日本郵便は9月25日、総務省の情報通信審議会郵便事業政策委員会に「郵便事業の安定的・持続的な運営を確保するための現状と課題」と題した資料を提出した。郵便法などで義務付けられているサービス水準のうち、配達頻度・送達日数・ポストの設置数について、利用者のニーズやコストを踏まえた見直しを総務省に要望することを検討する、と資料に明記した。郵便の「週5日・原則1日1回の配達」と「原則4日以内の送達」が、再び緩和の検討対象になる。

郵便物は24年で55.1%減 年賀は36億通から5億通に

資料によると、郵便物数は2001年度の263億通をピークに毎年減り続け、2025年度は118億通だった。24年間で55.1%減った計算になる。日本郵便は、足元の傾向が続けば2028年度には105億通になると見込む。

内訳の落ち込みは商品によって差が大きい。手紙にあたる第一種郵便物は2000年度の132億通から2025年度は62億通へ、はがきの第二種郵便物は75億通から43億通へ減った。年賀は36億通から5億通と、7分の1近くまで縮んでいる。請求書のウェブ化や個人間の通信の減少が続いた結果だ。

一方で郵便が担う役割は残っている。資料は、選挙関係郵便、行政・裁判関係書類、日刊紙、慶弔の通知など確実な送達が求められる情報の伝達に幅広く使われており、書留や内容証明、特別送達を含めて公的・社会的な情報伝達を支えている、と位置づけた。

1配達箇所あたり0.72通 ポストの25.1%は月30通以下

郵便物が減る一方で、配達先は増えている。単身世帯の増加により、総配達箇所数は1996年度の4988万9000箇所から2025年度は6319万4000箇所に増えた。配達すべき普通郵便は1日あたり6957万3000通から4555万1000通へ減ったため、1つの配達先に1日に届く郵便物は1996年度の1.39通から2025年度は0.72通となり、1通を割っている。決まったルートを毎日回る必要があるため、郵便物が減っても費用は同じようには減らない。

ポストも同じ構図だ。設置本数は郵便法施行規則で日本郵政公社時代の約18万本を維持することが基準とされ、2026年3月末時点で17万1489本ある。ただし2023年6月の調査では、全体の25.1%にあたる4万3940本が月30通以下の利用にとどまり、うち6793本は月1通以下だった。人口密度が1平方キロメートルあたり120人以下の自治体では、月30通以下のポストの割合は49.7%に達する。

営業損益は4年連続の赤字 営業費用の73.8%が人件費

郵便事業の営業損益は、2019年度の376億円の黒字から2021年度は78億円の黒字に縮み、2022年度に211億円の赤字へ転落した。民営化以降で初めての赤字だった。その後は2023年度が896億円の赤字、2024年度が630億円の赤字、2025年度が322億円の赤字で、4年続けて赤字となっている。

2024年10月には料金を改定し、25グラム以下の定形郵便物を84円から110円へ、通常はがきを63円から85円へ引き上げた。それでも黒字に戻っていない。2025年度の営業費用1兆3414億円のうち人件費は9900億円で73.8%を占め、物価と人件費の上昇がそのまま収支に効く構造にある。工程別では配達にかかる費用が6307億円と最も大きい。

日本郵便が2026年5月15日に策定した収支改善計画では、コスト削減と収益拡大によって2028年度に2268億円超の改善を見込む。それを実施してもなお、2028年度の当期純損益は1691億円の赤字になると見込んでいる。資料は、郵便料金全般の見直しについても検討を行う必要がある、としている。

前回の見直しは見込みを下回る効果 答申は2027年夏ごろ

サービス水準の緩和は今回が初めてではない。2020年11月に改正郵便法が成立し、2021年10月から土曜日の配達が休止され、送達日数も繰り下げられた。日本郵便が2018年12月に総務省の郵便局活性化委員会へ示した効果額は合計約625億円だったが、2023年3月時点の実際の効果額は約523億円にとどまった。土曜配達の休止が約535億円の見込みに対し約491億円、送達日数の繰り下げが約90億円の見込みに対し約32億円だった。

しかもこの約523億円のうち、会社全体として経費削減になったのは300億円弱で、残る200億円強は土曜日から他の曜日への人員の再配置にすぎないと資料は説明している。サービス水準を下げても、見込んだ額がそのまま浮くわけではない。

諸外国では配達頻度の引き下げが先行している。英国のロイヤルメールは2025年7月にセカンドクラス郵便の隔日配達への移行を決め、オーストラリアポストは2024年4月から普通郵便を隔日配達に切り替えた。ニュージーランドポストは2015年から都市部の配達を週3日に減らし、2025年の契約変更で都市部は週2日以上、地方は週3日以上に改めた。

総務省は8月20日、当時の林芳正総務相の名で「郵便事業の安定的・持続的な運営を確保するための方策及び郵便局が地域を支援する役割を果たすためのサービス提供の在り方」を情報通信審議会に諮問した(諮問第1246号)。答申を希望する時期は2027年夏ごろとしている。林前総務相が退任会見 在任11か月で26道府県を訪問 続投希望の報道と総裁選への対応は明言避けるのあと、9月の内閣改造で総務相は藤井氏に交代した。

郵便局側の検討は28日に開かれる郵便局活性化委員会が担う。藤井総務相は25日の記者会見で、郵便局について「郵便局ネットワークの水準を維持することは重要であると考えております」と述べ、2026年6月に成立した郵政民営化法等の一部を改正する法律(令和8年法律第50号)を受けて、従来の金融窓口関連の交付金に加えて2027年4月から新たな郵便窓口関連の交付金が交付されることになる、と説明した。同じ会見では、総務省、日本郵便の放棄・隠匿事案めぐる内部チャットで職員7人に聞き取り 「不適切な表現」認める者も 林総務相「復元の必要はない」で扱った郵政行政部のチャット削除をめぐり、藤井総務相が「確認を行う必要はないと考えております」と改めて述べ、前任者と同じ立場を示した。