厚生労働省は10月23日、2023年(令和5年)3月に学校を卒業して就職した人の離職状況を公表した。就職から3年以内に最初の勤め先を離れた人の割合(3年以内離職率)は、大学卒が31.2%、高校卒が36.9%だった。1年前に公表された2022年3月卒は大学卒33.8%、高校卒37.9%で、どちらも下がった。短大等卒は44.5%から43.1%に下がり、中学卒は54.1%から54.5%に上がった。

雇用保険の記録から数える統計

この統計は、アンケートではなく雇用保険の加入記録から作られている。会社や店が新しく人を雇うと、ハローワークに雇用保険の加入届を出す。厚労省はその届に書かれた生年月日、加入した日、加入の理由から、学歴ごとに新卒で就職したとみられる人を推定し、その人たちが離職した日を追って離職率を出している。

大学卒の場合、2001年4月1日以前に生まれ、2023年3月1日から6月30日までに新規学卒者として雇用保険に入った人を「2023年3月卒の大卒就職者」とみなす。その人が2026年3月31日までに、加入した事業所を離れれば離職者に数える。離職の理由や、辞めた後に別の会社で働いているかどうかは問わない。 自分から転職した人も、会社の都合で辞めた人も同じ1人として数えるため、この数字は「最初の勤め先にどれだけとどまったか」を示すもので、失業の多さを示すものではない。また、雇用保険に入らない働き方で就職した人は対象に入らない。

数え方は毎年同じで、年ごとの比較ができる。各年の数字は、卒業から3年後の6月時点でつかんだものだという。

大卒は45万6908人が就職、14万2415人が離職

在職期間別の表によると、2023年3月卒の大卒就職者は45万6908人で、3年以内に14万2415人が離職した。前年の2022年3月卒は44万9012人が就職し、15万1911人が離職していた。就職した人は約8000人増えたのに、辞めた人は約9500人減ったことになる。

辞めた時期を年ごとに分けると、大学卒は1年目が11.0%、2年目が10.9%、3年目が9.3%だった。2022年3月卒は1年目12.1%、2年目11.9%、3年目9.9%で、どの年も下がっている。高校卒は1年目17.4%、2年目11.0%、3年目8.5%で、1年目に辞める人の割合は大学卒の11.0%より高い。高校卒の就職者は13万90人で、このうち4万8045人が離職した。

学歴 2022年3月卒 2023年3月卒 1年目 2年目 3年目
中学 54.1% 54.5% 34.0% 13.0% 7.6%
高校 37.9% 36.9% 17.4% 11.0% 8.5%
短大等 44.5% 43.1% 18.4% 13.2% 11.5%
大学 33.8% 31.2% 11.0% 10.9% 9.3%
学歴別の就職後3年以内離職率と、2023年3月卒の在職年数別の内訳

出典: 厚生労働省「新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況」

長い流れで見ると、大学卒の31.2%は2018年(平成30年)3月卒と同じ水準で、2019年3月卒以降では最も低い。2021年3月卒の34.9%から2年続けて下がった。それでも3割を上回るのは2010年3月卒から14年続いている。高校卒の36.9%は2020年3月卒以降で最も低く、2021年3月卒の38.4%から2年続けて下がった。

高校卒は就職する人の数そのものが減っている。2017年3月卒の17万9529人に対し、2023年3月卒は13万90人で、6年で約4万9000人少ない。

規模が小さい事業所ほど高い離職率

事業所の規模による差は大きい。大学卒では、従業員1000人以上の事業所の離職率が24.2%だったのに対し、5人未満の事業所では58.2%と、2倍を超えた。高校卒でも1000人以上の24.4%に対し、5人未満は61.3%だった。

事業所規模別の3年以内離職率(2023年3月卒)(%)

高校卒大学卒

5人未満61.358.25〜29人53.350.630〜99人45.539.7100〜499人36.431.7500〜999人29.429.01000人以上24.424.2
規模が小さい事業所ほど離職率が高い。1000人以上では高卒・大卒とも24%台出典: 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和5年3月卒業者)」
数値で見る(単位: %)
項目高校卒大学卒
5人未満61.358.2
5〜29人53.350.6
30〜99人45.539.7
100〜499人36.431.7
500〜999人29.429.0
1000人以上24.424.2

前年と比べると、大学卒は1000人以上で27.0%から24.2%に、500〜999人で31.5%から29.0%に下がるなど、規模の大きい事業所ほど下がり方が大きかった。一方、5人未満では57.5%から58.2%へ上がった。高校卒も5人未満は前年より下がったが、30〜99人は前年を上回った。大学卒では、5人未満と1000人以上の差が前年の30.5%分から34.0%分に広がった。

産業別では、大学卒・高校卒とも宿泊業・飲食サービス業が最も高かった。大学卒は49.9%、高校卒は61.6%で、大学卒は前年の55.4%から下がった。次いで高いのは生活関連サービス業・娯楽業で、大学卒49.8%(前年54.7%)、高校卒61.1%(同61.5%)。このほか大学卒では教育・学習支援業が42.3%、医療・福祉が39.1%、小売業が38.1%と続いた。高校卒では医療・福祉の49.4%と小売業の48.5%が前年をわずかに上回った。

後に続く学年も1年目の離職は減っている

厚労省の表には、まだ3年たっていない2024年3月卒と2025年3月卒の途中経過も載っている。いずれも2026年6月時点でつかんだ数字だ。

大学卒の1年以内の離職率は、2023年3月卒が11.0%だったのに対し、2024年3月卒は10.2%、2025年3月卒は9.6%と下がっている。2024年3月卒は2年以内で20.2%で、2023年3月卒の2年以内(1年目と2年目の合計で約21.8%)を下回る。高校卒も1年以内の離職率は17.4%、16.7%、16.1%と学年を追って下がった。

ただし、この途中経過は辞めた時期の早い人を数えたものにすぎない。2023年3月卒も3年目に9.3%が辞めており、3年分がそろうまで最終的な離職率は分からない。

厚労省は今回の発表で、離職率が下がった理由には触れていない。新卒応援ハローワークなどを通じて、就職した人が職場に定着するための支援や、離職した人への就職支援を続けるとしている。若者がどんな理由で仕事を辞め、次の職場をどう選んでいるかは、5年に1度の別の調査で尋ねており、中途採用を新卒より優先したい企業が40.0% 厚労省の転職者実態調査 辞めた理由の最多は「賃金が低かった」25.5%で結果をまとめた。

数字をどう読むか

3年以内離職率は「新卒の3割が3年で辞める」という言い方で知られ、若者の定着の悪さを示す数字として引かれることが多い。しかし統計の作りからみると、この数字には転職によるキャリアの移動も、職場が合わずに辞めたケースも同じく入っている。数字が下がったことだけで、職場の環境が良くなったとも、若者が転職を控えるようになったとも言い切れない。学歴ごとの母数にも差がある。大学卒は45万人余り、高校卒は13万人余りの就職者をもとにした数字だが、中学卒の就職者は715人にとどまり、前年の54.1%から54.5%への上昇も、離職者が3人ほど違えば動く幅だ。

それでも、学歴を問わず2年続けて下がり、後に続く学年でも1年目の離職が減っていることは、数字として確かめられる変化だ。一方で、従業員5人未満の事業所では大学卒の離職率がむしろ上がり、1000人以上の事業所との差は開いた。小さな事業所ほど採った新人を3年のうちに失いやすいという構図は、今回の統計でも変わっていない。どの規模・どの産業で離職が減り、どこで減っていないのかまで見て、定着の支援を向ける先を考える必要がある。