総務省は、衆議院議員選挙区画定審議会の第16回会合を10月20日に開いたと公表した。議事要旨は「『区割り改定案の作成方針』について審議が行われた」の1行で、会合は同日午後4時から総務省5階の選挙部会議室で開かれた。作成方針はいわゆる区割り基準にあたり、審議会が6月3日に確認した進め方では、各選挙区のレビュー、都道府県知事への意見照会に続く3番目の段階に位置づけられている。小選挙区の線引きをどう引き直すかの物差しを決める作業に、審議会が入ったことになる。
公表されたのは次第と1行の議事要旨だけ
会合の次第は「1.開会」「2.議事」「3.閉会」の3項目で、議事として「区割り改定案の作成方針について」と「その他」が挙がっている。会議資料として公表されたのは、この次第1点だけだった。第14回では「令和7年国勢調査人口(確定値)に基づく計算結果の概要」、第15回では「都道府県知事への意見照会の概要」という資料が併せて公表されていたのに対し、今回は審議の材料が外に出ていない。
審議会は非公開で開かれており、総務省が後から公表するのは日時、場所、議事要旨、会議資料に限られる。どの委員がどの県のどの選挙区についてどう発言したかは分からない。作成方針そのものが決まったのか、審議の途中なのかも、1行の議事要旨からは読み取れない。10月6日の第15回の議事要旨が「意見照会を行うこととされた」と結論を明記していたのと比べると、今回は「審議が行われた」で止まっており、決定には至っていないと読むのが自然である。
審議会は衆議院議員選挙区画定審議会設置法に基づいて総務省に置かれている。総務省の説明によれば、その所掌事務は「衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定に関し、調査審議し、必要があると認めるときは、その改定案を作成して内閣総理大臣に勧告を行う」ことである。区割りを最終的に決めるのは国会が通す法律だが、その原案をつくるのは議員ではなくこの審議会で、線引きを政治の手から一段遠ざける仕組みになっている。今期の委員の任期は2024年4月11日に始まり、第1回会合は同年5月9日に開かれた。
6月に決めた5段階の、3段目に入った
6月3日の第5回会合では、令和7年国勢調査人口(速報値)に基づく試算結果の概要が報告されたうえで、今後の進め方が議論された。議事要旨によれば、各選挙区のレビュー、都道府県知事への意見照会、区割り改定案の作成方針(いわゆる区割り基準)の審議・決定、決定した区割り基準に基づく具体的な区割りの審議、勧告という流れで進めることが確認されている。
この5段階に照らすと、各会合の位置づけは次のようになる。
| 段階 | 内容 | 審議した会合 |
|---|---|---|
| ① | 各選挙区のレビュー | 第6回〜第12回(6月16日〜8月31日) |
| ② | 都道府県知事への意見照会 | 第13回・第14回・第15回(9月4日〜10月6日) |
| ③ | 区割り改定案の作成方針の審議・決定 | 第16回(10月20日)で審議 |
| ④ | 区割り基準に基づく具体的な区割りの審議 | これから |
| ⑤ | 勧告 | これから |
レビューは7回に分けて行われた。6月16日の第6回で北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県の7道県を扱ったのを皮切りに、7月1日の第7回で茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、7月21日の第8回で東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、7月29日の第9回で山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、8月6日の第10回で滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、8月25日の第11回で鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、8月31日の第12回で福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県と進み、47都道府県すべての人口と選挙区の現状を一巡している。6月から10月までの4か月半で12回を数える密な日程である。
基準になるのは鳥取1区の25万7657人
作成方針で何を検討するかは、10月6日の第15回会合で公表された「都道府県知事への意見照会の概要」に書かれている。付記された検討事項は2つで、1つは「前回(令和4年改定)の作成方針並びに平成25年改定及び平成29年改定の考え方と同様に、議員1人当たり人口最少県の最少選挙区を基準に選挙区の改定をすること」、もう1つは「前回の作成方針と同様に、第51回衆議院議員総選挙の当日有権者数で較差2倍以上となっている状況も考慮すること」である。過去3回の改定と同じ考え方を踏襲する方向が、知事に意見を求める前の段階で示されていた。
この基準に当たる選挙区が鳥取1区である。9月29日に公表された計算結果の概要によると、令和7年国勢調査の確定値で鳥取1区の日本国民の人口は25万7657人で、289ある小選挙区のうち人口の少ない方から5番目にあたる。鳥取1区は、議員1人当たりの人口が最も少ない県の中で最も人口の少ない選挙区にあたる。この25万7657人の2倍にあたる51万5314人以上の選挙区は18あり、逆に鳥取1区を下回る選挙区は4ある。合わせて22の選挙区が、基準から見て範囲の外に出ている計算になる。
人口が最も多いのは福岡2区の55万8760人で、福岡1区の54万5892人、福岡3区の54万5355人、茨城6区の54万4756人、宮城1区の54万3517人が続く。最も少ないのは石川3区の24万5613人で、京都5区の25万3819人、茨城5区の25万6950人、秋田2区の25万7260人、鳥取1区の25万7657人と並ぶ。最多の福岡2区と最少の石川3区を比べた最大較差は2.275倍で、令和2年の1.999倍、平成27年の1.956倍から2倍を超えた。なお石川3区との比較で較差2倍以上となる選挙区は40ある。この確定値の中身は1票の格差、衆院小選挙区は2.2750倍 2倍以上が40選挙区 最多の福岡2区55万8760人、最少の石川3区24万5613人で伝えた。
衆院小選挙区の最大較差の推移(倍)
数値で見る(単位: 倍)
| 項目 | 倍 |
|---|---|
| 平成27年 | 1.956 |
| 令和2年 | 1.999 |
| 令和7年 | 2.275 |
較差が2倍を超えたことには、人口そのものの減りも効いている。確定値の日本国民の人口は1億1951万770人で、令和2年の1億2374万3639人から3.42%、平成27年の1億2534万2377人から4.65%減った。議員1人当たりの日本国民の人口は41万3532人で、令和2年の42万8179人、平成27年の43万3711人から下がっている。全体が縮むなかで減り方に地域差があるため、選挙区ごとの開きが広がる形になっている。
知事には4項目を聞いている
第15回で決まった意見照会は4項目からなる。全都道府県に対しては「区割り改定案の作成方針について」「現行の区割りについて」「その他、特段の意見があれば」の3項目を、該当する都道府県に対してはさらに「区割り改定案の作成について」を聞く。該当するのは、議員1人当たり人口が最少の県と、現行の区割りで議員1人当たり人口最少県の最少選挙区と比べて較差2倍以上または当該選挙区未満の選挙区を持つ都道府県である。照会の中身は衆院の区割り、知事への意見照会を正式決定 改定の基準は人口最少県の最少選挙区=鳥取1区の25万7657人 2月の総選挙の有権者数も考慮で詳しく伝えた。
意見照会は第13回(9月4日)から3回にわたって審議された。第14回(9月30日)では確定値に基づく計算結果の概要が報告されるとともに照会の審議が行われ、第15回(10月6日)で「都道府県の知事への意見照会を行うこととされた」と決まった。第16回が作成方針の審議に入ったことから見て、知事からの回答が審議会に届く段取りになっているとみられるが、回答の期限や内容については公表された資料に記載がなく、確認できていない。
残る作業は2段階 勧告期限は2027年5月
区割り改定案の勧告は、国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものとされている(衆議院議員選挙区画定審議会設置法第4条第2項)。今回は速報値が公示された2026年5月29日が起点で、期限は2027年5月となる。10月20日の時点で残りは7か月余りであり、ここから作成方針を固め、それに基づいて289の選挙区の具体的な線引きを審議し、勧告まで持っていく必要がある。
作業の範囲は法律で絞られている。今回の区割り改定案の作成にあたっては、各都道府県の選挙区の数は変更しないものとされている(同法第3条第3項)。都道府県をまたいで選挙区の数を振り替えることはせず、各県に割り当てられた数を保ったまま県内の線引きを引き直す作業に限られる。改定案の作成には速報値ではなく確定値を使う。
ここで決まる区割りは、次の衆院選で有権者がどの選挙区に属するかを直接左右する。県内の線引きを引き直す以上、どの市区町村がどの選挙区に入るかが変わり、自治体が複数の選挙区に分かれる形になることもある。審議会がどの段階まで進んだかは、会合ごとに公表される議事要旨でしか外からは分からない。次の会合で作成方針が決まれば、公表される資料に基準の中身が示されることになる。
