厚生労働省は9月25日、2025年の「転職者実態調査」の結果を公表した。今後3年間に転職者を採用する予定がある事業所は63.6%で、前回2020年調査の53.3%から増えた。このうち新規学卒者と比べて「転職者を優先して採用したい」とした事業所は40.0%で、前回の35.7%から上がった。逆に「新規学卒者を優先して採用したい」は12.3%から9.8%に下がり、採用の重心が中途に移っている姿が浮かんだ。

5年に1度、受け入れ側と本人の両方に聞く調査

転職者実態調査は、転職者の働き方と意識を、受け入れる事業所側と転職した本人側の両面から調べるもので、おおむね5年おきに実施されている。今回は常用労働者を5人以上雇う事業所約1万7000か所と、そこで働く転職者約1万3000人が対象。2025年10月1日現在の状況について、事業所調査を同年9月16日から10月17日まで、個人調査を10月17日から12月19日までの期間で実施した。有効回答率は事業所調査が52.7%、個人調査が52.3%だった。

この調査でいう「転職者」は、雇用期間の定めが無いか1年以上の定めがあるフルタイムの労働者のうち、その事業所に雇われる前の1年間に他の企業に雇われた経験がある人を指す。2024年10月1日から2025年9月30日の間に雇われた人が対象で、他社での経験が学生アルバイトや1か月以内の臨時の仕事だけという場合は含まない。パートなどの短時間労働者も対象外で、いわゆる正社員層の移動を捉えた数字だ。

実際に転職者がいる事業所は、フルタイムの労働者がいる事業所の38.2%。前回の33.0%から増えた。産業別では「不動産業,物品賃貸業」が53.9%で最も高く、「情報通信業」49.0%、「医療,福祉」48.8%と続く。事業所の規模が大きいほど転職者がいる割合は高かった。

採用予定は情報通信業が72.6%、金融は新卒志向が残る

今後3年間に転職者を採用する予定がある事業所を産業別にみると、「情報通信業」が72.6%で最も高く、「建設業」70.9%、「運輸業,郵便業」69.4%と続いた。人手不足が深刻な分野ほど中途採用を当て込んでいる。

新規学卒者との優先順では、「転職者を優先して採用したい」が「鉱業,採石業,砂利採取業」73.4%、「サービス業(他に分類されないもの)」57.2%、「運輸業,郵便業」55.6%の順。一方「新規学卒者を優先して採用したい」は「金融業,保険業」が28.1%で突出し、「複合サービス事業」23.6%、「情報通信業」18.6%が続いた。新卒を一括で採って社内で育てる慣行が根強く残る業界と、即戦力を外から取りに行く業界とで、採用の考え方が分かれている。

辞めた理由は「自己都合」が81.3%に上昇

転職者が直前の勤め先を辞めた主な理由は「自己都合」が81.3%で、前回の76.6%から上がった。逆に「倒産・整理解雇・人員整理による」は5.8%から3.3%に、「出向(移籍出向)」は2.3%から0.7%に下がっている。会社の都合で押し出されるのではなく、本人が選んで動く転職が増えた形だ。

自己都合で辞めた人にその理由を3つまで挙げてもらうと、「賃金が低かったから」が25.5%で最も多く、「会社の将来に不安を感じたから」25.2%、「満足のいく仕事内容でなかったから」24.7%が僅差で続いた。男女別では、男性は「賃金が低かったから」が29.6%、女性は「満足のいく仕事内容でなかったから」が23.5%でそれぞれ最多となり、重く見る点が分かれた。賃金の底上げは政策面でも進んでおり、最低賃金の引き上げ、10月1日から順次発効 全国平均は1121円から1177円へ 15都道県は1日、沖縄は12月2日と2か月の差のように、10月から各地で新しい水準が適用される。

転職後も、賃金には4人に1人超が不満

転職先での満足度をみると、職業生活全体では「満足」「やや満足」が54.7%、「不満」「やや不満」が10.7%だった。項目別では「仕事内容・職種」が満足68.7%に対し不満10.9%、「人間関係」が満足62.1%に対し不満13.4%と、おおむね満足が大きく上回る。

その中で「賃金」だけが様相を異にする。満足は49.8%にとどまり、不満が27.6%。職業生活全体を除く10項目のうち、不満の割合が最も高かった。女性は不満が30.7%で、男性の24.7%を上回った。賃金の低さを理由に辞めた人が最も多いにもかかわらず、移った先でも4人に1人超が賃金に納得していない。

それでも今の勤め先を選んだ理由(3つまでの複数回答)は「仕事の内容・職種に満足がいくから」40.2%、「自分の技能・能力が活かせるから」38.4%、「労働条件(賃金以外)がよいから」23.1%の順。「賃金が高いから」は18.8%で4番目で、前回の15.1%からは上がったものの、仕事の中身や技能を活かせるかを重く見る傾向は変わっていない。今後については「今の職場で今後も働きたい」が55.1%と前回の52.7%から増え、「機会があれば転職したい」は20.6%だった。

受け入れ側は教育訓練を増やした

転職者に教育訓練を実施した事業所は82.6%で、前回の74.5%から増えた。内訳(複数回答)は、日常の業務に就きながら行う「計画的なOJT」が79.8%、仕事を一時的に離れて行う「OFF-JT」が64.5%、入職時のガイダンスが53.9%、職務遂行に必要な能力・知識を付与する教育訓練が35.7%だった。

事業所が転職者を採用した理由は、管理職や専門的・技術的な職種では「経験を活かし即戦力になるから」「専門知識・能力があるから」が多い。即戦力を期待しつつ訓練にも手をかける、という両構えが5年前より強まったことになる。働く側の学び直しは学び直し、この1年でしたのは女性9.6%・男性15.0% 「意欲はあるのにしていない」が男女とも約24% 男女共同参画白書で示された通り道半ばで、会社側の訓練がその差を埋める役割を担う場面も増えそうだ。

転職活動の方法(複数回答)は「求人サイト・求人情報専門誌・新聞・チラシ等」が45.1%で最も多く、「ハローワーク等の公的機関」29.6%、「縁故(知人、友人等)」22.2%と続いた。