藤井総務相は10月20日の閣議後記者会見で、10月16日にカムチャツカ半島付近を震源とする地震で気象庁が発表した緊急地震速報が、NTTドコモの端末に配信されなかった事案について、同社から「緊急地震速報の配信にあたり、従来と形式が一部異なるデータを受信したことで、同社側のシステムで正常に処理ができなかった」との報告を受けていると明らかにした。同社はすでにシステム改修を実施済みで、再発防止のために必要な措置を適切に講じているとの報告もあったとしたうえで、「他の携帯電話事業者においても同様の事案が発生することがないよう、必要な対応を促してまいります」と述べた。

総務相「災害時の確実な伝達は重要」

会見で記者は、16日午後にカムチャツカ半島付近を震源とする地震が発生した際、ドコモを利用するスマートフォンなどの端末で気象庁が発出した緊急地震速報が配信されないトラブルがあったとして、受け止めと、通信事業者各社に再発防止を求めるなどの措置を取る方針があるかをただした。

藤井総務相はまず「災害時における安全・安心の確保のため、緊急地震速報の確実な伝達は重要と考えております」と述べた。そのうえで本件について、ドコモから、配信にあたって従来と形式が一部異なるデータを受信したため、同社側のシステムで正常に処理できなかったとの報告を受けていると説明した。

続けて、同社ではこれまで緊急地震速報の配信ができなかった事案は発生していなかったとしたうえで、「今回の事案を踏まえ、システム改修を実施済みであり、再発防止のために必要な措置を適切に講じている」との報告もあわせて受けていると述べた。

他社への対応については、「今回の事案を踏まえ、他の携帯電話事業者においても同様の事案が発生することがないよう、必要な対応を促してまいります」と明言した。さらに「災害時における情報伝達手段として、通信サービスの確実な提供が図られることが重要であり、引き続き、総務省として、事業者とも連携の上、適切な対応を行ってまいります」と述べ、事業者側の自主的な改修にとどめず、行政として関与を続ける姿勢を示した。この日の会見に冒頭発言はなく、質疑の1項目として取り上げられた。

16日の地震 規模6.9を9.9と推定して警報

配信されなかった緊急地震速報そのものにも、別の問題が起きていた。気象庁の報道発表によると、10月16日12時38分ごろ、カムチャツカ半島付近を震源とするマグニチュード6.9(速報値)の地震が発生し、同庁は12時40分に北海道から中部地方に対して緊急地震速報(警報)を発表した。しかし、この地震で観測された揺れは函館市の震度1にとどまった。

同庁は同日14時00分の報道発表で、警報の発表は「緊急地震速報処理において、震源を千島列島に決定し、マグニチュードを9.9と過大に推定したことによるもの」と説明し、過大となった原因は調査中だとした。

同日22時40分の第3報では、過去に過大な緊急地震速報を発表した事例として令和2年7月30日の鳥島近海の地震を挙げ、その改善策として震源から700キロ以上遠い観測点をマグニチュードの計算に用いないこととしていたが、今回の地震ではこの機能が正常に動作していなかったことが判明したと公表した。同庁は同日21時30分ごろ、この機能が動くよう緊急的な対策を実施し、この対策により今回の地震に対しては警報が発表されなくなることを確認したとしている。「この度の誤った緊急地震速報の発表により、国民の皆様には多大なご迷惑とご負担をおかけしたことについてお詫びいたします」と謝罪した。この経緯は緊急地震速報の過大予測、2020年の再発防止機能が働かず 気象庁が謝罪で詳しく伝えている。

日時 出来事
10月16日12時38分ごろ カムチャツカ半島付近でマグニチュード6.9(速報値)の地震
同12時40分 気象庁が北海道から中部地方に緊急地震速報(警報)を発表
同(この地震で観測された揺れ) 函館市で震度1
同14時00分 気象庁が第1報。震源を千島列島、規模を9.9と過大に推定したためと説明
同21時30分ごろ 震源から700キロ以上遠い観測点を計算に使わない機能が動くよう緊急対策
同22時40分 気象庁が第3報。令和2年の改善策の機能が正常に動作していなかったと公表
10月20日 藤井総務相が会見でドコモからの報告内容と他社への対応方針を説明
10月16日の緊急地震速報をめぐる経緯出典: 気象庁報道発表(第1報・第3報)、総務省「藤井総務大臣閣議後記者会見の概要(令和8年10月20日)」

携帯への配信は5社 後から届く仕組みではない

携帯電話に緊急地震速報が届くまでの経路は、テレビやラジオとは別建てになっている。気象庁の「緊急地震速報の入手方法」によると、携帯電話の同報機能を使って緊急地震速報を配信しているのは、NTTドコモ、au、ソフトバンク、ワイモバイル、楽天モバイルの5社。受信対応機種や設定は各社に問い合わせる扱いで、報知音はテレビ・ラジオとは別のものを使い、5社で共通としている。

ドコモの場合、このサービスは緊急速報「エリアメール」にあたる。同社の説明では、気象庁が配信する緊急地震速報・津波警報と、各省庁・地方公共団体が配信する災害・避難情報(Jアラートで配信される国民保護情報など)を、回線混雑の影響を受けずに受信できる。被災のおそれのあるエリアへ一斉に配信され、受信時はポップアップ表示と専用の着信音で知らせる。

重要なのは、エリアメールが通常のメールと異なり、センター側でメッセージを預かる仕組みではない点だ。同社はこの方式の違いを明記しており、配信の時点で端末に届かなければ、後から改めて受け取ることはできない。今回のように配信処理の段階でつまずくと、利用者の側には音も表示も何も残らない。端末の設定や電波状況の問題と区別がつきにくいのは、このためでもある。

警報が出る条件 2007年10月から運用

緊急地震速報には「警報」と「予報」の2種類がある。気象庁の説明によると、一般向けに伝えられる緊急地震速報(警報)の発表条件は、2点以上の地震観測点で地震波が観測され、最大震度が5弱以上または長周期地震動階級3以上と予想された場合だ。運用開始は平成19年(2007年)10月1日で、来月で19年になる。

このうち震度6弱以上、または長周期地震動階級4の揺れが予想される場合は「特別警報」(地震動特別警報)に位置付けられている。ただし同庁は、震度6弱以上の揺れが予想される地域を即時に正確に予測する技術には改善の余地があることや、ごく短時間に特別警報と通常の警報を区別して伝えることが難しいことなどから、一般には区別せず緊急地震速報(警報)として伝えているとしている。

発表後の解析で、警報を出していない地域に新たに震度5弱以上などが予想された場合は続報を出す。16日の事案は、この「震度5弱以上と予想された」という判断そのものが、規模の推定を誤ったために成立してしまった形だった。警報が広い範囲に出れば、その範囲の携帯電話が一斉に鳴る。配信経路の信頼性と、発表そのものの精度は、利用者から見れば同じ一つの体験として現れる。

ドコモ自身の公表は確認できず

今回の不配信について、ドコモ自身が公表した資料は確認できていない。同社の「報道発表資料」一覧と「重要なお知らせ(通信障害等)」の掲載分を10月21日時点で確認したが、10月16日の緊急地震速報に関する項目は見当たらなかった。総務相が会見で述べた内容は、いずれも「同社から報告を受けている」という形で示されたものだ。

総務省は、気象警報などの伝達を含む通信サービスの確保を所管しており、今回は他の4社にも同様の事象が起きないよう対応を促す方針を示した。具体的な手法や期限は会見で示されていない。気象庁の側も、過大予測の原因について引き続き調査を進め、必要な対策を実施するとしている。

防災情報の伝達では、発信側と伝達側のどちらかが欠けると利用者には届かない。Jアラートの一斉試験、8月は5市町村で住民に伝わらず 自動起動したのは1741市町村のうち1583 158市町村は試験に参加せずでも、国から自治体、住民への伝達経路のどこかで止まる例が毎回報告されている。16日の事案は、発表の精度と配信の確実性という二つの課題が、同じ一つの地震で同時に表面化した格好になった。