GMOインターネットのクラウドサービス「お名前.com デスクトップクラウド」が不正アクセスを受けた問題で、親会社のGMOインターネットグループは10月29日、グループのホワイトハッカーチームが独自の調査で犯人の特定につながると考えられる情報を入手し、同日中に警察と関係各所へ提出すると発表した。同グループが設けた懸賞金の専用サイトに寄せられた情報は、30日午後6時時点で累計428件に達した。30日には、全利用者に払う見舞金の受け取り手続きと代替サービスについて、契約者への直接の連絡を始めたと明らかにした。

ホワイトハッカーの独自調査で有力情報、29日に警察へ提出へ

29日午後0時40分時点の第15報によると、同グループは懸賞金サイトに寄せられた情報とは別に、グループのホワイトハッカーチームが独自に調査を進め、犯人の特定につながると考えられる情報を入手した。早期の解決につなげるため、29日にこれらの情報を警察と関係各所に提出するとした。情報の中身や、提出先の「関係各所」がどこかは明らかにしていない。

同グループは第15報で、今回の攻撃と脅迫行為に対し「刑事告訴を含む断固たる法的対応をとってまいります」と改めて表明した。一方で一般の人に向けては、自分で犯人を特定しようとしたり接触したりすること、確証のない情報を投稿することを控え、情報は専用の窓口に寄せるよう求めている。

第15報と第16報では、情報の転載・引用・リンクの共有を控えている人や、個人の立場で拡散の防止に協力している人に謝意を示した。犯人が10月27日に公開した顧客の情報と称するものについて、同社は閲覧や転載を控えるよう呼びかけてきた。経緯はGMO不正アクセス、犯人が顧客情報を公開 特別見舞金は上限300万円、懸賞金100万ドルに詳しい。新たな犯人サイトや、個人情報が不正に公開されているサイトを見つけた場合は、お名前.comの通報フォームで知らせるよう求めている。

懸賞金への情報提供、開設から3日で428件

懸賞金は「GMOサイバー犯罪撲滅・懸賞金」と名付け、犯人の特定・検挙と事件の解明につながる情報に報奨金を払う。上限は制度全体で総額100万米ドル。同グループは1ドル=150円で換算した約1億5000万円を参考額として示している。専用サイトは10月28日正午に開いた。第12報では、報奨金は適法な情報提供による捜査協力に対するもので、「犯人への身代金や、盗まれた情報の買い取り代金ではありません」と説明している。

29日午後8時50分時点の第16報で、同グループは今後、月曜日から金曜日(祝日を除く)の午後6時に、情報提供の件数を同じページに追記して公表すると決めた。公表された累計の件数は次の通り。

懸賞金サイトへの情報提供件数(累計)(件)

020040060011310月28日32110月29日42810月30日
各日午後6時時点。専用サイトは10月28日正午に開設出典: GMOインターネットグループ「不正アクセスに関する現在の対応について(第16報)」
数値で見る(単位: 件)
項目件
10月28日113
10月29日321
10月30日428

開設当日の28日は6時間で113件、29日は1日で208件増えて321件、30日は107件増えて428件になった。29日の第15報では、同日午前11時30分の時点で270件だった。同グループは寄せられた情報の一つひとつについて、内容の確認と精査を進めているとしている。

見舞金と代替サービス、30日に契約者へ直接連絡

30日午後3時30分時点の案内で、同グループは、10月24日の第4報で示した見舞金の受け取り手続きと代替サービスの提供について、契約者に直接の連絡を始めたと発表した。第4報では、手続きや支払い時期を30日午後11時59分までに登録メールアドレスへ知らせるとしていた。

第4報によると、見舞金はサービスを利用しているすべての顧客に、金銭的な被害の有無にかかわらず一律5000円を払う。不正取引による損失の補償とは別に払う。

代替サービスについて、同社は不正アクセスを受けた現行のシステム基盤をそのまま再開せず、セキュリティの仕組みを抜本的に作り直すと決めている。引き続きWindowsのデスクトップ環境を使いたい契約者には、独立したクラウド基盤で運用している別のサービスへの乗り換えを案内し、乗り換え後の6か月間は無償とする。申し込みの前に、現行サービスとの機能の違い、移行の注意事項、無料の範囲、無料期間が終わった後の料金を確認できるようにし、顧客の同意なく移行させることはないとしている。現行サービスの再開時期は示していない。

不正取引の損失補償、申請方法は11月6日までに案内

補償の手続きで、まだ示されていないのは不正取引による損失の申請方法だ。第4報は、不正アクセスに起因して顧客の意思によらない取引が行われ、取引口座に生じた実現損失を補償するとした。取引の差損と手数料などが対象で、市場の変動による損失や、得られたはずの利益、間接的な損害は含まない。対象かどうかは、同社が取引の記録やアクセスの記録をもとに確かめ、結果を個別に知らせる。

利用者には、取引所などに不正アクセスによる取引だと説明して取り消しや返金を相談するよう求めている。返金があれば差し引いた残額を同社が払い、取引所などが返金に応じない場合も同社が損失を払う。申請方法、必要書類、受付期間、支払い時期は、11月6日(金)までに公式サイトと登録メールアドレスで案内するとしている。同社は、補償の手続きで顧客のパスワードや暗証番号を尋ねることはないとして、心当たりのない連絡に注意するよう呼びかけた。ただし取引履歴を確かめるため、MT4・MT5などの閲覧専用パスワードの提示を求めることはあるとしている。

これまでに示された支払いは、次の3種類になる。

種類 対象 額
お見舞金 サービスを利用しているすべての顧客 一律5000円
GMO特別お見舞金 犯人が公開した情報に自分の情報が含まれると確認された顧客 区分ごとに1万〜2万5000円の合計(1公開につき上限300万円)
損失の補償 不正取引で取引口座に実現損失が出た顧客 差損と手数料など(取引所などからの返金を差し引く)
不正アクセスで示された顧客への支払い出典: GMOインターネット「第4報」、GMOインターネットグループ「第12報」

特別お見舞金は、氏名や連絡先など基本的な情報が1万円、取引口座のIDやパスワードなど金融・認証に関する情報が1万5000円、機微情報や要配慮個人情報などプライバシー性の高い情報が2万5000円で、複数の区分にわたれば合計する。

21日の第1報から29日の第16報まで

第16報に載った経過によると、同社は10月21日午前4時にサービスを止めて第1報を出し、同じ日に約80億円を要求する脅迫メールを受け取った。22日に警察に相談し、24日の第4報で見舞金、損失の補償、代替サービスの提供を決めた。同日、能動的サイバー防御の適用を政府の関係機関に要請している。第4報では、攻撃者とみられる者が、国内外の70を超える証券会社・FX会社などにある顧客の取引口座への不正操作を続けると脅していたことも明らかにした。発覚からの経緯はGMO「お名前.com デスクトップクラウド」不正アクセスの経緯と補償 見舞金5000円、再開は未定で詳しく伝えている。

その後、25日から利用者に端末の調査への協力を求め、26日深夜に預かった端末の解析を始めた。27日午後には犯人による情報の公開を確認し、同日夜の第12報で特別お見舞金の内容を示した。28日には懸賞金サイトを開き、犯人サイトのテイクダウン(停止)を第13報で、情報収集と拡散防止への対応を第14報で知らせた。29日の第15報と第16報がこれに続く。グループは11月2日、この問題を受けて熊谷正寿代表ら役員4人の報酬を減額すると決めた。詳細はGMO熊谷代表の報酬30%減 不正アクセスで役員4人、経営責任は検証後に再検討で伝えている。

今後の予定として公表されているのは、平日午後6時の情報提供件数の更新と、11月6日までの損失補償の申請方法の案内だ。見舞金と代替サービスについては、30日から契約者への直接の連絡が始まっている。お名前.comの相談窓口(電話03-5456-2560)は土日・祝日を含め24時間受け付けている。