現在、なぜ良好な日韓関係がこれほどまでに必要なのか?
現在の日韓関係が重要なのは、単に隣国同士だからではない。日本と韓国を取り巻く安全保障環境が、過去に比べて大きく変化しているためである。日韓両国は1965年の国交正常化以降、経済や人的交流を拡大させてきた一方、歴史認識や旧朝鮮半島出身労働者問題、慰安婦問題、竹島をめぐる対立などを抱え、関係が悪化する時期も繰り返してきた。しかし、現在はこうした懸案を抱えながらも、両国が協力する戦略的必要性が以前より高まっている。
最大の要因の1つは北朝鮮である。北朝鮮は核・ミサイル能力の向上を続けており、日本と韓国はいずれもその直接的な影響を受ける。さらに近年は、北朝鮮とロシアの軍事協力も進展している。こうした環境では、日本と韓国が個別に対応するだけでは限界があり、米国を含む日米韓3か国の情報共有や抑止力の強化が重要になる。日本政府も、北朝鮮の核・ミサイル問題や露朝軍事協力、サイバー活動などへの対応で日米韓の連携を重視している。
さらに重要なのが、中国やロシアを含む大国間競争の激化である。日本と韓国はいずれも米国の同盟国であり、インド太平洋地域の安定を維持するうえで重要な位置にある。台湾海峡や東シナ海、朝鮮半島など複数の安全保障上の問題が相互に関連するなか、日韓間の意思疎通が途切れれば、地域全体の危機管理能力が低下する可能性がある。
経済安全保障の面でも事情は変わった。半導体、重要鉱物、エネルギー、先端技術などでは、日本と韓国が競争するだけでなく、サプライチェーンの強靱化に向けて協力する必要性が増している。2026年1月の日韓首脳会談でも、経済安全保障やサプライチェーンでの協力、北朝鮮問題、日米韓連携の重要性が確認された。5月の首脳会談でも、エネルギー安全保障や日米韓の情報共有などで協力を進める方針が確認されている。
もちろん、歴史認識や領土問題が消えたわけではない。むしろ、これらの問題を無理に解決しようとするのではなく、意見の違いを抱えたままでも安全保障、経済、人的交流などで協力できる関係を維持することが現実的である。
かつての日韓関係では、関係悪化が主として二国間の外交問題として捉えられる面が強かった。しかし現在は、北朝鮮の核・ミサイル、米中対立、露朝接近、経済安全保障などが絡み合っている。だからこそ、現在の日韓関係には地域の危機を管理し、日本と韓国双方の安全と経済的利益を守るための戦略的な安定性が求められている。要は、良好な日韓関係は日本の国益を守るためにマストなものと言えよう。
