総務省は2026年3月27日、令和8年版の地方財政白書「地方財政の状況」を公表した。地方財政法第30条の2第1項に基づき、毎年度の地方財政の決算をまとめて国会に報告するものだ。今回は2024年度(令和6年度)の決算を扱い、全国の47都道府県、1718市町村、23特別区、1129一部事務組合、113広域連合の計3030団体を集計している。

借金残高は179兆円台、減ってはいるが高い水準が続く

白書によると、普通会計が将来にわたって負担すべき借入金の残高は、2024年度末で179兆5246億円だった。前年度末と比べて1.7%減っている。この数字は、自治体が発行した地方債の残高に、交付税及び譲与税配付金特別会計の借入金と、水道や病院などの公営企業が発行した企業債のうち普通会計が返済財源を持つ分を足したものだ。白書は「近年は減少傾向にあるものの、依然として170兆円を超える高い水準にある」と記している。

このうち地方債の現在高は137兆991億円で、前年度末より1.8%減った。ただし内訳を見ると、減ったのは臨時財政対策債の分である。臨時財政対策債は、国が配る地方交付税の財源が足りないときに、その穴埋めとして自治体に借金をさせる仕組みで、返済額は後から交付税で措置される。これを除いた地方債の残高は91兆3796億円で、前年度末より0.9%増えた。災害復旧事業債や緊急防災・減災事業債、教育・福祉施設等整備事業債の発行が増えたためで、防災対策と老朽化した公共施設の建て替えに借金が回っている構図だ。

貯金にあたる積立金の残高は29兆4802億円で、2.1%増えた。地方債と債務負担行為から積立金を差し引いた実質的な将来の財政負担は130兆8140億円となり、前年度末より1.0%減っている。都道府県が79兆4468億円、市町村が51兆3672億円で、都道府県は2.3%減ったのに対し、市町村は1.1%増えた。

赤字の自治体はゼロ、財政再生基準を超えるのは夕張市のみ

単年度の収支は健全だった。2024年度の実質収支は2兆7567億円の黒字で、1956年度(昭和31年度)以降、70年近く黒字が続いている。都道府県が9241億円、市町村が1兆8326億円の黒字で、実質収支が赤字になったのは一部事務組合の1団体だけだった。

自治体財政健全化法に基づく4つの指標でも、実質赤字比率が0%を超えた団体、連結実質赤字比率が0%を超えた団体、将来負担比率が早期健全化基準以上の団体は、いずれも1つもない。財政再生基準以上となったのは北海道夕張市の1団体のみで、前年度と同じだ。夕張市が2009年度に322億円発行した再生振替特例債の残高は、2024年度末で50億円まで減っている。同市は夕張市の財政再生計画、今年度4度目の変更に総務相が同意 消防ポンプ車の更新を2年前倒し 322億円の再生債返済は今年度で終わるで示したとおり、2029年度までの財政再生計画に沿って再建を進めている。

なお、地方債を発行する際に総務大臣らの許可が必要になる実質公債費比率18%以上の団体は、都道府県2団体、市町村1団体の計3団体で、これも前年度と変わらない。公営企業では、資金不足比率が経営健全化基準の20%以上となった会計が3つあり、このうち病院事業の1会計が2025年度末までに経営健全化計画を作ることになっている。

決算規模は過去最大級、固定費の重さは変わらず

決算の規模そのものは膨らんだ。歳入は120兆2491億円で前年度の116兆6936億円から3.0%増え、歳出は115兆9823億円で前年度の112兆4220億円から3.2%増えた。2020年度に新型コロナ対策で大きく膨らんだあと減少が続いていたが、2024年度は増加に転じている。

歳入では、企業の利益が伸びて法人住民税と法人事業税が増えたことから地方税が3.7%増、地方交付税が4.9%増となった。個人住民税の定額減税で自治体に生じた減収を埋める「定額減税減収補塡特例交付金」が新しく設けられたため、地方特例交付金等は422.5%増と5倍を超えている。一方、新型コロナ対応地方創生臨時交付金などの終了で国庫支出金は4.4%減った。自治体の収入には、信号機やカーブミラーの財源は交通反則金 9月期の交付金は180億1000万円 47都道府県すべてで前年同期を下回るで扱った交通安全対策特別交付金のように、使い道が決まった特定財源も含まれる。

歳出は、地方公務員の給与改定と定年引き上げに伴う退職手当の増加が全体を押し上げた。目的別では教育費が9.1%増、総務費が9.3%増、民生費が4.5%増で、制度融資が減った商工費だけが10.9%減っている。人件費・扶助費・公債費からなる義務的経費は5.1%増えた。

その結果、財政の自由度を示す経常収支比率は前年度の92.8%から93.0%に上がった。この比率は、税収など毎年入ってくるお金のうち、人件費や借金返済のように毎年必ず出ていくお金に充てられる割合を指す。93.0%は、100円の収入のうち93円が使い道の決まった支出に消え、自治体が裁量で使えるのは7円しか残らないことを意味する。借金返済の重さを示す実質公債費比率は7.7%で前年度と同じ、将来負担比率は都道府県が前年度の148.7%から144.1%へ、市町村が6.3%から6.2%へと、いずれも下がった。

白書は2024年度決算の特徴として、物価高と人件費の増加に加え、低金利で減り続けてきた地方債の利子が金利上昇に伴って増加に転じたことを挙げている。借金の残高は減っていても、その利払いは増え始めた。第2部では2025年度と2026年度の地方財政計画を扱っており、総務省は物価高対応や公共施設の老朽化対策を引き続き地方財政計画に織り込む方針を示している。