国会議員に月額100万円が渡る「調査研究広報滞在費」について、何にいくら使ったかを記した報告書の初めてのインターネット公開が、2026年11月30日までに行われる。かつて「文書通信交通滞在費」と呼ばれ、使途を明かす必要がなかった経費である。両議院の議長が協議して定めた規程は、残額があれば公開の日から20日以内に国庫へ返すことも議員に義務づけている。
「調査研究広報滞在費」とは 月100万円・非課税で全議員に渡る
この経費の根拠は、1947年に制定された国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律(歳費法)の第9条である。同条第1項は、各議院の議長・副議長・議員が「国政に関する調査研究、広報、国民との交流、滞在等の議員活動を行うため、調査研究広報滞在費として月額百万円を受ける」と定める。第2項は、この100万円を標準として租税その他の公課を課すことができないとしており、税金はかからない。
受け取るのは議員全員である。公職選挙法第4条は衆議院議員の定数を465人(小選挙区289人・比例代表176人)、参議院議員の定数を248人(比例代表100人・選挙区148人)と定めている。定数どおり713人がいるとして単純に計算すると、1人あたり年1200万円、総額で年85億5600万円になる。
議員に渡る公費はこれだけではない。歳費法第1条は歳費月額を議長217万円、副議長158万4千円、議員129万4千円と定める。第11条の二は6月1日と12月1日に在職する議員への期末手当を定め、その算定には歳費月額に100分の45を超えない範囲で両院議長が協議した割合を上乗せする。別の法律では、各会派に対し所属議員1人につき月65万円の立法事務費が交付される。歳費が満額支払われ続ける構図は、国会正常化へ、高市首相が集中審議に応じる方針 定数削減巡り与野党対立 空転中も議員報酬は満額でも問題になった。
名称は「通信費」から二度変わった
第9条の経費は、当初から今の名前だったわけではない。1948年7月5日公布の改正法(昭和23年法律第88号)の附則は「第九条の改正規定は昭和二十三年六月以後の通信費につき、これを適用する」と書いており、当時は「通信費」と呼ばれていた。その後「文書通信交通滞在費」となり、2022年4月22日に公布・施行された改正法(令和4年法律第29号)で現在の「調査研究広報滞在費」に改まった。同法の附則は、施行月分の文書通信交通滞在費を同月分の調査研究広報滞在費とみなす経過措置を置いている。
使途の公開に踏み込んだのは、2024年12月27日に公布された改正法(令和6年法律第81号)である。歳費法第9条に第3項から第6項を加え、毎年1回、支給を受けた金額と支出に関する事項を書いた報告書を領収書等の写しを添えて議長に提出することを義務づけた。第4項は報告書と領収書等の写しを公開すると定め、第5項は支給総額から支出総額を引いて残余があれば返還しなければならないとした。施行日は2025年8月1日である。この改正法の附則は、第3項から第6項の適用を施行日以後に支給を受けた分と同日以後の支出に限っており、初回の報告書が扱うのは2025年8月から12月までの5か月分、1人あたり500万円にあたる。
支出先が載るのは1万円超だけ 残額は20日以内に返還
具体的な手続きは、両院議長の協議で定める規程に委ねられた。参議院公報によると、参議院は令和7年4月25日の議院運営委員会(第十七回)で規程の制定に関する件を決めている。衆議院が公表した規程の概要によれば、報告書は毎年12月31日現在で作成し、翌年5月31日までに情報通信技術を利用した方法で議長へ提出する。議長は提出された年の11月30日までに公開し、公開期間は3年間とする。
報告書に書くのは、支給総額、支出総額と支出項目ごとの支出、そして残額である。支出項目は、人件費・光熱水費・備品消耗品費・事務所費の「経常経費」4項目と、交流費・広報紙誌の発行その他の事業費・調査研究費・寄附・滞在費・その他の経費の「議員活動費」6項目に分かれる。ただし支出先・支出目的・支出金額・支出の年月日まで記載するのは、1万円を超える支出に限られる。添付する領収書等の写しも1万円超の分だけで、領収書等そのものは各議員が保管する。1万円以下の支出は、開示請求があった後に議長が議員へ提出を命じ、提出された写しが開示される仕組みだ。規程は使途を議員活動に必要な費用に限り、選挙運動の費用に充ててはならないと明記した。議員が自らの資金管理団体へ寄附(資金移動)した場合は、その団体が調査研究広報滞在費を充ててした支出まで報告書に書かなければならない。
残額の扱いも決まった。報告書に残余の額を記載した議員は、報告書が公開された日から20日以内に、その額に相当する額を返還する。国会議員に関わる公費の使途公開としては、総務省が毎年公表する政党交付金の使途等報告書が先行しており、2025年分は政党交付金315億円の使い道 支出は357億7159万円で3.0%減 本部の政治活動費は23.4%増、支部は24.7%減で伝えた。調査研究広報滞在費の報告書も、政治資金規正法の収支報告書に並ぶ扱いとされている。
臨時国会は10月5日召集 9月29日の持ち回り閣議で決定し召集詔書を公布 衆院の選挙制度改革と比例定数削減が焦点で伝えたとおり、臨時国会は10月5日に召集される。初めての使途公開の期限は、その会期中にあたる11月30日である。
