公明党の中野洋昌政務調査会長は10月29日、国会内で記者会見し、自民党、日本維新の会、国民民主党の3党が同じ日に合意した衆院比例代表の定数31削減について、小選挙区と比例代表の比率が「3対2」から約「2対1」になり「制度の根幹が変わる」と述べた。比例の議席配分方式の変更など他の項目に賛同できたとしても、比例定数だけを減らす内容が含まれる以上、法案には賛成しない考えを示した。公明新聞が30日付で会見の内容を伝えた。

「短期間で、一部の政党だけで決めて良いのか」

公明新聞によると、中野氏は会見で、比例定数を31削減する自民党案を巡り、民意を反映する機能を弱める見直しを「(反対する政党が多い中で)短期間で、しかも一部の政党だけで決めて本当に良いのか」と述べ、与党などの「強行的な姿勢」に疑問を呈した。

中野氏は、衆院の定数がこれまで、民意の「集約機能」を持つ小選挙区と、「反映機能」を持つ比例代表で「3対2」の釣り合いを取ってきたと説明した。そのうえで、比例だけが31減れば比率が約「2対1」になり「制度の根幹が変わる」と強調した。今回の議論の目的は「現行制度の見直し」であり、それを超えた制度変更を押し通すのは「決して望ましいことではない」とも述べた。

取りまとめの進め方にも注文を付けた。最も意見の対立がある定数削減ではなく、多くの党が賛同できる項目を中心に見直し案をまとめる道もあり得たとして、「それをしなかったということは、取りまとめ方として果たしてどうなのか」と指摘した。

中野氏は同じ会見で、ロシアによる邦人記者の拘束について「本人の人権と安全の確保が何よりも大事だ」と述べ、政府にあらゆる外交ルートを使った交渉を求めた。企業へのサイバー攻撃が続いていることについては、企業が対策を取れる体制の整備が重要だとした。

3党合意は8項目、削減は比例代表だけ

3党は10月29日、幹事長らが国会内で会談し、「衆議院選挙制度 現行制度の見直しについての自由民主党・日本維新の会・国民民主党の合意」に署名した。合意文書は、衆院議長への協議会報告にある「理想の選挙制度に向けた抜本改革」の結論が出るまでの措置として「現行制度の見直し」を行うと位置づけ、今の第222回国会に共同で法案を提出し、成立を目指すとしている。合意の詳しい中身は自維国3党、衆院定数31削減で合意 比例のみ減らし配分方式も変更 今国会に法案で伝えた。

合意文書の項目は8つある。比例の議席配分方式をドント式から修正サン・ラグ式に変える、中国ブロックと四国ブロックを統合して全国10ブロックにする、重複立候補者の当選基準を有効投票数の10分の1から6分の1に引き上げる、名簿の当選者が不足した場合は欠員とし供託金の没収点を引き下げる、統一名簿方式を可能にする、離党した比例選出議員の政党交付金の扱いを検討する、の6項目に加え、「衆議院の議員定数を31削減する」「上記定数削減は比例代表において行う」と定めた。

中野氏が「他の項目に賛同できたとしても」と述べたのは、この構成を踏まえたものだ。配分方式やブロック、重複立候補の基準など6項目は制度の手直しにあたるが、定数削減の2項目と同じ一つの法案にまとまれば、賛否は一括で問われる。公明は削減が入る限り賛成しないとした。

国民民主党の榛葉賀津也幹事長は合意後、記者団に、比例代表だけを減らす理由について「小選挙区に手をつければ、人口減少が加速している地方の選挙区を削ることになり、地方の声がますます国会に届きにくくなる」と説明した。地方の小選挙区を守るため、やむなく比例代表で対応するとの理解を示した。

比例は176から145に、割合は約38%から約33%へ

公職選挙法第4条は、衆院議員の定数を465人とし、うち289人を小選挙区選出、176人を比例代表選出と定めている。比例だけを31減らすと、総定数は434人、比例は145人になる。

衆院の定数(現行と3党合意どおり比例を31減らした場合)(人)

小選挙区比例代表

0100200300289176現行289145削減後
出典: 公職選挙法第4条、自民・維新・国民民主3党の合意(2026年10月29日)から算出
数値で見る(単位: 人)
項目小選挙区比例代表
現行289176
削減後289145

小選挙区と比例の比は、現行の289対176(約1.64対1)から289対145(約1.99対1)に変わる。中野氏の言う約「2対1」は、この計算と一致する。総定数に占める比例の割合は、37.8%から33.4%に下がる。

中野氏の言う「3対2」は、比例の割合を総定数の5分の2、つまり40%とする考え方にあたる。現行の176人はすでに40%を下回っており、削減後はさらに離れる。

衆議院の会派別の所属議員数(9月28日現在)によると、自民党・無所属の会は315人、日本維新の会は36人、国民民主党・無所属クラブは28人で、3会派を合わせると379人になる。定数465人の過半数を大きく上回る。公明党の衆院議員は、立憲民主党出身の議員らと統一会派「中道」(47人)を組んでいる。

公明はこれまでも「3対2」を主張

公明の主張は今回の会見で初めて出たものではない。

中野氏は10月6日、参院議員会館で開かれた衆院議員の定数削減に反対する緊急集会に出席し、民意を反映するために導入されたのが比例区だとして「民意を切り捨てるような改革はしてはいけない」と述べた。人口減少に伴う「1票の格差」の問題を突き詰めると地方の議員枠が減り都市部に集中する懸念があるとして、大きな制度改革を議論する必要があるとも訴えた。

8日には党の政治改革本部が会議を開き、本部長の西田実仁幹事長が「議員定数の削減は選挙制度と一緒に議論すべきであり、どうしても削減したいのであれば(小選挙区と比例区の割合について)3対2のバランスをしっかり保つ必要がある」と述べた。(公明・西田幹事長、衆院定数削減は「小選挙区と比例3対2を保て」 政党間協議へ党の考え整理)

与野党9党が参加した15日の政党間協議では、与党が比例代表の45議席削減を改めて主張した。中野氏はこれに対し「比例は多様な民意を反映させるための制度だ。3対2のバランスを前提に議論すべきだ」と訴えた(衆院選挙制度の9党協議、与党が比例45減を再主張 公明「3対2の割合を前提に」)。

その後の協議で削減幅は45から31に縮まったが、削減を比例代表だけで行う点は変わらなかった。公明が条件としてきた「3対2」の比率は、3党合意に反映されていない。

比率を変える理由は示されるか

中野氏の指摘は、削減の数よりも、小選挙区と比例の比率という制度の設計に向いている。3党の合意文書は「現行制度の見直し」を掲げるが、比例の割合が約38%から約33%に下がることを、見直しの範囲と見るのか、制度の性格を変える変更と見るのかは、合意文書からは読み取れない。

榛葉氏は合意後、抜本改革には時間がかかるため、それまでの「つなぎ」として方向性を出す必要があったと説明した。公明の中野氏も、10月15日の協議で現行制度の見直しは抜本改革までの「つなぎ」だとしていた。見直しが一時的な措置だという点では、両者の認識は重なる。

3党側は、比例だけを減らす理由として地方の小選挙区を守ることを挙げる。一方で、比率がどこまで変わってよいのか、2対1に近づくことで比例が担ってきた民意の反映がどう変わるのかについての説明は、合意文書と榛葉氏の発言には見当たらない。

3党は今国会で法案を提出し、成立を目指す。3会派の議席は過半数を上回っており、数の上では可決できる。法案審議で、提出者は比率の変化をどう位置づけるのか。公明が問うた「取りまとめ方」に、どう答えるのか。