政府は、日本のインテリジェンス(情報)機能の強化に必要な施策を検討する「インテリジェンス機能の強化に関する有識者会議」を、内閣総理大臣の下に設置した。開催規程は9月25日の内閣総理大臣決裁で決まり、9月28日から実施される。内閣官房が公表した開催状況によると、第1回会合の日付は9月28日である。

規程は会議の趣旨を「複雑で厳しい国際環境において、国民の安全及び国益を確保するべく、我が国のインテリジェンス機能の強化のために必要な施策について検討を行うため」と定めた。7月31日に国家情報局が発足して情報部門の器がそろったのを受け、その器で何をするかを外部の目を入れて詰める段階に入ったことになる。

なお、第1回会合の議事次第・資料と議事要旨は、いずれも執筆時点で会議のページに掲載されていない。座長が誰になり、何が話し合われたかは確認できていない。

構成員17人 大学の研究者が10人、企業の役員が4人

規程の別紙に載った構成員は17人である。内訳を数えると、大学の研究者が10人で最も多い。市原麻衣子・一橋大学大学院教授、江崎道朗・麗澤大学特任教授、加茂具樹・慶應義塾大学教授、小池英夫・立命館大学客員教授、佐橋亮・東京大学東洋文化研究所教授、宍戸常寿・東京大学大学院教授、土屋大洋・慶應義塾大学大学院教授、野口貴公美・一橋大学大学院教授、廣瀬陽子・慶應義塾大学教授、渡部俊也・東京大学名誉教授の各氏だ。所属は慶應義塾大学と東京大学が各3人、一橋大学が2人と続く。

企業からは4人が入った。高荷英巳・三井物産戦略研究所社長、馬場重郎・三菱商事常務執行役員、松原実穂子・NTTチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジスト、山口寿一・読売新聞グループ本社社長の各氏である。

このほか、大澤淳・中曽根康弘世界平和研究所上席研究員、日置巴美弁護士、佐久間佳枝・元最高検察庁監察指導部長が各1人ずつ加わった。国際政治や安全保障の研究者に、憲法・行政法の法律家、サイバー分野の実務家、情報を扱う民間企業の経営層を混ぜた構成になっている。

座長は規程で「構成員の互選により決定する」と定められており、政府が指名する形ではない。座長は必要があると認めるときは関係者の出席を求めることができる。

2029年6月30日で効力を失う 会議を増やしすぎないための期限

この規程の特徴は、あらかじめ終わりの日が書き込まれていることである。附則は「この規程は、令和11年6月30日をもって、その効力を失う」と定めた。2029年6月30日である。

理由も明記されている。内閣官房について「既存の事務の不断の見直しを行い、できるだけ組織を効率的なものとしていくことが重要となっていることに鑑み」と書かれており、官邸に会議体がたまり続けることへの歯止めとして置かれた条項だと読める。同じ考え方から、今後この有識者会議の下に別の会議を置いた場合、その会議の規程も同じ日に失効することになっている。

ただし完全な打ち切りではない。内閣官房は期限までに会議の運営状況などを踏まえ、「期限経過後の有識者会議の在り方について、改組及び期限の延長を含め検討を加え」ると定めた。必要な措置をとれば効力を失わせないこともできると但し書きが付いている。つまり2029年6月末が、この会議を続けるかどうかを判断する区切りになる。

7月に発足した国家情報局が事務を担う

有識者会議の庶務は内閣官房が処理し、会議ページに載る連絡先は内閣官房国家情報局である。国家情報局は国家情報局、2026年7月31日に発足したばかりの組織で、同日施行の国家情報会議設置法(令和8年法律第28号)の附則で内閣法が改正され、内閣情報官と内閣情報調査室を発展的に解消してできた官邸直属の情報機関だ。局長のほか次長と内閣情報分析官8人が置かれ、総務部・分析部・研究部・国内部・国際第一部・国際第二部・経済部と内閣情報集約センターを抱える。情報収集衛星を扱う内閣衛星情報センターも局の下に入る。内閣官房は、昭和27年に総理府へ置かれた内閣総理大臣官房調査室を源流とする組織だと説明している。

同じ法律で新設された「国家情報会議」は、首相を議長とする閣僚級の会議である。議員は内閣総理大臣臨時代理と、官房長官、金融担当の内閣府特命担当大臣、国家公安委員会委員長、法務大臣、外務大臣、財務大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、防衛大臣で、警察庁・公安調査庁・海上保安庁など情報を扱う機関の担当閣僚が並ぶ。それまでの「内閣情報会議」が事務次官級だったのに対し、閣僚級へ格上げされた。

この会議が扱うのは「重要情報活動」と「外国情報活動への対処」である。内閣官房の説明によると、重要情報活動は安全保障の確保、テロリズムの発生の防止、災害などの緊急の事態への対処のような、重要な国政の運営に資する情報の収集調査に係る活動を指す。外国情報活動への対処は、外国の利益を図る目的で日本の政府や企業の重大な秘密を取得しようとする活動への対処で、外国に有利な政策決定や世論形成を導くための偽情報の拡散といった影響工作も含まれる。

国家情報会議は9月25日に2回目 下半期の重点事項を議題に

有識者会議の設置が決まったのと同じ9月25日、国家情報会議自体も2回目の会合を開いていた。内閣官房の開催状況によると、議題は「令和8年度上半期の情勢認識及び令和8年度下半期の重点事項について」である。1回目は施行日と同じ7月31日で、議題は「会議の運営方針・諸規則の制定等について」だった。運営の枠組みを決めた1回目から、実際に何を優先して情報を集めるかを決める段階へ移った形だ。ただし開催状況のページに載っているのは議題名だけで、配布資料や議事要旨は確認できていない。

情報分野の制度整備は7月以降も続いている。基幹インフラを狙ったサイバー攻撃については、基幹インフラのサイバー被害、10月1日から国への報告が義務になり、電気・鉄道・金融など258者が対象となる。自衛隊についても、10月1日からサイバー攻撃元のコンピューターを無害化できる権限が自衛隊法第81条の3として新設された。情報を集める側の体制と、集めた情報をもとに動く側の権限が、同じ秋に相次いで形になる。今回の有識者会議は、その全体像をどう組み立てるかを外部の識者に問う場となる。