中小企業庁は9月30日、中小企業新事業進出補助金の第4回公募について、応募のあった1499者のうち508者を補助金交付候補者として採択したと公表した。公募期間は3月27日から6月19日まで。採択された508者のうち224者は、米国の追加関税措置で影響を受けた事業者を優先採択する審査上の加点の対象だった。

同庁は同じ公表資料で「本公募回をもって新事業進出補助金については公募を終了しました」と明記した。2025年に第1回公募が行われた同補助金は、4回の公募で新規受付を終えたことになる。

応募は3006者から1499者へ、採択率は4回連続で低下

事務局の中小企業基盤整備機構が公表している採択結果によると、4回の公募の応募と採択は次のとおりである。応募者数は、複数の事業者が連携した申請を構成員数にかかわらず1者として数え、公募期間中に取り下げられた申請は除いている。

公募回 申請受付締切 応募 採択 採択率
第1回 2025年7月15日 3006者 1118者 37.2%
第2回 2025年12月19日 2350者 832者 35.4%
第3回 2026年5月31日 1212者 423者 34.9%
第4回 2026年6月19日 1499者 508者 33.9%

応募は第1回の3006者が最も多く、第4回は1499者でほぼ半分に減った。4回の通算では応募8067者に対し採択2881者で、採択率は35.7%となる。採択率は第1回の37.2%から第4回の33.9%へ、回を追って下がった。採択率は公表された応募数と採択数から計算した値で、事務局が採択率として公表しているものではない。

採択の44.1%が米国の追加関税で加点

第4回で目を引くのは、採択508者のうち224者、44.1%が米国の追加関税措置による加点対象だったことである。この加点は、関税で影響を受けた事業者を審査上優先する仕組みで、採択者の4割強がこれに該当した。設備投資を支援する補助金が、通商環境の変化に対応するための資金としても使われていることを示している。

事務局が公表した第4回の採択結果概要によると、申請事業者の主な業種は、応募・採択のいずれも製造業が最も多く、建設業、卸売業・小売業が続いた。都道府県別では応募・採択とも東京都、大阪府、愛知県が多く、東京都は応募287者に対し採択80者(27.9%)、大阪府は137者に対し41者(29.9%)、愛知県は120者に対し48者(40.0%)だった。申請額の分布では2500万円以上3000万円未満が286者で最も多く、1000万円以上1500万円未満、500万円以上1000万円未満が続いた。

中小企業の設備投資をめぐる環境については、非製造業の中小企業、従業員1人あたりのソフトウェアは大企業の7% 生成AIを「全社的に活用」は300人未満で1.3%、5000人以上は19.0% で見たとおり、大企業との差が開いたままの分野も残っている。

後継は3つの枠に再編、上限は最大9000万円

新規の受付は、9月30日午後6時に第1回公募が始まった「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」に移る。中小企業庁は、技術的革新性のある製品・サービスの開発、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出、海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制の強化にかかる設備投資などを支援するとしている。応募締切は10月30日午後6時、採択発表は2027年1月ごろを予定する。

事務局の中小企業基盤整備機構によると、後継補助金は3つの枠に分かれる。

  • 革新的新製品・サービス枠 革新的な新製品・新サービスの開発を支援する。既存の製品・サービスの生産工程の改善だけを図る事業は対象外。補助上限は最大2500万円で、賃上げ特例の適用を受ける場合は最大3500万円。従業員数に応じて1〜5人は750万円(特例適用時850万円)、6〜20人は1000万円(1250万円)、21〜50人は1500万円(2500万円)、51人以上は2500万円(3500万円)。補助率は中小企業者が2分の1、小規模企業・小規模事業者と再生事業者は3分の2。補助下限は100万円。
  • 新事業進出枠 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する。補助上限は最大7000万円(賃上げ特例の適用時は最大9000万円)。従業員数1〜20人は2500万円(3000万円)、21〜50人は4000万円(5000万円)、51〜100人は5500万円(7000万円)、101人以上は7000万円(9000万円)。補助率は小規模企業・小規模事業者と再生事業者を含む中小企業者が2分の1。機械装置・システム構築費か建物費のいずれかを必ず補助対象経費に含める必要がある。補助下限は750万円。
  • グローバル枠 海外販路の開拓に向けた国内製造拠点の強化を支援する。取引先主導の事業は対象外。補助上限は新事業進出枠と同じ最大7000万円(同9000万円)で、補助率は3分の2、補助下限は750万円。

補助率はいずれも、地域別最低賃金引上げ特例の適用を受ける事業者は引き上げられ、革新的新製品・サービス枠と新事業進出枠では2分の1が3分の2になる。

付加価値4.0%・給与3.5%の成長が条件、未達なら返還も

後継補助金で申請者が負うことになる条件は軽くない。事務局は、補助事業終了後3年から5年の事業計画で、付加価値の年平均成長率を4.0%以上、従業員1人あたり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上とすることを、いずれも満たす必要があるとしている。そのうえで「目標未達の場合は補助金の一部または全額の返還義務が生じる場合がありますのでご注意ください」と注意を促している。

付加価値とは、営業利益と人件費、減価償却費を合わせたもので、企業が事業活動で新たに生み出した価値を指す。これを毎年4.0%ずつ伸ばし、同時に従業員1人あたりの給与も毎年3.5%ずつ上げる計画を、3年から5年にわたって達成する必要がある。設備を入れて売上を増やすだけでなく、その成果を賃金に回すところまでが補助の条件になっている形だ。

中小企業庁は、中小企業の「稼ぐ力」強化戦略を公表 人手不足時代へ「数より質」 中小企業庁 で示したとおり、支援の軸を企業数の維持から生産性と賃上げに移している。付加価値と給与の成長率を補助の要件に据えた今回の設計は、その方向に沿ったものといえる。