内閣府政府広報室は9月11日、「道路に関する世論調査」の速報を公表した。高速道路の維持修繕と更新にかかる費用を誰が負担すべきかを聞いたところ、通行料金でまかなうべきだとする回答が合わせて66.4%を占め、前回の2021年7月調査の62.9%から増えた。道路の老朽化対策に費用がかかり続けるなか、負担を利用者側に求める意識がじわりと強まっている。

「無料になるはず」だった高速道路

質問は、いまの制度を説明したうえで聞く形をとっている。高速道路の建設や維持修繕、更新の費用は通行料金でまかなっているが、料金の徴収期限が満了した後は無料になり、維持修繕と更新の費用は税金でまかなう制度になっている。一方で、期限の後も利用者が通行料金で負担すべきだという考え方もある。そのどちらに近いかを4択で尋ねた。

回答は「高速道路の通行料金でまかなっていくべきだと思うが、ある程度は税金でまかなうこともやむを得ない」が50.0%で最も多く、「税金ではなく、高速道路の通行料金でまかなっていくべき」が16.4%。この2つを合わせた66.4%が料金負担に傾いた回答になる。

逆方向の回答は、「税金でまかなっていくべきだと思うが、ある程度は高速道路の通行料金でまかなうこともやむを得ない」が28.6%、「全額税金でまかなっていくべき」が4.2%で、合わせて32.8%だった。2021年7月調査では同じ2つが30.4%と5.5%で計35.9%あり、5年で3.1%分減った計算になる。

背景には制度そのものの変更がある。国土交通省は2023年2月10日、道路整備特別措置法などの改正案を閣議決定した。高速道路の更新に必要な事業を追加するにあたり、国土交通大臣への許可申請日から50年以内という債務返済期間を設け、料金の徴収期限を最長で令和97年9月30日、西暦でいえば2115年9月30日まで延長できるようにする内容だった。かつて「償還が終われば無料開放」と説明されてきた高速道路は、事実上、今世紀いっぱい有料で使い続ける制度に置き換わっている。

「利用者が払う」に3人に2人が理解

高速道路に限らず、道路全般の費用を車の利用者が負担するという考え方についても聞いている。今後の中長期的な道路整備や維持修繕、更新の費用を車を使う人が負担することについて、「適切である」は12.9%にとどまったが、「やむを得ない」が53.2%あり、合わせて66.1%。「不適切である」は32.8%だった。前回調査では「適切」14.4%、「やむを得ない」52.5%、「不適切」31.5%で、大きな変化はない。

積極的な支持は1割台にとどまり、「やむを得ない」という消極的な受け入れが過半を占める構図が、5年を挟んで動いていない点が特徴といえる。

混雑緩和や財源確保のため、車が一定の地域に入る場合に料金を支払う制度についても質問した。欧州などで導入されている、いわゆるロードプライシングにあたる仕組みだ。「適切である」14.2%と「どちらかといえば適切である」48.6%を合わせて62.7%が肯定的で、「どちらかといえば不適切である」24.2%と「不適切である」12.1%の計36.3%を上回った。ただし前回は肯定が64.7%、否定が33.8%で、否定側がわずかに増えている。

値上げには慎重、渋滞より料金維持

もっとも、負担のあり方に理解を示すことと、実際の値上げを受け入れることは別だった。

高速道路の渋滞と通行料金の関係を聞いた質問では、「一部区間で渋滞が発生していても、現在の通行料金を維持すべき」が56.2%で過半を占めた。「通行料金を現在より引き上げてでも、渋滞を解消した方がよい」は30.7%、「さらに渋滞が悪化するとしても、通行料金を現在よりできるだけ引き下げる方がよい」は12.1%だった。前回はそれぞれ54.4%、29.0%、14.6%で、引き下げを求める声がやや減り、現状維持と引き上げが少しずつ増えている。

渋滞そのものは身近な問題として意識されている。いつも通る一般道路で渋滞しているところが「ある」と答えた人は62.0%。渋滞の解決策としては「交差点や踏切の立体交差化、車線数の増加、右折レーンの設置など道路構造を改良する」が52.3%で最も多く、「信号のサイクルを適切に調整する」43.5%が続いた。「高速道路の料金を安くするなどして、高速道路への交通の転換を促す」は21.8%だった。行楽期の高速道路の混雑は毎年の課題で、この秋の5連休でも11年ぶり5連休の高速道路、10キロ以上の渋滞279回を予測 今年の大型連休の225回を上回る 中央道下りは最長45キロという予測が出ていた。

力を入れてほしいのは「災害に備えた対策」

どの分野の道路整備に力を入れてほしいかを複数回答で聞いた質問では、「大地震や津波、大雨、大雪、火山噴火などによる災害に備えた対策」が58.7%で最多だった。次いで「すれ違いが困難な狭い道路や急カーブの改良」47.2%、「歩道の設置や拡幅、段差解消など」36.9%、「渋滞を緩和するためのバイパス整備や交差点の立体交差化など」35.0%が並ぶ。都市間・地域間を結ぶ幹線道路のネットワーク確保は26.3%で、新しい道路を造ることより、いまある道路を安全に保つ側に関心が寄っている。

老朽化の具体的な選択も問われた。全国に73万橋ある道路の橋について、人口減少で利用者が少なくなったものの使われている橋への対応を聞くと、「自転車・歩行者専用とするなど、橋の規模を縮小し残すべき」が39.2%、「少数でも利用者がいれば、修繕などを引き続き行い残すべき」が33.3%、「迂回路を示した上で撤去すべき」が25.8%だった。維持費を抑えながらどう残すかという問いに、回答は3つに割れている。

調査は7月16日から8月23日にかけ、全国の18歳以上の日本国籍を持つ3000人を対象に郵送法で実施し、1522人から回答を得た。回収率は50.7%。速報値は8月14日までに到着した調査票で集計しており、内閣府は回収数や回収率を含めて確報段階で修正される可能性があるとしている。関係府省庁は国土交通省で、同じ表題の調査は1958年12月以来13回目にあたる。前回は2021年7月調査で、回収数は1646人だった。

内閣府の世論調査は、政府が施策の参考にするために行うものだ。道路の費用を誰がどこまで持つかは、料金徴収期限の延長で2115年まで先送りされた論点でもある。今回の結果は、利用者負担への理解が広がる一方で値上げには慎重という国民の距離感を示しており、今後の制度設計の前提に置かれることになる。