厚生労働省は10月30日、「最近の医療費の動向」(MEDIAS)の令和8(2026)年度6月号を公表した。2026年6月診療分の概算医療費は4.3兆円で、前年同月より6.6%増えた。同年4月は2.0%増、5月は0.7%減で、6月に伸びが大きくなった。医療機関にかかった延べ日数を示す受診延日数は1.1%増にとどまり、1日当たり医療費が5.4%増えた。6月は2026年度の診療報酬改定が施行された月にあたる。年度初めの4〜6月の累計は12.4兆円で、前年同期比2.6%増だった。
概算医療費とは 審査を通った明細書から集める速報
概算医療費は、医療機関が保険者に医療費を請求する際に出す診療報酬明細書(レセプト)を集計した統計である。社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険団体連合会の二つの審査支払機関で審査された明細書の点数を10倍し、医療費として評価する。医療保険と公費負担医療で支払われる分に、患者が窓口で払う自己負担分を加えた額で、はり・きゅうや全額自費で払った分は含まない。労災保険や自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)による診療も対象外である。
厚労省保険局調査課が毎月まとめ、診療月からおよそ4か月後に公表する。年度が終わってから1年半余りかけて集計する確定値の「国民医療費」とは別の統計で、医療費の足元の動きをいち早く知るための速報値と位置づけられる。2025年度の国民医療費はまだまとまっていないが、概算医療費では2025年度が49.2兆円となり、前年度より2.6%増えた。1人当たりは40.0万円で3.1%増だった。
確定値の側の最新の数字は、国民医療費、2024年度は48兆8100億円で過去最高 1人当たり39万4300円で伝えた2024年度分である。二つの統計は対象の範囲と集計の方法が違うため、額を直接比べることはできない。
6月は6.6%増 受診日数は横ばいで単価が伸びる
概算医療費の伸びは、受診延日数の伸びと1日当たり医療費の伸びに分けて読むことができる。受診延日数は患者が医療機関にかかった日数の延べ数で、薬局の調剤では処方箋の枚数を数える。1日当たり医療費は、医療費の総額をその日数で割った値である。
2026年6月の受診延日数は2.1億日で、前年同月比1.1%増だった。4月は0.8%減、5月は3.2%減で、4〜6月の累計では1.0%減となった。2025年度も通年で0.7%減っており、患者が医療機関にかかる日数そのものは増えていない。
一方、1日当たり医療費は6月に2万500円となり、前年同月の1万9500円から5.4%増えた。4月は2.9%増、5月は2.5%増だった。4〜6月の累計は3.6%増で、2025年度通年の3.3%増を上回った。6月の医療費の伸び6.6%のうち、大半は1日当たりの単価の上昇による。
制度別では、6月の75歳以上(後期高齢者医療)の医療費が8.1%増、会社員らが加入する被用者保険が7.1%増、国民健康保険が3.2%増だった。1人当たり医療費は75歳以上が8.6万円で前年同月比5.9%増、75歳未満は2.3万円で6.5%増。75歳以上の1人当たり医療費は75歳未満のおよそ3.7倍にあたる。2025年度通年の1人当たりは、75歳以上が98.9万円、75歳未満が26.1万円だった。
入院の1日当たり8.8%増 大学病院は11.2%伸びる
診療の種類別に6月の伸びを見ると、医科入院(食事療養等を含む)が8.5%増と最も大きかった。受診延日数は0.3%減ったが、1日当たり医療費が8.8%増えた。食事療養等を含む入院1日当たり医療費は4万8800円で、前年同月の4万4800円から4000円上がった。
外来にあたる医科入院外は4.5%増で、1日当たり医療費が4.1%、受診延日数が0.4%それぞれ増えた。歯科は9.0%増で、1日当たり医療費の6.1%増に受診延日数の2.8%増が加わった。薬局の調剤は4.7%増で、処方箋1枚当たりの医療費が4.2%、処方箋の枚数が0.5%増えた。訪問看護療養は9.2%増で、2025年度通年では0.82兆円と前年度から14.1%増えている。
医療機関の種類別では、医科の病院が8.0%増、医科の診療所が3.2%増で、病院の伸びが診療所を大きく上回った。病院の中では大学病院が11.2%増、国や自治体などが開設する公的病院が8.7%増、医療法人などの法人病院が6.5%増だった。個人病院は5.0%減った。歯科の診療所は9.1%増、保険薬局は4.7%増だった。
2026年6月の診療種類別医療費の伸び率(前年同月比)(%)
補正前休日数等の補正後
数値で見る(単位: %)
| 項目 | 補正前 | 休日数等の補正後 |
|---|---|---|
| 医科入院 | 8.5 | 7.5 |
| 入院外 | 4.5 | 1.5 |
| 歯科 | 9.0 | 5.9 |
| 調剤 | 4.7 | 1.4 |
診療報酬改定が6月施行 統計は伸びの要因を分けていない
6月は、2026年度の診療報酬改定が施行された月にあたる。診療報酬は、保険診療で医療機関や薬局が受け取る報酬の公定価格である。厚労省の改定の概要によると、今回の診療報酬本体の改定率は2026年度と27年度の2年度平均で3.09%の引き上げで、2026年度分は2.41%。6月に施行された。
引き上げ分の内訳には、医療従事者の賃上げに充てる1.70%(2年度平均)、物価上昇への対応の0.76%、2024年度改定以降の経営環境の悪化を踏まえた緊急対応の0.44%などがある。緊急対応分のうち0.40%は病院に配分された。入院時の食費の基準額も6月1日から1食当たり40円引き上げられた。一方、薬価は2026年4月に0.86%引き下げられている。
MEDIAS自体は、医療費の伸びを改定の影響と、それ以外の要因とに分けて示していない。このため、6月の伸びのどれだけが改定によるものかは、この統計からは分からない。ただ、受診延日数がほぼ横ばいのまま、1日当たり医療費が入院を中心に大きく伸びたこと、病院の伸びが診療所を上回ったことは、改定の配分が病院に厚い内容だったことと時期が重なる。前年の2025年6月は、医療費の伸びが3.8%、1日当たり医療費の伸びが3.4%だった。
休日数の差を補正すると4.4% 5月の減少は休日の多さ
医療費は医療機関の開いている日の数によって増減する。日曜・祝日が1日多いと、その月の医療費の伸びは2.2%程度下がる計算になると、厚労省は補正係数を示している。土曜日や、休日でない木曜日の数、連休の数も影響する。
| 月 | 伸び率(補正前) | 休日数等の補正後 | 日曜・祝日等の前年差 |
|---|---|---|---|
| 2026年4月 | 2.0% | 2.6% | 0日 |
| 2026年5月 | ▲0.7% | 1.4% | +1日 |
| 2026年6月 | 6.6% | 4.4% | ▲1日 |
| 4〜6月計 | 2.6% | 2.8% | 0日 |
2026年6月は前年同月より日曜・祝日等が1日少なかった。この影響を除くと、6月の伸びは4.4%となる。逆に5月は日曜・祝日等と土曜日がそれぞれ1日多く、補正前の0.7%減は補正後には1.4%増となる。4〜6月の累計では補正前2.6%、補正後2.8%で、ほぼ同じ水準だった。
補正後で見ても、6月の伸びは4月の2.6%、5月の1.4%を上回る。診療種類別の補正後の伸びは医科入院が7.5%と高く、医科入院外は1.5%、調剤は1.4%にとどまった。外来と調剤では6月の伸びの多くが休日数の違いで説明でき、入院では休日数を補正しても伸びが大きいままとなっている。
概算医療費は速報値で、今後見直されることがある。改定後の医療費の動きが一時的なものか続くものかは、7月以降の診療分が公表されるまで判断できない。
