パートやアルバイトの時給の下限となる地域別最低賃金が、10月1日から順次引き上げられる。厚生労働省が9月3日にまとめた令和8年度の改定額は、47都道府県の加重平均で1177円となり、改定前の1121円から56円上がる。ただし実際に効力が生じる日は都道府県ごとに違い、10月1日の15都道県から、最も遅い沖縄の12月2日まで2か月の開きがある。

発効日は都道府県ごとに違う

改定額は、各都道府県の労働局に置かれた地方最低賃金審議会が答申したものだ。答申がそのまま効力を持つわけではなく、労働局で関係する労使からの異議申し出を受け付ける手続きを経たうえで、労働局長の決定によって発効する。この手続きに要する日数が都道府県ごとに違うため、発効日も一律にならない。

10月1日に発効するのは、北海道、宮城、栃木、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、富山、岐阜、愛知、三重、大阪、兵庫、香川の15都道県。10月中に発効するのは合わせて37都道府県で、11月は山梨、徳島、愛媛、大分が1日、長崎が2日、佐賀が15日、京都が16日の7府県。12月は岩手と熊本が1日、沖縄が2日となる。厚労省は、発効日は異議の申し出の状況などによって変わる可能性があるとしている。

自分の時給が新しい下限に届いているかを確かめるときに見るのは、住んでいる場所ではなく、働いている事業場のある都道府県の最低賃金と、その発効日である。

引き上げ額は54〜65円、33都道府県が目安を上回った

引き上げの出発点になるのは、中央最低賃金審議会が7月28日に示した目安だ。都道府県を経済実態に応じてA〜Cの3ランクに分け、引き上げ額の目安をAランク54円、BランクとCランクは56円と答申していた。Aランクは埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪の6都府県、Bランクは28道府県、Cランクは13県である。目安どおりに決まった場合の加重平均は1176円、引き上げ率は4.9%で、昨年度の6.3%より小さい見通しだった。

実際の答申では目安を上回る額が相次ぎ、47都道府県のうち33で目安より高い額が決まった。目安どおりだったのは、北海道、東京、神奈川、長野、岐阜、三重、滋賀、大阪、兵庫、奈良、和歌山、広島、香川、長崎の14都道府県にとどまる。引き上げ額が最も大きいのは佐賀で、1030円から1095円へ65円上がる。鹿児島が1026円から1090円へ64円、高知と沖縄が1023円から1086円へ63円と続いた。目安を超える答申が積み重なった結果、加重平均の上げ幅は目安段階の55円を上回る56円となり、厚労省は目安制度が始まった昭和53年度以降で2番目に大きい引き上げだとしている。

最高は東京1280円、最低は宮崎1085円

金額そのものが最も高いのは東京の1280円で、改定前の1226円から54円上がる。神奈川の1279円、大阪の1231円が続き、1200円を超えるのはこの3都府県だけだ。最も低いのは宮崎の1085円で、改定前は1023円だった。高知と沖縄が1086円、長崎が1087円と並び、1100円に届かないのは18県ある。

最高額に対する最低額の割合は84.8%で、昨年度の83.4%から縮まった。この割合が前の年度より改善するのは12年連続になる。地方の引き上げ額が大きかったことが、都市部との差を縮める方向に働いた形だ。

下回る契約は、その部分が無効になる

最低賃金法第4条第1項は、使用者に対し、最低賃金の適用を受ける労働者に最低賃金額以上の賃金を支払うよう義務づけている。同条第2項は、これを下回る賃金を定めた労働契約についてその部分を無効とし、無効になった部分は最低賃金と同じ定めをしたものとみなすと規定する。労使が合意していても、下回る時給は成立しない。地域別最低賃金に違反した使用者には、第40条により50万円以下の罰金が科される。

月給制で働く場合も対象になる。時間あたりの額に換算したうえで、通勤手当や時間外労働の割増賃金、賞与など、法や厚生労働省令で算入しないと定められた賃金を除いた部分で判断する。

最低賃金の上昇は、他の制度の前提も動かしている。10月1日には、パートやアルバイトが社会保険に加入するかどうかを分けてきた「月額8.8万円以上」の賃金要件が撤廃される。厚労省が撤廃の理由に挙げたのは、令和7年度にすべての都道府県で最低賃金が時給1016円を超え、週20時間働けば月8.8万円に自動的に届くようになったことだった。令和8年度の改定で、その水準との差はさらに開く。