総務省は9月30日、大分県、和歌山県白浜町、鹿児島市、鹿児島県指宿市の4団体が条例で定めた宿泊税の新設と、長崎市の宿泊税の変更に同意したと発表した。宿泊税は旅館・ホテルや民泊に泊まった人から1人1泊ごとに徴収する地方税で、自治体が独自に設ける税のため、条例を作ったうえで総務大臣の同意を得る必要がある。4団体の施行は2027年1月以降に順次予定されている。

新設4団体の税率 鹿児島市と指宿市は一律200円

大分県は宿泊料金に応じた4段階で、5000円未満が100円、5000円以上2万円未満が200円、2万円以上10万円未満が500円、10万円以上が2000円。平年度の税収を約18億6000万円と見込み、徴税費用は約6000万円を見込む。修学旅行など学校行事の参加者と引率者、認定こども園・保育所などの行事の参加者と引率者は課税を免除する。県議会が6月26日に条例案を可決し、7月7日に総務大臣へ協議していた。施行は2027年1月以降の予定。

白浜町は1万円未満が200円、1万円以上2万円未満が300円、2万円以上5万円未満が500円、5万円以上が1000円。平年度の税収見込みは約6億5000万円で、徴税費用は約1050万円。修学旅行などの参加者・引率者に加え、12歳未満の子どもと、地震などの災害が起きた場合の被災者を免除する。施行予定は2027年3月1日。

鹿児島市と指宿市は、いずれも宿泊料金にかかわらず1人1泊200円の一律。税収見込みは鹿児島市が平年度約8億4000万円、指宿市が約8640万円で、施行予定はどちらも2027年4月1日。指宿市は12歳に達した後の最初の3月31日までの子どもと修学旅行などの参加者・引率者を、鹿児島市は修学旅行の参加者・引率者を免除する。

税収の使い道は4団体とも観光振興に限られる。大分県は「持続可能な観光地域づくり」に向けた地域資源の魅力向上や受け入れ環境の充実、白浜町は住民生活と調和した観光振興、鹿児島市は観光資源の魅力向上と戦略的な誘客、指宿市は観光消費額の拡大につながる施策を挙げている。

長崎市は8000円の宿泊が100円から300円に

長崎市はすでに2023年4月1日から宿泊税を課している。市収納課が示す現行の税率は、1人1泊あたり宿泊料金が1万円未満で100円、1万円以上2万円未満で200円、2万円以上で500円。今回同意された変更後は、6000円未満が100円、6000円以上2万円未満が300円、2万円以上が500円となる。

金額で見ると、8000円の宿泊は100円から300円に、1万5000円の宿泊は200円から300円に上がる。一方で5000円の宿泊は100円のまま、2万円以上の宿泊も500円のままで変わらない。つまり中価格帯の宿泊に負担が寄る形の見直しで、平年度の税収は約8億4000万円を見込む。あわせて、部活動や地域のクラブチームとして宿泊を伴うスポーツ大会・文化大会に参加する児童・生徒とその引率者を課税免除に加える。市議会は3月12日に条例案を可決しており、施行予定は2027年4月1日。

宿泊税とは 条例で作る「法定外目的税」

地方税法は自治体が課せる税目を定めているが、自治体はそれ以外の税を条例で新たに設けることもできる。これを法定外税といい、使い道を特定しないものが法定外普通税、使い道を観光振興などに限るものが法定外目的税にあたる。宿泊税はいずれも法定外目的税として設けられている。

法定外目的税は2000年4月の地方分権一括法による地方税法改正で創設された。同じ改正で、それまで許可制だった法定外普通税も、同意を要する協議制に改められている。手続きは、議会で条例案を可決したうえで総務大臣に協議し、総務大臣が地方財政審議会の意見を聴き、財務大臣に通知したうえで同意するという流れになる。

総務大臣は、次の3つのいずれかに当たると認める場合を除いて同意しなければならないと地方税法261条などが定めている。①国税または他の地方税と課税標準を同じくし、かつ住民の負担が著しく過重となること②自治体の間の物の流通に重大な障害を与えること③そのほか国の経済施策に照らして適当でないこと——の3点で、裏を返せば、この3つに触れなければ国は自治体の判断を止められない仕組みになっている。総務省が自治体の財源に関与する場面はほかにもあり、寄附の受け皿となる自治体を毎年指定するふるさと納税の対象は1781団体 2026年10月から1年間 今回の指定取消はゼロ 東京都と昨年除外の6市町は申し出ずのような制度もある。

条例化は67団体 この2年で一気に広がった

総務省の「法定外税の状況」(2026年8月28日現在)に挙がっている宿泊税の実施団体を数えると、条例を施行済みなのが都道府県7・市区町村40の47団体、条例を定めて同意を得たがまだ施行していないのが沖縄県と15市町村の16団体で、あわせて63団体だった。今回の4団体を加えると67団体になる。

施行の時期を追うと、広がったのはこの2年に集中している。同資料の注記によれば、2025年4月1日に熱海市、同年10月1日に高山市と下呂市、11月1日に赤井川村、12月1日に弘前市と松江市が施行。2026年に入ると1月13日に宮城県と仙台市、4月1日に北海道・札幌市・広島県など20団体、6月1日に長野県・松本市など6団体、7月1日に熊本市と宮崎市が続いた。盛岡市と栃木県那須町は10月1日に施行を予定している。

法定外税全体で見ると、2024年度の決算額は935億円で、地方税収に占める割合は0.20%にとどまる。そのうち宿泊税は都道府県分が116億円、市区町村分が118億円だった。ただしこの決算額には、2025年以降に施行した団体の実績がまだ入っていない。自治体の財政は都道府県の経常収支比率、92.2%から93.0%へ悪化 市町村は93.8%から93.3%へ改善 総務省の令和7年度決算速報 財政再生団体は夕張市だけで見たように厳しさが続いており、観光地を抱える自治体にとって、使い道を観光に絞ったうえで来訪者から広く薄く集める宿泊税は、住民の負担を増やさずに財源を確保できる手段として選ばれやすい。

4団体の条例にはいずれも、施行から3年をめどに(その後は5年ごとに)内容を見直す規定が入っている。長崎市の条例には3年ごとの見直し規定があり、今回の変更もその見直しを経たものだ。