総務省の情報通信審議会電気通信事業政策部会は9月4日、携帯電話や光回線の契約を巡る消費者保護ルールの見直しについて一次答申をまとめた。答申は、いまは通信サービスの契約にしかかかっていない事業者の説明義務を、通信契約と一緒に売られる動画配信やセキュリティなどのオプションにも広げることを検討するとした。通信契約を解約するときに、オプションを続ける意向があるかを事業者が確認する取り組みも検討課題に挙げた。
昨年10月21日に総務省が同審議会へ諮問した案件(諮問第1245号)で、消費者保護政策委員会が8回の会合を重ねて論点を整理した。一次答申は具体的な制度を決めたものではなく、「今後の検討の方向性」を示す段階にとどまる。法令の改正で対応するのか、総務省のガイドラインで対応するのかも今後決める。最終答申は2027年夏頃を目指す。
説明義務は通信サービスだけ オプションは対象外だった
電気通信事業法は、事業者が契約前に料金や解約条件などを説明し、契約書面を交付することを義務づけている。2015年の法改正で盛り込まれた仕組みで、今年で約10年になる。ただ、この義務がかかるのは通信サービスの契約だけだ。店頭で一緒に勧められる動画配信、セキュリティ、端末保証といったオプションは対象外で、説明の中身は各社の裁量に任されている。
答申は、通信とオプションをまとめて売る形が広がった結果、「契約の全容について、説明や表示を通じて消費者が正確に理解をすることが困難」になっていると指摘した。オプションの解約は通信契約の解約とは別に手続きが必要なため、解約し忘れて料金を払い続ける例が出ている。答申は、解約の方法や条件を契約後や解約時にも説明するよう求めるとともに、通信契約を解約する際にオプションを続けるかどうかを確認する仕組みを検討するとした。
端末の説明も広げる方向だ。誤解が生じやすい部分として、端末販売価格に含まれる頭金の位置づけ、端末購入プログラムを使う方法と条件、残債が発生する条件と金額が挙げられた。契約者が入院・死亡したり認知症になったりした場合に親族が解約する方法も、書面やホームページに載せて広く知らせるよう事業者に促す。
携帯大手の苦情、25.7%は「心当たりのない請求」 70代は利用割合の1.5倍
総務省と国民生活センターが把握した電気通信分野の苦情相談は、2015年度の9万668件から2024年度の6万9448件へ、10年で2割以上減った。それでもなお年7万件程度が続いており、答申は「引き続き一定の水準にある」として、さらに減らす必要があるとした。
2024年度の苦情相談を内容別に見ると、携帯大手(MNO)では「通信料金の支払い(心当たりのない請求等)」が25.7%、「解約の条件・方法」が22.0%を占めた。光回線(FTTH)では「勧められて新規契約または事業者変更」が61.5%、「解約の条件・方法」が34.3%だった。
年代別には高齢者への偏りがある。携帯電話の利用者のうち70代は14.2%だが、苦情相談では21.8%を占める。80代以上は利用7.3%に対し苦情10.6%。光回線も70代が利用14.1%・苦情21.0%で同じ傾向だ。答申は、80歳以上の契約で家族などへの意向確認ができない人や、確認する相手も高齢者になる人に対して特別な配慮が行われていないと指摘した。携帯大手には65歳・80歳といった年齢の基準があるが、光回線事業者や格安スマホ事業者(MVNO)には統一的な基準がなく各社まちまちだといい、答申はこうした事業者にも統一基準を設けることを検討課題とした。
答申は、説明を充実させても追いつかないほどサービスと料金プランが複雑になっている可能性にも触れ、事業者が分かりやすく簡潔なプランを提供する努力も今後の課題だとした。総務省はプランの水準そのものも定点で調べており、スマホ料金、東京は月20GBで2974円と6都市中2番目の安さ 無制限は9332円でロンドンの1.9倍 総務省調査で扱った国際比較調査もその一つだ。
光回線の苦情、64.5%は電話勧誘 違反した代理店の名前公表も検討
契約の入り口別に見ると、光回線の苦情相談は64.5%が電話勧誘、17.7%が訪問販売だった。店舗は量販店3.0%とその他5.7%で合わせて8.7%、オンライン契約は1.9%にとどまる。電話勧誘は2022年7月に説明時の書面交付が義務づけられたが、答申は、それ以降も苦情相談は横ばいで「販売代理店における法令遵守が引き続き不十分」だと指摘した。氏名を告げない勧誘や説明書面を交付しない勧誘についての苦情も寄せられているという。
答申は抑止力を強めるため、総務省が行政指導や行政処分を強化し、違反事例や苦情相談の件数と内容を踏まえて事業者や販売代理店の名称を公表する仕組みを検討するとした。事業者が代理店を指導する義務(指導等措置義務)についても、違反があった代理店への措置の状況などを総務省へ報告させたり公表したりする形を検討する。悪質な違反を見つけても営業停止や契約解除といった厳しい措置を取る例はほとんどなく、指導や研修で済ませているため抑止力が足りない可能性があるとした。販売数を重視した代理店の評価が無理な営業を生んでいる可能性にも言及し、質の面も考える評価指標の設定を促した。
残る論点は電子交付とダークパターン 最終答申は2027年夏
答申はこのほか、契約書面を紙ではなく電子で渡すことを原則にするかどうか、オンライン上で解約を妨げたり誤認を招いたりする「ダークパターン」と呼ばれる表示にどう対処するか、契約直後に無条件で解約できる「初期契約解除」と、その例外として総務大臣の認定を受けた「確認措置」の関係をどう整理するかを検討課題とした。解約手続きについては、オンラインで適切に受け付け、特段の事情がない限り遅滞なく解約できる状態を確保すべきだとし、総務省のガイドラインへ反映することが考えられるとした。
同じ情報通信審議会では、携帯電話の電波を使う固定電話サービスを国民全員が使える「ユニバーサルサービス」に格上げする議論も進んでいる(携帯の電波を使う「固定電話」、ユニバーサルサービスへ格上げ 総務省審議会が答申案 メタル回線1043万件の受け皿に)。固定電話の受け皿づくりと契約ルールの見直しが並行する形になる。
