政府は10月23日の定例閣議で、「副首都」の整備を進める法律の施行日を10月30日とする政令と、法律に基づいて内閣に置く推進本部の組織を定める本部令を決定した。法律の正式名称は「国家社会機能継続性確保施策及び副首都の整備に係る施策の推進に関する法律」(令和8年法律第78号)。施行と同時に、首相を本部長とし全閣僚が加わる「国家社会機能継続性確保施策・副首都整備推進本部」が置かれる。
総務相で副首都整備等推進担当を兼ねる藤井比早之氏は同日の閣議後記者会見で「本年10月30日から施行されることとなりました」と述べた。そのうえで、副首都の指定の要件を定める政令の制定と、施行後1年以内に策定する基本方針づくりに「しっかりと取り組んでまいります」と語った。
閣議で決まった二つの政令
首相官邸が公表した10月23日の閣議案件によると、政令の欄には「国家社会機能継続性確保施策及び副首都の整備に係る施策の推進に関する法律の施行期日を定める政令」と「国家社会機能継続性確保施策・副首都整備推進本部令」の二つが並んだ。所管はいずれも内閣官房である。
官邸の閣議案件の説明では、政令の閣議決定は、内閣が制定する命令を決めたうえで、憲法第7条に基づき公布のための内閣の助言と承認を行うものとされる。法律の準備はこれまで、内閣官房地域未来戦略本部事務局に置かれた副首都整備等推進室が担い、施行令案の意見募集もこの推進室の名前で行われた。施行後は、法律第28条に基づいて推進本部に独自の事務局が置かれる。
法律の附則第1条は、施行日を「公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日」としていた。法律は7月31日に公布されており、10月30日はその3か月の期限の最終日に当たる。
もう一つの本部令は、法律第30条が「本部に関し必要な事項は、政令で定める」と委ねた部分を定めるものだ。閣議案件の一覧に載ったのは政令の名前だけで、本部令の条文は本稿の執筆時点で公表されておらず、どのような内容が盛り込まれたかは確認できていない。
首相を本部長に全閣僚で構成
推進本部の骨格は法律そのものに書かれている。第21条は、副首都の整備などの施策を総合的・計画的に進めるため「内閣に」本部を置くと定める。
| 役職 | 充てる人 | 根拠 |
|---|---|---|
| 本部長 | 内閣総理大臣 | 第24条 |
| 副本部長 | 内閣官房長官、担当大臣 | 第25条 |
| 本部員 | 本部長・副本部長以外の全ての国務大臣 | 第26条 |
| 事務局 | 事務局長と所要の職員 | 第28条 |
出典: 国家社会機能継続性確保施策及び副首都の整備に係る施策の推進に関する法律
本部の仕事は第22条に5項目が挙がる。基本方針の案の作成と、それに基づく施策の推進、施策の実施状況の検証、関係行政機関の総合調整、副首都ごとの「副首都整備方針」の作成などである。基本方針の案を作るときは、必要に応じて都道府県や市町村、学識経験者の意見を聴くとしている。
副首都整備方針は、第20条が副首都ごとに本部が定めると規定する。整備の目標、産業競争力の強化を通じた経済成長、交通網などの都市基盤の整備、国の機関等の拠点の整備、周辺の自治体との連携を盛り込む。本部は作成前に、その副首都の長の意見を聴いて「その意見を尊重しなければならない」とされ、関係する自治体の意見も聴く。決めた方針は公表し、副首都と関係自治体に送る。
本部そのものについても見直しの規定がある。附則第5条は、施行後5年をめどに本部の在り方を総合的に検討し、必要な措置を講じるとした。
「副首都」とは何か
法律は副首都を、大規模災害で東京圏の首都中枢機能が保てなくなったとき、一定期間、その「全部又は大部分」を代わりに担い、同時に「多極分散型経済圏の形成の中核となる機能」も担う道府県と定義する(第2条第4項)。指定は市ではなく道府県の単位で行われる。
指定は道府県の申し出に基づき、首相が行う(第18条)。要件は、東京圏と同時に被災する可能性が低い地域であることに加え、国の行政機構の立地、人口と経済の集積、地方行政体制の三つについて「政令で定める要件」を満たすことである。指定は官報で告示した時点で有効になり、要件に当てはまらなくなれば、首相は副首都の意見を聴いて解除できる。
法案は日本維新の会が6月24日に衆院への提出を公表しており、7月31日に公布された。藤井氏は会見で、副首都の整備は首都中枢機能のバックアップ体制を構築するとともに、「いわゆる東京一極集中を是正し、多極分散型経済圏を形成しようとするもの」だと説明した。
指定要件の政令はまだ決まっていない
施行日は決まったが、副首都を指定するための要件の政令は、今回の閣議案件に含まれていない。内閣官房の副首都整備等推進室は10月3日に施行令案を公表し、10月16日まで意見を募っていた。
案は、国の地方支分部局が14以上置かれている市町村があること、国内総人口に対する指定都市の人口の割合が1.2%以上、国内総生産に対する道府県内総生産の割合が2.1%以上であることを数値の要件とした。地方行政体制は、大都市法に基づく特別区の設置か、道府県と指定都市の連携協約の締結と推進体制の構築のいずれかを求める。同時被災の可能性が低い地域は、首都直下地震緊急対策区域と富士山の火山災害警戒地域のいずれにも当たらない地域とした。案の詳しい中身は「副首都」の指定要件、政令案を公表 国の出先機関14以上・指定都市の人口が全国の1.2%以上・道府県内総生産が2.1%以上 10月16日まで意見募集で取り上げた。
会見では記者が、人口1.2%と経済2.1%の数字は「そのまま決定されたということでよろしかったでしょうか」と質問した。藤井氏は「現在、頂いた意見を整理しているところでございます」と答え、意見も参考にしながら要件の政令を制定すると述べるにとどめた。数値が案のとおり確定するかどうかは、この時点では示されなかった。
基本方針は1年以内、集中推進は2031年3月まで
施行後の段取りも法律の附則に書かれている。附則第2条は、政府が定める基本方針を「施行日から一年以内」に定めるとした。基本方針は首相が案について閣議決定を求め、決定後に公表する(第9条)。国土強靱化基本計画など国の他の計画は、副首都に関する施策については基本方針を基本とするよう求められる(第10条)。
附則第3条は、施行日から2031年(令和13年)3月31日までを「集中推進期間」とし、政府が施策を集中的に進めると定めた。期間が終われば実施状況を検証し、結果を国会に報告する。
国会と裁判所の機能をどう代替するかは、政府ではなくそれぞれの機関が検討する(附則第4条)。政府は検討結果を基本方針に反映させるとしている。
施行の順序をまとめると、10月30日に法律が施行されて推進本部が置かれ、要件の政令が制定されたあとに道府県の申し出と首相による指定へ進む。基本方針は2027年10月までに決まる。法案審議の経緯は「副首都」法案が審議入り 災害時に東京を代替、大阪を念頭 与党は今国会成立目指す 審議欠席続ける野党の責任も問うに詳しい。どの道府県が申し出て、いつ最初の指定が行われるかは、要件の政令の確定を待つことになる。
