防衛省と内閣官房は10月3日、北朝鮮が同日午前6時36分ごろ、北朝鮮東岸付近から少なくとも1発の弾道ミサイルを北東方向に向けて発射したと発表した。発射された弾道ミサイルは最高高度が約90キロ、飛翔距離は約680キロで、落下したのは日本海にある日本の排他的経済水域(EEZ、沿岸から200海里=約370キロまでの海域で、沿岸国が漁業や資源開発の権利を持つ)の外側と推定している。政府は付近を航行する航空機や船舶へ情報提供を行い、被害の報告は確認されていない。

9月20日の2発より高く、遠くへ

防衛省と内閣官房は、発射のたびに同じ様式の資料を公表している。それによると、9月20日は2回の発射があった。1発目は午後3時ごろで最高高度は約60キロ、飛翔距離は約440キロ。2発目は午後5時54分ごろで最高高度約70キロ、飛翔距離は約590キロだった。今回はこの2発のいずれよりも高く、遠くへ飛んだことになる。落下地点がEEZの外側と推定された点は3発とも同じだ。北朝鮮、20日に2回弾道ミサイル発射 2発目は午後5時54分ごろで約590キロ飛翔 1発目の約440キロより遠くへ

ミサイルの種類は公表されていない。防衛省と内閣官房は「詳細については現在日米韓で緊密に連携して分析中」としている。

発射から4分で首相指示 情報は官邸対策室へ

政府の動きは速かった。海上保安庁は午前6時39分に「ミサイル発射情報」を出して船舶に注意を促し、6時48分には「すでに落下したものとみられます」と落下推定情報を流した。高市早苗首相は6時40分付で、①情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対して、迅速・的確な情報提供を行うこと②航空機、船舶等の安全確認を徹底すること③不測の事態に備え、万全の態勢をとること——の3点を指示した。発射から4分後である。

政府は官邸危機管理センターに設置している「北朝鮮情勢に関する官邸対策室」で関係省庁からの情報を集約し、緊急参集チームを招集して対応を協議した。防衛省では小泉進次郎防衛相が首相指示を受け、米国や韓国などと緊密に連携して情報収集・分析に全力を挙げること、不測の事態の発生に備えて警戒監視に万全を期すことの2点を指示している。高度や飛距離といった諸元が公表されたのは午前9時20分で、発射からおよそ2時間44分後だった。

政府は「一連の北朝鮮の行動は、我が国、地域及び国際社会の平和と安全を脅かすもの」であり、「関連する安保理決議に違反し、国民の安全に関わる重大な問題」だとして、北朝鮮に厳重に抗議し、強く非難した。

金正恩体制下で214発 低く変則的に飛ぶ型が増えている

防衛省が8月にまとめた資料「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」によると、金正恩氏が最高指導者となった2012年から2026年8月4日までに、防衛省が公表した弾道ミサイル等の発射は214発、核実験は4回にのぼる。2022年の1年だけで少なくとも59発(31回)が発射されており、同省はこれを「かつてない高い頻度」と記している。

同じ資料は、2019年5月以降、北朝鮮が低空を変則軌道で飛翔できる新型の短距離弾道ミサイル(SRBM)などを繰り返し発射していると分析している。弾道ミサイルは本来、山なりの高い軌道を描いて飛ぶ。軌道が低く変則的になるほどレーダーで捉えられる時間が短くなり、迎撃は難しくなる。今回の高度約90キロ・飛距離約680キロという組み合わせも、通常の弾道軌道で約680キロを飛ぶ場合より低い。落下地点が日本のEEZの外側であっても、備えの問題は残る。日本側の避難先の整備状況は弾道ミサイルの避難先、地下は全国4540か所 人口の5.9%分にとどまる 政府は3月にシェルター基本方針を閣議決定、目標を都道府県から市区町村単位へでまとめている。

北朝鮮は2026年2月19日から25日にかけて朝鮮労働党第9回大会を開いた。防衛省がまとめた朝鮮中央通信の報道の抜粋によると、金正恩氏は総括報告で「核兵器の数を増やし、核運用手段と活用の空間を拡張するための活動に全力をあげる」と述べ、地上および水中発射型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)システムなど今後開発する兵器を列挙した。発射が続いている背景には、この5カ年計画がある。

政府は「今後追加して公表すべき情報を入手した場合には、速やかに発表することとします」としている。