伝える考えを示した。後藤氏は、合同会議の後の交渉を古川氏に一任したと述べた。

他の野党が比例だけの削減に反対していることを踏まえ、党の考え方への賛同を働きかけるかとの質問には、古川氏は「各党の協議会をやってますから、その場では考え方を伝えます」と答えるにとどめた。

与党の法案と協議の経過

協議の起点には、自民党・無所属の会と日本維新の会が提出した「衆議院議員の選挙制度改革及び定数削減に関する法律案」がある。衆議院の審議経過情報によると、法案は加藤勝信氏ら11人が提出者となって6月24日に受理され、6月26日に政治改革に関する特別委員会に付託された。審議結果の欄は「閉会中審査」となっている。

衆議院が公表した法案要綱によると、法案は、定数削減を含む選挙制度の見直しを、衆院議長の下に各会派の議員で設ける協議会で検討し、結論を得るとしている。結論に基づく法制上の措置は施行日から1年以内に講じるとし、2025年の国勢調査に基づく区割り審の勧告期限(2027年5月29日)を踏まえつつ、現職議員の任期満了(2030年2月7日)による総選挙までに関係法律の整備を終えるよう求めている。1年以内に措置が講じられなければ、比例代表の定数を176人から45人減らして131人とし、衆院の定数を420人とする公職選挙法の改正が施行される仕組みだ。

与野党9党による協議の経過は衆院選挙制度の9党協議、与党が比例45減を再主張 公明「3対2の割合を前提に」で伝えた。国民民主党の方針は、比例だけの削減という与党側の枠組みを受け入れる一方、削減幅を国勢調査の確定値に基づく数に抑え、削減を今回限りとする内容だ。古川氏はこの方針を協議の場で座長と各党に伝える。