デジタル庁は9月18日、マイナンバーカードの電子証明書を使ってオンラインの本人確認を行う「公的個人認証サービス(JPKI)」を導入した民間事業者の数を更新し、8月31日時点で1411社になったと公表した。同庁が8月にまとめた資料では7月31日時点で1355社となっており、1年前の同じ時点の813社から542社増えた。増えた分の半分以上は、銀行や信用金庫、農業協同組合といった預金を扱う金融機関である。
公的個人認証サービスは、カードのICチップに入った電子証明書を使い、本人であることと書類が改ざんされていないことをオンラインで確かめる仕組みである。マイナンバー(12桁の個人番号)そのものは使わない。地方公共団体情報システム機構(J-LIS)が証明書の発行元として有効性を保証する。
増えた542社のうち295社は預金を扱う金融機関
デジタル庁の資料によると、7月31日時点の業種別の内訳は、預金取扱金融機関が729社で最も多い。1年前の434社から295社増えた。全体の増加542社の半分以上を、この1区分だけで占めた計算になる。
次に多いのはITサービスの89社(前年71社)、証券の54社(同31社)、金融その他の40社(同20社)、通信の38社(同11社)と続く。生命保険は31社から35社、クレジットカードは9社から20社、暗号資産取引は10社から14社になった。
金融・保険に分類される9区分を合計すると937社で、1355社の約7割にあたる。口座開設や住宅ローン契約、保険料控除証明書の発行といった、法令で厳格な本人確認が求められる手続きに使われているためである。
「引っ越し一括手続き」で地銀と信用金庫が並んで参加
一気に社数が伸びた事情は、導入事例の一覧から読み取れる。一覧には用途を添えた事業者名が並ぶが、最も多い「口座開設時等の本人確認」は714事業者分、次いで「オンラインでの本人確認サービスの提供」が273事業者分である。3番目に多いのが、引っ越し手続きを一括で済ませる共同サービス「ペンリィ」における本人確認で、196事業者分が掲載されている。
ここに名を連ねるのは、北海道銀行から琉球銀行まで全国の地方銀行と、各地の信用金庫である。個々の金融機関が自前で設備を組むのではなく、共通のサービスに相乗りする形で一斉に導入が進んだ。預金取扱金融機関729社の中身に農業協同組合と農業協同組合連合会が多数含まれるのも、同じ構図である。
自前で認定を取るか、認定事業者に委託するか
民間事業者が利用するには2つの道がある。一つは公的個人認証法に基づく主務大臣の認定を自ら受け、証明書の有効性を確認する「プラットフォーム(PF)事業者」になる方法。もう一つは、認定を受けた事業者に確認業務を委託し、自社は設備を持たずに使う方法である。
認定を受けた事業者は28社で、1年前の23社から5社増えた。直近では7月27日にアイフルが認定されている。1355社の大半は、この28社のいずれかにぶら下がる形で使っている。
費用面では、証明書の有効性を1件確認するごとに、署名用電子証明書が20円、利用者証明用電子証明書が2円と定められている。ただしデジタル庁は、これらを2023年1月から当面無料としている。失効情報の一覧を1日1回受け取る方式は恒久的に無料、その都度問い合わせる方式は当面3年間無料という扱いで、導入の費用を下げて参入を促す狙いがある。
発行は人口の3分の2、用途は役所の外へ
デジタル庁によると、マイナンバーカードの有効申請件数は2023年1月時点で運転免許証の発行枚数を超え、人口の3分の2にあたる約8300万件に達した。カードが行き渡った後の課題は、役所の窓口以外でどれだけ使われるかに移っている。
用途は金融以外にも広がりつつある。対面の場面では、学園祭の年齢確認にマイナンバーカード デジタル庁アプリは「20歳以上か」だけを表示 12日の東京都市大など5大学でで取り上げたように、年齢が基準を満たすかどうかだけを画面に出す使い方が試されている。郵便では、本人限定受取郵便、2027年4月から券面の目視をやめICチップ照合へ スマホのマイナンバーカードでも受け取り可能にのとおり、配達員が券面を目で見る確認からICチップの読み取りに切り替わる。
一方で、今回の一覧に載る業種には偏りがある。人材は7社、医療・福祉は8社、学術機関は4社、小売は2社にとどまる。厳格な本人確認が法令で義務づけられていない分野では、導入の動機が弱いままである。
