京セラ(東証プライム)は11月2日、2027年3月期の連結売上高予想を7月時点の2兆800億円から2兆1200億円に引き上げた。4月の期初予想は1兆9400億円で、引き上げは7月30日に続いて2回目となる。同日発表した4〜9月期(中間期)の連結決算は、売上高が1兆783億円(前年同期比8.8%増)、営業利益が656億円(同56.4%増)、親会社の所有者に帰属する中間利益が734億円(同32.2%増)だった。AIデータセンター向けの半導体パッケージやコンデンサの販売が伸び、窒化ガリウム(GaN)デバイス事業の減損損失など合計約341億円の一時損失を計上したうえで増益を確保した。通期の利益予想は、営業利益1600億円、当期利益1600億円のまま据え置いた。
4〜9月期、AIデータセンター向け部品が伸びる
京セラの事業は、半導体パッケージやファインセラミック部品を扱う「コアコンポーネント」、コンデンサなどの「電子部品」、機械工具、ドキュメントソリューション、コミュニケーションなどの事業を含む「ソリューション」の3つの報告セグメントに分かれる。
4〜9月期に売上高を押し上げたのはコアコンポーネントと電子部品だった。コアコンポーネントの売上高は3681億円で前年同期から19.7%増え、事業利益は68.1%増の504億円となった。利益率は9.8%から13.7%に上がった。このうち半導体関連部品は売上高が2211億円(24.7%増)、事業利益が314億円(64.7%増)だった。同社は決算短信で、AIデータセンター向けの高付加価値な半導体パッケージと、半導体製造装置向けのファインセラミック部品の販売が増えたと説明している。
電子部品は売上高が2152億円で23.2%増えた。事業利益は前年同期の1700万円から195億円に増えた。小型で容量の大きい積層セラミックコンデンサ(MLCC)やタンタルコンデンサが、AIデータセンター向けに伸びたという。第1四半期に不動産売却益など約30億円を計上したことと、前年同期にはシリコンダイオード・パワー半導体事業の譲渡に伴う損失約21億円を計上していたことも、前年との比較で増益に加わった。
ソリューションは売上高が5037億円で2.9%減った。2026年1月に米国の機械工具子会社の譲渡が完了し、機械工具の売上高が1569億円から1068億円に減ったためで、同社はこの影響を除けば増収だったとしている。事業利益は50.9%増の569億円だった。
| 区分 | 売上高 | 前年同期比 | 事業利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| コアコンポーネント | 3681億円 | 19.7%増 | 504億円 | 68.1%増 |
| うち半導体関連部品 | 2211億円 | 24.7%増 | 314億円 | 64.7%増 |
| 電子部品 | 2152億円 | 23.2%増 | 195億円 | 前年1700万円 |
| ソリューション | 5037億円 | 2.9%減 | 569億円 | 50.9%増 |
| 連結 | 1兆783億円 | 8.8%増 | 営業利益656億円 | 56.4%増 |
出典: 京セラ「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信」
受注も伸びた。決算説明会資料によると、4〜9月期の受注高は1兆1580億円で、前年同期の1兆190億円から13.6%増えた。電子部品の受注高は2597億円で前年同期の1807億円の約1.4倍、半導体関連部品は2291億円で同30.4%増だった。
為替も数字を押し上げた。4〜9月の平均為替レートは1ドル=159円、1ユーロ=184円で、前年同期よりそれぞれ13円、16円の円安だった。同社によると、円安で売上高は約630億円、税引前利益は約120億円押し上げられた。為替の影響を除いても増収増益だったとしている。
GaN事業で295億円の減損、一時損失は計341億円
4〜9月期の利益には、大きな一時損失が含まれる。最も大きいのは、GaNデバイス事業ののれんと無形資産の減損損失約295億円で、報告セグメントに含まれない「その他の事業」で計上した。
決算説明会資料によると、減損の対象は、京セラが2021年1月に米国のGaN製レーザー製品の開発会社を買収した際に計上したのれんと一部の無形資産である。同社は車載部品や電子機器で開発品が実用化されることを目指して事業化を進めてきた。しかし、当初の想定よりも収益化までの期間が長くかかる見通しとなり、事業計画を見直した結果、資産の回収が難しいと判断した。事業そのものは、組織体制と事業基盤を強めたうえで続けるとしている。
このほか、ソリューションの「その他」でエネルギー関連製品に係る引当金約76億円を計上した。不動産売却益などの約30億円と差し引きした一時損益は、営業利益と税引前利益の段階で約341億円の損失となった。前年同期の一時損失は約21億円だった。税効果を考えた後の中間利益への影響は約313億円の損失である。
この結果、「その他の事業」の損失は前年同期の120億円から435億円に広がった。それでも、コアコンポーネント、電子部品、ソリューションの3つがいずれも大幅な増益となり、連結の営業利益は前年同期の419億円から656億円に増えた。
通期予想、売上高を400億円上積み 利益は売却益で穴埋め
京セラは2027年3月期の通期予想を次のように見直した。売上高は2兆800億円から2兆1200億円に400億円(1.9%)引き上げた。前期実績の2兆702億円に比べると2.4%の増収となる。営業利益1600億円、税引前利益2000億円、当期利益1600億円は7月の予想のまま据え置いた。前期実績はそれぞれ1181億円、1689億円、1409億円である。
京セラの2027年3月期通期予想の推移(億円)
売上高営業利益
数値で見る(単位: 億円)
| 項目 | 売上高 | 営業利益 |
|---|---|---|
| 4月 | 19,400 | 1,300 |
| 7月 | 20,800 | 1,600 |
| 11月 | 21,200 | 1,600 |
同社は修正の理由として、4〜9月期にAIと半導体関連市場向けの部品の需要が想定を上回って拡大し、10月以降も堅調な需要が続くと見込んでいることを挙げた。利益は、各事業の大幅な増益に加え、ケミカル事業の譲渡益を計上することで、4〜9月期の一時損失の影響を補えるとして据え置いた。
ケミカル事業は、封止材やペーストを中心とする半導体関連製品と、化成品・コンポジット製品を製造・販売する事業で、コアコンポーネントの中で運営してきた。京セラは10月30日、この事業を新設会社に吸収分割で承継させ、その全株式を住友ベークライトに譲渡した。受取対価は300億円を基準とし、株式譲渡契約に基づいて価格を調整する。譲渡益は約150億円の見込みで、半導体関連部品で計上し、通期予想に反映済みとしている。
セグメント別の予想も改めた。半導体関連部品の売上高予想は4150億円から4300億円に、事業利益予想は635億円から735億円に上げた。電子部品は売上高予想を4150億円から4300億円に、事業利益予想を260億円から400億円に引き上げた。一方、「その他の事業」の損失予想は260億円から580億円に広げた。通期の為替レートの前提は1ドル=155円、1ユーロ=180円で、7月から変えていない。
通期予想から4〜9月期の実績を差し引くと、10月〜2027年3月の下期には売上高1兆416億円、営業利益943億円を見込む計算になる。営業利益にはケミカル事業の譲渡益約150億円が含まれる。
配当は年56円、KDDI株を売却し設備投資は2250億円計画
株主還元では、中間配当を前年同期より3円多い1株28円とした。期末配当も28円を予想し、年間では前期より4円多い56円となる見通しである。配当予想は変えていない。
京セラは2026年4月に2500億円の自己株式取得を決めており、9月末までに約4900万株、約1780億円を取得した。5月29日には自己株式9137万3500株を消却し、発行済株式数は14億1910万820株となった。
保有株の売却も進めた。2026年6月にKDDIの自社株公開買い付け(TOB)に応じ、KDDI株約5400万株を約1250億円で売却した。KDDI株の売却に伴って資本性証券が減ったことなどから、9月末の資産合計は3月末から489億円減って4兆5973億円となった。同社はKDDI株を含め、ほかの政策保有株式も引き続き減らすとしている。
部品の需要増に応じた投資も続く。4〜9月期の設備投資額は818億円で前年同期から7.7%減ったが、通期では前期の1490億円から50.9%多い2250億円を計画し、この計画は据え置いた。京セラの半導体部品の生産拠点をめぐる動きは「京セラ、長崎に半導体部品の新工場 9月1日開設 680億円投資 「シリコンアイランド九州」に相次ぐ拠点」で伝えている。
半導体関連企業の通期予想の見直しは、半導体試験装置大手の決算を扱った「アドバンテスト、通期予想を再び上方修正 売上高1兆8630億円に 中間期は過去最高」でも伝えている。
京セラの決算説明会資料は、4〜9月期の売上高と通期の売上高予想に「過去最高を更新」と記している。部品事業の伸びが続く一方、GaNデバイス事業のように収益化が遅れた投資の処理も今期の利益に表れた。下期は、ケミカル事業の譲渡益を含めて営業利益943億円を積み上げられるかが、据え置いた利益予想の達成を左右する。
