厚生労働省は10月20日、フェデラルエクスプレスコーポレーション日本支社労働組合から令和8年11月1日以降にストライキなどの争議行為を行う旨の通知があったと公表した。場所は組合員が従事するフェデラルエクスプレスコーポレーションとフェデラルエクスプレスジャパン合同会社の全職場で、千葉、東京、愛知、三重、大阪、兵庫の6都府県にまたがる。要求事項は賃金引上げ等とされている。同省が公表する一覧には、医療分野の病院労働組合による予告も相次いで並んでいる。

フェデックス労組は6都府県の全職場 年度内2回目の予告

公表文によると、通知は労働関係調整法第37条第1項と同法施行令第10条の4第1項に基づくものだ。開始日は「令和8年11月1日以降」で、終了時期は示されていない。公表文の日付は令和8年10月20日、名義は厚生労働大臣の上野賢一郎である。厚労省の一覧では業種が「航空」に分類されている。

同じ組合は令和8年度に入ってから、4月1日開始分の予告も出している。関係都道府県は千葉、東京、愛知、三重、大阪、兵庫の6都府県で今回とまったく同じで、今年度2回目の予告となる。公表文が示すのは開始日と場所、要求事項の3項目だけで、具体的に何時間どの業務を止めるのかは記されていない。

要求事項の「賃金引上げ等」という文言は、今年度の予告に繰り返し現れている。賃金そのものの動きをみると、実質賃金、2026年8月は1.5%増で8か月連続プラス 伸びは7月の2.0%から縮小 現金給与総額は31万1364円で3.8%増のとおり、物価上昇分を除いた実質賃金は今年1月から8か月続けてプラスだが、伸びは7月の2.0%から1.5%へ縮まっている。

医療で予告が続く KKR11病院、済生会25病院

医療分野では、国家公務員共済組合連合会病院労働組合が11月19日以降の争議行為を予告している。公表文の日付は10月2日で、要求事項は賃金引上げ等。対象の職場は別記として11の病院が挙げられ、斗南病院とKKR札幌医療センター(北海道)、東北公済病院(宮城県)、虎の門病院、三宿病院、立川病院(東京都)、名城病院、東海病院(愛知県)、大手前病院(大阪府)、千早病院(福岡県)、新別府病院(大分県)が並ぶ。関係都道府県は7つである。

全済生会労働組合は10月22日以降の争議行為を予告した。公表文の日付は10月19日で、要求事項は年末一時金等。別記に挙げられた職場は済生会小樽病院(北海道)から済生会福岡総合病院(福岡県)まで25病院で、関係都道府県は17に及ぶ。この組合も5月12日開始分を予告しており、そのときの関係都道府県も同じ17だった。

貨物では全日本建設交運一般労働組合が、同じく10月22日以降の争議行為を予告している。公表文の日付は10月19日、要求事項は年末一時金等で、別記にはヤマト運輸、カンダコーポレーション、京王電鉄バス、阪急バス、近物レックス、福岡運輸など多数の企業名と、清掃や環境事業を担う会社・公益財団法人が並ぶ。関係都道府県は32で、今年度の予告のなかで最も広い。厚労省の一覧では業種が「貨物」と「公衆衛生」の両方に記載されている。医療や運輸が人手の確保に苦しんでいる状況は人手不足の全体像 求人倍率1.18倍の裏で、建設躯体8.25倍・一般事務0.29倍にまとめた。

労働組合名 開始日 業種 要求事項 関係都道府県
フェデラルエクスプレスコーポレーション日本支社労働組合 11月1日以降 航空 賃金引上げ等 6都府県
国家公務員共済組合連合会病院労働組合 11月19日以降 医療 賃金引上げ等 7都道府県
全済生会労働組合 10月22日以降 医療 年末一時金等 17都道府県
全日本建設交運一般労働組合 10月22日以降 貨物・公衆衛生 年末一時金等 32都道府県
厚生労働省が10月に公表した公益事業の争議行為予告出典: 厚生労働省「公益事業に関する争議行為の予告」および各公表文

「少なくとも10日前まで」 出さずに行えば処罰の対象

争議行為予告は、争議によって日常生活が止まるのを防ぐための事前通知の仕組みである。対象は公益事業に限られ、厚労省は(1)運輸事業(2)郵便、信書便又は電気通信の事業(3)水道、電気又はガスの供給の事業(4)医療又は公衆衛生の事業の4分野を挙げている。これらの事業で、労働組合や企業が複数の都道府県にまたがるストライキや事業所閉鎖などを行う場合、労働関係調整法第37条に基づいて少なくとも10日前までに通知しなければならない。

届出先は争議行為の範囲で変わる。ひとつの都道府県の区域内にとどまる場合は都道府県労働委員会と都道府県知事の2か所、複数の都道府県にわたる場合や全国的に重要な問題である場合は中央労働委員会と厚生労働大臣の2か所にそれぞれ届け出る。期日の数え方は、通知の日と争議行為の予定日を除いて10日間が必要という計算で、厚労省は10月15日に争議行為を予定するなら10月4日までに届け出る必要があると例示している。予告なしに争議行為を行った場合、その実行について責任のある者が処罰の対象となる。

通知を受けた厚生労働大臣は、同法施行令第10条の4第4項に基づいてその内容を公表する。かつては官報にも載せていたが、平成28年1月から官報掲載は行われておらず、厚労省のサイトに掲載されるだけになった。厚労省は一覧に「争議行為予告は、あくまで予告であり、争議行為が行われない場合もあります」と注記している。交渉が妥結すれば実施されないため、予告された日に必ず業務が止まるわけではない。

令和8年度は23件 航空9件・医療7件

令和8年度に公表された予告は、10月21日時点で23件である。年度ごとの公表件数は令和3年度89件、4年度89件、5年度88件、6年度93件、7年度87件と、ここ数年は90件前後で推移してきた。今年度は4月1日のフェデックス労組分から始まり、6月に12件が集中したあと、9月以降は5件が並んでいる。

令和8年度の争議行為予告の業種別件数(件)

航空9医療7陸海運3貨物3運送1公衆衛生1
1組合の予告が貨物と公衆衛生の両方に記載されているため、延べ24件となる出典: 厚生労働省「公益事業に関する争議行為の予告」(令和8年10月21日時点)
数値で見る(単位: 件)
項目件
航空9
医療7
陸海運3
貨物3
運送1
公衆衛生1

業種別にみると航空が9件で最も多く、医療が7件で続く。以下は陸海運3件、貨物3件、運送1件、公衆衛生1件である。前述のとおり全日本建設交運一般労働組合の予告が貨物と公衆衛生の両方に記載されているため、業種を合計すると延べ24件になる。航空では日本航空、日本航空キャビンクルーユニオン、日本航空ユニオン、日本エアコミューター乗員組合、エミレーツ航空労働組合、フェデックス労組の予告が6月までに並んだ。医療では全日本赤十字労働組合連合会、全国労災病院労働組合、東京民医連労働組合リップル支部などが名を連ねる。

令和7年度の87件も業種の偏りは同じで、航空27件、医療23件、陸海運13件、貨物12件、公衆衛生6件、鉄道4件、通信4件、バス3件、電気1件、郵便1件だった。航空と医療の2分野で全体の半分を超える構図が、年度をまたいで続いている。

ストライキを伴う争議は77件 労働損失は運輸で3万日

予告の件数と、実際に行われた争議の規模は別の統計で把握できる。厚労省の労働争議統計調査によると、令和7年の総争議の件数は295件、総参加人員は100,532人で、前年に比べ件数は17件(6.1%)、総参加人員は5,207人(5.5%)増えた。厚労省は、総争議の件数は長期的には減少傾向で推移してきたが、令和元年以降はほぼ横ばいで推移していると説明している。

このうち実際にストライキなどの行為を伴った「争議行為を伴う争議」は77件で、前年の76件から1件(1.3%)の増加にとどまった。一方で行為に参加した人員は17,354人と、前年の8,982人から8,372人(93.2%)増え、ほぼ倍になっている。件数はほぼ変わらないのに参加人員が倍になったのは、規模の大きい争議が起きたためだ。半日以上の同盟罷業を伴う争議は30件、その行為参加人員は7,977人だった。

産業別では、争議行為を伴う争議の件数は医療・福祉が44件で最多となり、前年の35件から9件増えた。次いで教育・学習支援業と製造業が各8件、運輸業・郵便業が6件、情報通信業が5件である。働き手が実際に休んだ日数を示す労働損失日数は全体で31,380日で、このうち運輸業・郵便業が30,120日を占めた。製造業618日、医療・福祉419日と比べて桁が違い、全体のほぼすべてが運輸業・郵便業の争議によるものだった。件数は医療に多く、業務が止まった日数は運輸に偏るという対照的な姿になっている。