内閣府は「水産業に関する世論調査」の速報を公表した。日本近海の海水温が上昇し、獲れる魚の種類や量が大きく変わってきていることを「知っている」と答えた人は82.7%で、「知らない」の16.8%を大きく上回った。一方、資源の持続性や環境に配慮して生産されたことが表示されている水産物を他の水産物と比べてどこまで高くても買うかを聞くと、最も多かったのは「1割高から2割高までの価格であれば購入する」の59.5%だった。
調査は全国の18歳以上で日本国籍を持つ3000人を対象に、令和8年7月16日から8月23日まで郵送法で実施した。回収は1522人、回収率は50.7%。速報値は8月14日までに届いた調査票で集計したもので、属性別の結果やクロス集計は確報の段階で公表される。回収数や回収率を含む速報の数値は、確報で修正される可能性があると内閣府は注記している。
海の変化の認知は8割超、ただし「よく知っている」は25.2%
海水温の上昇で漁獲の中身が変わっていることの認知は、内訳を見ると「よく知っている」が25.2%、「ある程度知っている」が57.6%で、合わせて82.7%。「あまり知らない」は14.2%、「まったく知らない」は2.6%で、合わせて16.8%だった。変化そのものは広く知られているが、深く把握している層は4人に1人にとどまる。
水産業に期待する役割(複数回答)で最も多かったのは「資源管理や養殖などにより、安定的かつ持続可能な形で、食料としての水産物を供給する機能」の81.0%。次が「多くの魚介類の産卵場・育成場・餌場となる藻場、干潟などの環境を保全する機能」の60.9%、「漁村の経済や雇用、人のつながりを維持する、地域の基幹産業としての機能」の44.5%、「外国漁船などの不審な活動を監視・通報する、国境監視機能」の43.8%と続いた。食料供給だけでなく、環境保全や国境監視にも期待が向いている。
「持続可能」への上乗せは2割が上限という回答が最多
資源管理をした水産物にどこまで払うかという問い(単一回答)では、「1割高から2割高までの価格であれば購入する」が59.5%で最多。「同等の価格であれば購入するが、少しでも高くなるなら購入しない」が24.0%、「3割高までの価格であれば購入する」が8.4%、「価格は気にせず購入する」が5.4%だった。持続可能性に上乗せを払う意思はあるが、その幅は2割までという回答が中心である。
消費者としてできること(複数回答)は「国産の水産物を積極的に購入すること」が65.0%、「生鮮品だけでなく、出荷が安定している冷凍・加工水産物も利用することで、魚を食べる機会を増やすこと」が63.7%で並んだ。冷凍・加工品の利用が生鮮品と同水準で挙がったのが特徴だ。一方、「資源管理や環境に配慮して生産された水産物を選ぶこと」は29.5%にとどまった。
水産政策への期待(複数回答)では「水産物の安定供給のため、漁業・養殖業における技術開発や操業改革を進めること」が71.6%で最も多く、「稚魚の放流や、産卵場や餌場となる魚礁の設置、藻場・干潟の保全などによって、水産資源の増殖を進めること」が57.1%、「漁獲量の制限などによって水産資源の管理を行うこと」が56.9%、「外国漁船による違法操業を取り締まること」が54.5%だった。
漁獲量は5年で58万トン減、設問の前提にある数字
問いの前提になっている「日本の漁獲量は減少傾向にある」という状況は、農林水産省の生産統計で確認できる。令和7年(2025年)の漁業・養殖業生産量は357万7400トンで、前年から5万8800トン(1.6%)減った。内訳は海面漁業の漁獲量が270万500トンで前年から8万5700トン(3.1%)減、海面養殖業の収獲量が83万1900トンで2万9000トン(3.6%)増、内水面の漁業・養殖業が4万5011トンで2035トン(4.3%)減である。
推移で見ると生産量は令和3年の415万8000トンから4年391万7000トン、5年383万トン、6年363万6000トンと下がり続け、令和7年の357万7400トンまで5年間で約58万トン減った。海面漁業では、まいわしやさば類が増えた一方でほたてがいやかつおが減っており、魚種の入れ替わりが統計にも現れている。
内閣府の世論調査は同じ7月調査の枠で分野別に複数実施されており、高速道路の維持費「通行料金でまかなうべき」が66.4% 5年前の62.9%から増加 内閣府の道路世論調査や「生物多様性」の意味を知っている人は38.3% 4年前の29.4%から上昇 ただし「行動に移せていない」は33.7%から42.7%に増加 内閣府世論調査も同時期に公表されている。生物多様性の調査でも、意味の認知は上がっているのに行動に移せていない人が増えるという開きが出ており、今回の水産業の調査で「海の変化は知っているが、選ぶ基準にはしていない」という形が見えたのと重なる。
関係府省庁は水産庁。前回の同種の調査は平成30年9月の「食と農林漁業に関する世論調査」で、こちらは調査員による個別面接聴取法だったため、内閣府は今回の郵送法の結果との単純比較は行わないとしている。
