自民党の外国人政策本部で安全保障と土地法制を担うプロジェクトチーム(PT、座長・北村経夫参院議員)は10月1日、重要施設の周辺などで土地や建物を取得する際に国の許可を必要とする制度の導入を求める提言を、高市早苗首相と小野田紀美外国人との秩序ある共生社会推進担当大臣に申し入れた。重要土地等調査法を早期に改正し、10月5日に召集される臨時国会に法案を提出するよう求めている。現行法は取得した後の「利用」を調べる仕組みで、取得そのものを止める手立てを持たない。

申し入れには新藤義孝党外国人政策本部長、北村PT座長のほか、本田太郎PT事務局長代理、勝目康PT事務局次長が同席した。提言は令和8年9月29日付で、PTは昨年11月から議論を重ね、今年1月と6月にも外国人政策本部の提言として政府に申し入れている。

所有権が移る前に国が審査し、懸念があれば不許可

提言が核に置くのが許可制の導入である。対象区域内で土地や建物の所有権を移そうとする者に許可申請を求め、所有権が移る前に国が審査する。安全保障上のリスクがあると判断した場合は不許可にする。

対象区域は、ドローン攻撃などの新たな脅威に対して脆弱な重要施設の周囲おおむね1000メートルと、無人の国境離島とした。規制の対象となる土地等について面積要件は設けない。国境離島以外の離島についても、所有実態の把握や適切な形での開示などの取り組みを講じるとしている。

許可申請を求める相手は「国籍等は問わない」。そのうえで、外国政府等やその活動に影響力を有する者、外国軍人、外国政府等への協力義務を負う者、これらの者が実質的に支配する法人などを「安全保障上懸念のある者」として原則不許可とする。提言は、対象が安全保障上懸念のある者であって国籍等を問わないため、各種投資協定やサービス貿易協定に抵触しないとの整理を示した。

実効性を担保する措置も並べた。許可を受けずに行われた所有権移転の登記は行えないようにし、賃貸借については届出を義務付ける。無許可で土地等を取得した者や不正な手段で許可を受けた者には罰則を設ける。新たな規制対象区域には立入調査制度を導入する。

対象となる施設も広げる。国の中枢機能の確保や経済安全保障の重要性が増していることを踏まえ、皇居、国会議事堂、首相官邸のほか、緊急事態への対応に関わる施設を柔軟に追加できるようにする。政令を改正して、生活関連施設として重要インフラ施設を加えることも検討するとした。

提言は現行法の限界をこう説明している。重要土地等調査法は令和2年12月の「安全保障と土地法制に関する特命委員会」の提言を踏まえて作られたが、現状では土地等の「利用」に着目した制度で、機能阻害行為を防ぐための調査を行うにとどまる。重要施設周辺や人目の届かない無人国境離島の土地が懸念のある主体に取得され、秘密裏に集積されたドローンによる攻撃や領海基線の毀損行為の拠点に使われれば、影響は施設単体ではなく防衛力や国家主権に及び得る、として取得段階からの制度整備が不可欠だとした。

施行から4年、勧告・命令は一度もない

重要土地等調査法は令和3年6月23日に公布され、令和4年9月20日に全面施行された。重要施設の敷地の周囲おおむね1000メートルの区域内や国境離島等の区域のうち、機能阻害行為に使われることを特に防ぐ必要があるものを「注視区域」として指定する。施設の機能が特に重要で代替が難しい場合は「特別注視区域」に指定され、一定面積以上の土地・建物の売買契約では売主・買主の双方が首相に届け出る義務を負う。

不適切な利用が確認されれば中止などを勧告・命令できる。ただし内閣府は、令和8年6月30日現在、勧告・命令は実施していないとしている。全面施行から4年、一度も発動されていない。

取得の実態は内閣府が年度ごとに公表している。令和6年度は注視区域583区域で、売買等の契約による所有権移転や建物の新築登記により取得が確認された土地・建物が11万3827筆個(土地6万9677筆、建物4万4150個)だった。このうち外国人・外国系法人によるものは3498筆個で、全体の3.1%にあたる。

国・地域別では中国が1674筆個(47.5%、香港を含む)で最も多く、台湾414筆個(11.7%)、韓国378筆個(10.7%)、米国211筆個(6.0%)、ベトナム160筆個(4.5%)と続く。都道府県別では東京都の1558筆個が最多で、神奈川県339筆個、千葉県235筆個、北海道217筆個、福岡県211筆個の順だった。注視区域別では、東京都の衛生学校・艦艇装備研究所・ニューサンノー米軍センターの区域が553筆個で最も多い。

ここでいう「外国人」は国内に居住する外国籍を有する者と国外に居住する外国人と思われる者、「外国系法人」は外国法人と、外国籍を有する者または国外に居住する外国人と思われる者が代表者となっている内国法人を指す。内閣府はこの調査を不動産登記簿等の公簿、届出、地図、航空写真、ウェブサイトなどの情報により行っており、「思われる者」を含む区分であることに留意する必要がある。

前年度の令和5年度は399区域で371筆個・2.2%だった。割合は上がったように見えるが、内閣府は調査の対象区域と期間が異なるため一概に比較することはできないと注記している。大都市圏の区域が多い3次指定180区域の調査対象期間は令和5年度が約2.5か月、令和6年度が1年間で、4次指定184区域は令和5年度には調査の対象外だった。

地下水、国土利用計画法、マンションにも踏み込む

提言は土地取得のルール以外にも三つの柱を立てた。

地下水については、一定規模以上の採取行為を全国一律で把握し、他の地下水利用等に支障を及ぼすおそれがある場合は是正を求める制度化の検討を加速し、次期通常国会へ法案を提出すべきとした。内閣府が令和7年9〜10月に行った調査では、外国人等と思われる者による地下水の採取が49件確認されている。主な採取目的は生活用水や事業場での使用だった。

国土の適切な利用については、周辺環境に悪影響を及ぼす土地利用が深刻化して手遅れになる前に歯止めをかけるため、土地利用に関する一般法である国土利用計画法を見直す。届出の対象面積の引き下げによる情報把握の強化、指導監督の根拠となる土地利用基本計画の記載事項の拡充などを図り、次期通常国会へ改正法案を提出すべきとした。

マンションについては、大都市部や観光地・リゾートで価格の上昇が続き、居住用の不動産が投機目的で取得されているのではないかという懸念が地域住民の不安になっていると指摘した。海外には外国人の不動産取得に対して時限的な取得制限を含む制約措置を導入した例があることも挙げ、実態把握を続けるとともに、不動産協会の取り組みの効果や海外の制度も踏まえて、早期の税制上の措置を含め投機的取引の抑制に向けた取り組みを実施するよう求めた。

あわせて、法人の実質的支配者を把握する制度の法整備も求めた。これが整えば重要土地等調査法の改正法の執行が効果的になり、政策的な連携が図れるとしている。実質的支配者の登録制度は法人の「実質的支配者」を届け出る制度、G7で日本だけ無いのとおり、マネーロンダリング対策の面からも財務省が新法の必要性を示している論点だ。行政事務の面では、マイナンバーや法人番号など申請者を一意に識別できる情報の利用を検討し、電子申請フォーマットや情報システム間の連携基盤を整えて「外国人政策のDX」を進めるべきだとした。

政府側では、土地の所有者に関する情報を広く集める作業が先行して動いている。不動産の移転登記等の申請情報に申請人の国籍を追加するのが令和8年度中、新たに森林の土地の所有者になった者の届出事項への国籍の追加と、森林法・国土利用計画法・重要土地等調査法の届出を法人が行う場合に代表者の国籍などを届出事項に加える措置は令和8年4月から。外為法に基づく国外居住者の不動産取得の報告も、同じ4月から投資目的以外にも広げられた。提言が求める許可制は、こうして集めた情報を取得の可否の判断に使う段階へ進めるものにあたる。

臨時国会は臨時国会は10月5日召集 9月29日の持ち回り閣議で決定し召集詔書を公布のとおり10月5日に召集される。提言が求めた重要土地等調査法の改正案が、この臨時国会に提出されるかどうかが次の節目になる。