防災庁が11月2日、発足した。内閣に直接置く行政機関で、長は内閣総理大臣が務める。同日付の人事で、初代の事務次官に内閣府防災監の長橋和久氏が就き、総合政策、災害事態対処、防災計画、地域防災の4グループにそれぞれ統括官を置いた。防災庁は同日、組織の使命を示す「防災庁ミッション・基本理念・行動原則」と、防災技術への投資を進める「攻めの防災庁」の方針も公表した。

内閣官房防災庁設置準備室によると、2日夕には東京・永田町の中央合同庁舎第8号館で、首相らが出席する看板掛けと、首相の訓示などを行う発足式が予定されていた。訓示の内容は、この記事を書いた時点で首相官邸と防災庁のいずれのサイトにも載っていない。

初代次官は長橋和久氏 統括官4人と審議官3人

防災庁が「閣議後公表資料」として出した人事によると、事務次官の長橋和久氏の下に、統括官4人を置いた。総合政策担当は内閣府政策統括官(防災担当)だった横山征成氏、災害事態対処担当は総務省大臣官房付で内閣府大臣官房審議官(防災担当)を併任していた田辺康彦氏が務める。防災計画担当には林正道氏、地域防災担当には岡本直樹氏が就いた。2人とも内閣官房内閣審議官で、内閣府大臣官房審議官(防災担当)を併任していた。

審議官は大塚大輔、中尾晃史、工藤陽代の3氏で、いずれも内閣府の大臣官房審議官からの異動だ。大塚氏は総合政策と防災計画、中尾氏と工藤氏は災害事態対処と地域防災を受け持ち、それぞれ2つのグループを兼ねる。

幹部の多くは、内閣府で防災を担ってきた職員がそのまま新しい組織の同じ分野に移った。参事官の現職欄には、国土交通省、内閣官房、復興庁といった他の役所から内閣府防災に併任で来ていた職員の名前も多い。防災技術と研究開発を担当する参事官には、国立研究開発法人の防災科学技術研究所で企画部長を務めていた河原卓氏が就いた。広報担当参事官の西口彩乃氏は、11月1日付の採用と記されている。

防災庁設置法は、防災庁に事務次官を1人置き、防災大臣を助けて庁務を整理し、各部局の事務を監督すると定めている。

4グループと参事官21人の分担

人事資料に参事官として名前が載るのは21人で、4グループに次のように分かれる。

グループ 統括官 参事官の担当
総合政策 横山征成氏 総括、政策調整、広報、会計、被災者生活再建、防災産業・研究開発(6人)
災害事態対処 田辺康彦氏 災害緊急事態対処、訓練・人材育成、救援(3人)
防災計画 林正道氏 防災計画、調査・企画、復旧・復興、国際(4人)
地域防災 岡本直樹氏 地域防災力強化、防災デジタル、普及啓発・防災教育、NPOボランティア連携、避難支援、生活環境、食事支援、物資支援・物資輸送(8人)
防災庁の4グループと参事官の担当出典: 防災庁「防災庁人事異動(令和8年11月2日付)」

最も多くの参事官を抱えるのは地域防災グループだ。避難支援、生活環境、食事支援、物資支援・物資輸送と、避難所での暮らしや物資の届け方をそれぞれ別の参事官が受け持つ。内閣府時代には「防災デジタル・物資支援担当」や「普及・防災教育・NPOボランティア連携担当」のように1人の参事官が兼ねていた分野も、防災庁では担当を分けた。

このほか、「船舶活用医療推進室」を置き、室長を林統括官、次長を工藤審議官、参事官を防災計画担当の駒田義誌氏がそれぞれ兼ねる。

ミッションは「世界一の防災大国」

防災庁がこの日公表したミッションは、「国難級の大規模災害においても国民の生命・身体・財産を守り抜くため、災害対応の『司令塔』として我が国の防災体制を強化し、世界一の防災大国を目指す」というものだ。

基本理念は4つある。平時から事前防災を進めて災害への予防力と対応力を高めること、発災時には国民の生命と人権の保護を最優先に被害を最小にすること、発災後は国家と社会の機能を保って早期の復旧と「より良い復興」を成し遂げること、そして過去の教訓を受け継ぎ、経済成長や世界の防災対策に貢献する「攻めの防災庁」を目指すことだ。

職員の行動原則には、「人命・人権最優先の行動」「俯瞰的・横断的に物事を捉える」「あらゆる関係者をつなぐ」「戦略的な情報発信」「絶え間ない専門性の向上」の5つを挙げた。省庁や自治体、企業、NPO、大学の「役割の狭間にある課題」や「対応の抜け・漏れ」を見つけて解消することを、司令塔の役目として書き込んでいる。防災庁のサイトの冒頭には「ともに考え、ともに備え、ともに守る。」との標語を掲げた。

防災庁は発足の当日、国民と自治体、13の府省庁に向けて事前防災の徹底を求める要請も出している。内容は防災庁、発足日に「緊急要請」 家庭に「最低3日、できれば1週間分」の備蓄求める 省庁には勧告もで伝えた。

「攻めの防災庁」 防災技術に5年で2.6兆円

防災庁の防災産業・研究開発担当参事官が出した資料によると、政府の日本成長戦略は、防災技術の開発、製品化、実装に5年間で2.6兆円の官民投資を想定している。防災庁は司令塔として、関係省庁の制度や事業も使いながら投資を促す。平時や他の分野でも使える「デュアルユース」も視野に入れ、災害への備えが防災産業の振興と海外展開につながるようにするとしている。

資料は、開発と実装を戦略的に進める技術の例として5つを挙げ、それぞれの年間の海外市場の規模を示した。

防災技術の年間海外市場規模(推計)(億円)

遠隔施工15,200林野消火14,300防災食7,500災害トイレ2,000SAR衛星1,900
内閣府(防災担当)が推計した原則令和7年の規模。5つ合わせて年約4兆円出典: 防災庁「『攻めの防災庁』による戦略的な危機管理投資について」
数値で見る(単位: 億円)
項目億円
遠隔施工15,200
林野消火14,300
防災食7,500
災害トイレ2,000
SAR衛星1,900

最も大きいのは自動・遠隔施工の約1兆5200億円で、人手不足への対策になり、人が近づけない環境での応急対策にも欠かせないとする。林野火災の消火技術は約1兆4300億円で、気候変動に伴って世界で林野火災が増える傾向にあることを理由に挙げた。防災食は約7500億円で、日本が国際標準化機構(ISO)に提案した「災害食の品質要求事項」の発行が見込まれるという。災害用トイレは約2000億円で、避難生活での健康被害や衛生環境の悪化を防ぐのに欠かせないとした。SAR衛星の活用技術は約1900億円で、衛星の数が今後急速に増え、被害状況の把握などの道具として大きく伸びると見込む。

5つの合計は年に約4兆円で、市場が伸びなくても5年間で約20兆4000億円になると資料は見積もる。防災技術の海外展開と国際協力を進めるため、関係省庁の会議を設け、来年半ばをめどに「国際防災協力戦略」をまとめる。

首相が長、防災大臣に勧告権

防災庁設置法は、防災庁を内閣に置き、その長を内閣総理大臣と定める。防災庁には国務大臣を充てる防災大臣を置き、首相を助けて庁の事務を統括させる。いまの防災大臣は細野豪志氏だ。

この法律で目を引くのは、防災大臣が他の役所に対して持つ権限だ。防災大臣は、必要があれば関係行政機関の長に資料の提出や説明を求めることができ、特に必要があれば勧告できる。勧告を受けた機関の長はそれを「十分に尊重しなければならない」とされ、防災大臣は勧告に基づいて取った措置の報告を求められる。さらに、勧告した事項について特に必要があれば、首相に対し、内閣法第6条による措置(首相による行政各部の指揮監督)がとられるよう意見を述べることもできる。

法律は、地方の拠点となる「防災局」についての規定も置いている。発足日を11月2日と決めた政令の内容は防災庁、11月2日に発足 施行期日の政令を閣議決定 統括官4人・参事官15人を置く 地方機関「防災局」の施行日は決まらずで伝えた。法案段階の議論は「防災庁」今国会で成立の見通し 災害対応の司令塔、11月にも発足へにまとめている。