国会議員の公設秘書の給料と勤勉手当を改める「国会議員の秘書の給与等に関する法律」(秘書給与法)の改正案が10月30日、衆議院本会議で全会一致で可決され、同じ日に参議院が受け取った。改正案は衆議院の議院運営委員長が提出した衆法第2号で、委員会審査を省いて本会議で採決した。給料表を全面的に書き換え、給料月額は号給に応じて月1万1200〜1万6900円上がる。令和8年4月1日にさかのぼって適用し、勤勉手当は12月分の率を引き上げる。提出理由は「一般職の国家公務員の給与改定に伴い、国会議員の秘書の給与の額を改定する必要がある」としている。
議運委員長が提出、委員会を通さず全会一致
衆議院の議案審議経過情報によると、改正案の提出者は議院運営委員長で、提出者一覧には坂本哲志議員の名前がある。衆議院は10月30日に受理し、付託委員会の欄は「審査省略」となっている。同じ日の本会議で可決した。会派の態度は全会一致で、賛成会派として自由民主党・無所属の会、中道、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ、参政党、チームみらい、日本共産党、志士の会の8会派が載っている。
参議院は同じ10月30日、予備審査の議案と本審査の議案をあわせて受理した。衆議院の議案一覧では、11月2日時点で審議状況は「参議院で審議中」となっている。参議院で可決されれば成立し、公布の日から施行される。
公設秘書の給料、手当の額は秘書給与法が定める。給料の額を決める給料表は、政府の閣議ではなく法律の別表に書かれているため、改定のたびに国会が秘書給与法を改正する。
公設秘書の人数と種類は国会法第132条が定める。第1項は「各議員に、その職務の遂行を補佐する秘書二人を付する」とし、第2項はこれとは別に「主として議員の政策立案及び立法活動を補佐する秘書一人を付することができる」とする。いわゆる第1秘書・第2秘書と、政策担当秘書である。秘書給与法第3条は、第1項の秘書2人のうち1人に別表第一、もう1人に別表第二の給料表を当て、政策担当秘書には別表第一を当てる。どちらを当てるかは国会議員の申し出による。
給料表、上げ幅は月1万1200〜1万6900円
改正案の第1条は、別表第一と別表第二をそれぞれ新しい表に置き換える。級と号給の構成は変えず、すべての号給で金額を上げる。
別表第一は1級から3級まで15の号給がある。最も低い1級1号は36万2400円から37万5600円へ、1万3200円上がる。2級1号は43万6900円から45万1100円へ1万4200円、最も高い3級4号は55万6900円から57万3800円へ1万6900円上がる。上げ幅は1万3200〜1万6900円で、改定前の額に対する比率は3.0〜3.6%になる。
別表第二は1級から3級まで12の号給がある。最も低い1級1号は28万8800円から30万円へ、1万1200円上がる。2級1号は32万5600円から33万8900円へ1万3300円、最も高い3級5号は41万5400円から43万800円へ1万5400円上がる。上げ幅は1万1200〜1万5400円で、比率は3.7〜4.1%と別表第一より高い。金額の低い別表第二の方が、率では大きく上がる。
| 給料表・級号給 | 現行 | 改正案 | 引き上げ額 |
|---|---|---|---|
| 別表第一 1級1号 | 36万2400円 | 37万5600円 | 1万3200円 |
| 別表第一 2級1号 | 43万6900円 | 45万1100円 | 1万4200円 |
| 別表第一 3級4号(最高) | 55万6900円 | 57万3800円 | 1万6900円 |
| 別表第二 1級1号 | 28万8800円 | 30万円 | 1万1200円 |
| 別表第二 2級1号 | 32万5600円 | 33万8900円 | 1万3300円 |
| 別表第二 3級5号(最高) | 41万5400円 | 43万800円 | 1万5400円 |
級と号給をどう決めるかは、秘書給与法第3条第3項が「議員秘書の在職期間及び年齢による」とし、具体的な基準は衆参両院の議長が協議して定める。
実際に払われる給料月額は、表の金額より高い。秘書給与法の附則は、一般職の国家公務員に地域手当が出ている間、表の額に「百分の二十を乗じて得た額」を足した額を給料月額とする特例を置いている。この特例に従えば、別表第二の1級1号は改正後、30万円に6万円を足した36万円が給料月額になる。
勤勉手当は12月分を上げ、来年度から6月と同じ率に
改正案は、秘書給与法第15条の勤勉手当の率も改める。現行は、基準日前の6か月間に在職した期間に応じて、勤勉手当基礎額に掛ける率を4段階で定めている。6か月在職した秘書は100分の106.25で、6月と12月に同じ率が適用される。
改正案の第1条は、この率を6月と12月で分ける。6か月在職した場合は、6月は100分の106.25のまま、12月を100分の108.75に上げる。5か月以上6か月未満は6月100分の85・12月100分の87、3か月以上5か月未満は6月100分の63.75・12月100分の65.25、3か月未満は6月100分の31.875・12月100分の32.625となる。
改正案の第2条は、令和9年4月1日から6月と12月の率を同じにそろえる。6か月在職なら年2回とも100分の107.5、5か月以上6か月未満は100分の86、3か月以上5か月未満は100分の64.5、3か月未満は100分の32.25とする。6か月ずつ在職した場合の年間の率は、現行の100分の212.5から、今年度は12月の上げ分で100分の215になり、来年度以降も年2回の100分の107.5で100分の215となる。
期末手当は改正案の対象になっていない。秘書給与法第14条第2項は、期末手当の額を期末手当基礎額に「一般職公務員の例により一定の割合を乗じて得た額」と定めており、一般職の率が変われば秘書の率もそれに従う仕組みになっている。勤勉手当は秘書給与法の条文に率を書き込んでいるため、法改正が要る。
このほか改正案は、通勤手当の上限を定めるのに引用している一般職の給与法の項を「第十二条第五項」から「第十二条第六項」に改める。秘書の通勤手当の月額は、その最高額の100分の60と定められている。
一般職の給与改定に合わせる仕組み
改正案の提出理由が示すとおり、秘書の給与は一般職の国家公務員の給与改定に合わせて改められる。人事院は8月7日、民間との給与の差を埋めるため、月例給を平均1万5056円(3.51%)引き上げ、特別給(ボーナス)を0.05月分引き上げて年4.70月分とするよう勧告した。内閣は10月9日、勧告を受けた一般職の給与法改正案(閣法第2号)を国会に提出した(公務員の給与改定を10月9日に閣議決定 国家公務員は人事院勧告どおり官民較差1万5056円・ボーナス年4.70月へ 総務副大臣が同日、地方へ通知)。
一般職の改正案も、勤勉手当の率を同じ形で改める。一般職の職員の勤勉手当を定める一般職給与法第19条の7について、今年の12月分を100分の108.75とし、来年度以降は6月・12月とも100分の107.5とする規定がある。秘書給与法の改正案は、この率に合わせた形になっている。
参議院の議案情報によると、一般職の改正案は衆議院の内閣委員会が10月28日に可決し、10月30日の衆議院本会議で全会一致で可決された。秘書給与法の改正案と同じ日に参議院へ送られ、11月2日時点では参議院で議決されていない。自衛官の俸給を改める防衛省職員給与法の改正案も、今国会に提出されている(自衛官の俸給、2士の1号俸は25万300円に 給与法改正案を衆院安保委で趣旨説明)。
4月にさかのぼり差額を支給
改正案の附則は、第1条による改正後の規定を令和8年4月1日から適用すると定める。4月以降に改正前の規定で支給した給与は、改正後の規定による給与の「内払とみなす」としている。成立すれば、4月から施行日までの給料と、すでに払われた6月の勤勉手当について、新しい額との差額を払うことになる。6月の勤勉手当の率は改正後も100分の106.25のままなので、6月分の差額は給料月額の引き上げで勤勉手当基礎額が増えた分にあたる。
12月の勤勉手当は、改正後の給料表と100分の108.75の率で計算される。勤勉手当基礎額は秘書給与法第14条第3項を準用し、給料月額に、その100分の15を超えない範囲で両院議長が協議して定める割合を掛けた額を足したものになる。
秘書給与法の改正案は、一般職の給与法改正案と同じ10月30日に衆議院を通過し、ともに参議院での採決を待つ。成立すれば公布の日に施行され、新しい給料表は4月分までさかのぼって適用される。勤勉手当の率を年2回同じにそろえる第2条の規定は、令和9年4月1日に施行される。
