総務省は10月30日、携帯電話大手4社から報告を受けた2025年度末(2026年3月末)時点の5Gインフラの整備状況を取りまとめて公表した。NTTドコモ、KDDI・沖縄セルラー電話、ソフトバンク、楽天モバイルの5G基地局は合わせて33万7875局で、前年度末から3万5757局増えた。政府が2025年6月に策定した「デジタルインフラ整備計画2030」が2025年度末の目標とした30万局を上回った。一方、高い周波数を使うミリ波の基地局は1年で521局の増加にとどまり、2027年度末に5万局とする目標に4501局届いていない。

整備計画2030は、2030年ごろを見据えて国内の通信基盤をどう整えるかを示した総務省の計画だ。5Gについては人口カバー率、基地局数、ミリ波の局数、自治体庁舎のカバーなどに数値目標を置いている。今回の集計は、その指標に沿って各社の2025年度末の実績を並べたものだ。同じ日には、電波法に基づいて毎年行う携帯電話の「電波の利用状況調査」の結果概要も公表され、帯域ごとの基地局数や通信量(トラヒック)が明らかになった。

基地局は30万局目標を超え、人口カバー率は98.6%

5G基地局の内訳は、KDDIが12万2211局(前年度末比1万2174局増)、ソフトバンクが12万555局(同1万6114局増)、NTTドコモが5万8979局(同6447局増)、楽天モバイルが3万6130局(同1022局増)だった。増加数が最も多かったのはソフトバンクで、楽天モバイルは1000局余りの上積みにとどまった。

人口カバー率は、5社のエリアを重ね合わせた全国の値が98.6%で、前年度末の98.4%から上がった。会社別ではソフトバンクが97.4%、KDDIが96.0%、NTTドコモが91.5%、楽天モバイルが65.4%。楽天モバイルは前年度末の61.1%から最も大きく伸ばしたが、他の3社との差はなお大きい。整備計画は2030年度末に全国と各都道府県で99%とする目標を掲げている。

事業者 5G基地局数 前年度末比 5G人口カバー率 ミリ波基地局数
NTTドコモ 5万8979局 6447局増 91.5% 6991局
KDDI 12万2211局 1万2174局増 96.0% 1万5679局
ソフトバンク 12万555局 1万6114局増 97.4% 7353局
楽天モバイル 3万6130局 1022局増 65.4% 1万5476局
合計 33万7875局 3万5757局増 98.6% 4万5499局
携帯電話事業者ごとの5G整備状況(2025年度末)。KDDIは沖縄セルラー電話を含む。基地局数は陸上移動中継局を含み、屋内小型基地局とフェムトセル基地局を除く。合計の人口カバー率は5社のエリアを重ね合わせた値

出典: 総務省「デジタルインフラ整備計画2030に基づく5Gインフラの整備状況(令和7年度末)」

ただ、次の目標は大きい。整備計画は2030年度末に5G基地局を60万局とし、うち30万局を複数の事業者が設備を共用するインフラシェアリングで整えるとしている。2025年度末から60万局まではあと26万2125局あり、5年で割ると年5万2000局余りの増設が必要になる。2025年度の増加は3万5757局だった。インフラシェアリングによる5G基地局は19万局で、30万局まで11万局を残す。

ミリ波は5万局目標に届かず、通信量は0.04%

ミリ波は27GHz〜29.5GHz付近の高い周波数で、一度に大量のデータを送れる半面、電波が届く範囲が狭い。人が密集する場所を狙って置く使い方が想定されている。2025年度末のミリ波基地局は4万5499局で、前年度末から521局増えただけだった。会社別ではKDDIが1万5679局(379局増)、楽天モバイルが1万5476局(11局減)、ソフトバンクが7353局(106局増)、NTTドコモが6991局(47局増)。楽天モバイルは減った。

整備計画は2027年度末に5万局、2030年度末に7万局を目標にしている。2027年度末まで残る2年で4501局を増やす必要があり、2025年度の増加ペースでは届かない。

使われ方の数字も同じ傾向を示す。電波の利用状況調査によると、2026年3月の1か月間に5Gで運ばれたデータは116万2002テラバイト(TB)で、このうちミリ波が運んだのは452TBだった。5G全体の0.04%にあたる。5G基地局の13%余りをミリ波の局が占めるのに対し、通信量の上ではほとんど使われていない計算になる。5Gの通信量の大半は、700MHz〜3.5GHz帯の62万8386TBと、3.7GHz〜4.9GHz帯(サブ6)の53万3164TBが占めた。

各社がまとめた「ミリ波活用レポート」の概要も添えられた。NTTドコモは数万人が集まるスタジアムに最大限ミリ波を置くとし、KDDIは東京ドーム、甲子園球場、東京駅、羽田空港の一部などに整備した。ソフトバンクはPayPayドームや新国立競技場、東京ビッグサイトなどに置き、楽天モバイルは味の素スタジアムやユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどを挙げた。楽天モバイルは、認定された開設計画を超えて整備したものの「当初の想定に反してトラヒックは増加していない」と記した。ソフトバンクも、今後の拡大にはミリ波の特長を生かした使い道の創出が重要だとしている。NTTドコモは、ミリ波に対応する端末の普及率を上げるため、ミリ波の魅力を伝える必要があるとして体験型のイベントを進めている。

サブ6の展開率は80.3%、本庁舎は24町村が圏外

サブ6は3.6GHz〜4.9GHz付近の周波数で、5Gの高速通信の中心を担う帯域だ。電波が届くのは半径数百メートル程度にとどまるため、総務省は全国を1キロ四方の区画(メッシュ)に分け、人口の多い上位1万3250区画のうち、複数の事業者のサブ6基地局が置かれている区画の割合を「サブ6展開率」として目標に据えた。1万3250という数は、人口集中地区の面積が1万3250平方キロメートルであることを参考にしている。

2025年度末の全国のサブ6展開率は80.3%で、前年度末の75.5%から上がった。整備計画は2027年度末に90%、2030年度末に95%を目標にしている。事業者ごとの展開率はNTTドコモが76.4%、楽天モバイルが63.1%、KDDIが60.0%、ソフトバンクが53.5%だった。

都道府県別では差が大きい。島根県が100.0%、鳥取県が97.8%、香川県が97.6%、石川県が97.5%と高い一方、群馬県は35.1%、栃木県は38.6%、茨城県と三重県は43.8%にとどまった。山口県も56.9%で、5割台は同県だけだった。大都市圏では大阪府が95.9%、東京都が88.1%、神奈川県が72.3%、愛知県が76.4%となっている。

面の広がりとは別に、整備計画は都道府県庁と市区町村の本庁舎を2025年度末までにすべて5Gのエリアに入れる目標を掲げていた。都道府県庁は47都道府県すべてがエリア化されたが、市区町村の本庁舎は1741団体のうち1717団体で、カバー率は98.6%と前年度末から変わらなかった。残る24町村の本庁舎は5Gのエリア外にあり、2025年度末の目標は達成できなかった。

このほか整備計画は、高速道路と国道の5Gカバー率を2030年度末に99%、高速道路は100%とする目標を置き、今後整備するサブ6とミリ波の5G基地局は原則としてすべて、将来的にSA方式に対応できる局にするとしている。

SA方式の基地局は27万1247局、3Gはドコモも終了

5Gには、4Gの設備と組み合わせて使うNSA方式と、5G単独で動くSA方式がある。SA方式は、用途ごとに通信品質を分ける「ネットワークスライシング」などの5G本来の機能を使える。電波の利用状況調査によると、SA方式で通信できる5G基地局は2026年3月時点で27万1247局と、前年度の15万5721局から11万5526局増えた。

各社の「SA活用レポート」によると、KDDIはSA方式の基地局が2025年度末に11万6722局、ソフトバンクは11万5955局だった。楽天モバイルは現時点でSA方式の5G基地局を持たず、コアネットワークの開発を進めて2026年12月末ごろをめどに運用を始め、端末の検証などを経て商用化する見込みだとした。格安スマホ会社がSA方式を使えるよう、総務省は大手に回線の開放を促す方針で、格安SIMの5G「SA方式」へ、携帯大手に回線開放促す 総務省がMVNO指針の改定案のとおり指針の改定案を示している。

携帯電話全体(4Gと5G)の通信量は、2026年3月の1か月間で414万3737TBと、前年同期の347万4258TBから増えた。このうち5Gが占める割合は28.04%で、前年の22.12%から上がった。3Gは、NTTドコモが2026年3月にサービスを終え、KDDIとソフトバンクに続いて3社とも終了した。3Gに使っていた周波数は4Gや5Gに移しており、移行計画を進めるKDDIとソフトバンクはいずれも計画を上回って進んでいると調査はまとめた。

整備計画の数値は、2027年10月に予定される携帯電話の一斉再免許でも審査の判断材料になる。総務省は携帯の電波免許、2027年10月に一斉更新へ 総務省が審査基準の新設案 3.5GHz帯の基地局増設は年1万3989局から3976局に鈍化のとおり、各社に将来の整備計画を出させ、進み具合を毎年度の電波の利用状況調査で追う仕組みを検討している。今回の調査は、その追跡の土台となる数字でもある。