経済産業省は10月30日、脱炭素電源の電気を使って工場やデータセンター(DC)を建てる企業の設備投資を補助する「GX地域共創補助金」について、1次公募の採択結果を公表した。採択はGX関連製品の製造設備に投資する「製造設備投資型」が7件、「データセンター設備投資型」が4件の計11件。鹿児島県薩摩川内市と島根県松江市のDC、石川県能美市のNGKの工場の3件は、補助金交付申請額が250億円だった。原子力を主な電源に挙げた事業は4件ある。第2回公募は11月に始める予定だ。

11件の採択先と事業の規模

1次公募は7月17日から9月1日まで受け付け、外部の有識者でつくる審査委員会が事業の競争力や脱炭素電源の活用計画などを審査した。経産省が公表した採択先は次のとおり。

型 実施場所 申請者 補助対象経費 交付申請額 主な電源(電源の立地地域)
製造 宮城県松島町 Oishii Farm 約193億円 約96億円 洋上風力(秋田)、地熱・太陽光(宮城)
製造 新潟県聖籠町 グローバルウェハーズ・ジャパン 約159億円 約53億円 洋上風力(新潟)
製造 石川県能美市 NGK 約811億円 250億円 洋上風力(秋田)、陸上風力・太陽光(石川)
製造 山梨県南アルプス市 武蔵エナジーソリューションズ 約123億円 約31億円 水力(山梨)
製造 三重県津市 ピュアサーモンジャパン 約52億円 約26億円 洋上風力(秋田)、太陽光(三重)
製造 愛媛県西条市 アドバンテック 約178億円 約59億円 太陽光(ペロブスカイト含む)(愛媛)
製造 佐賀県有田町 日本触媒 約110億円 約28億円 原子力(佐賀)
DC 北海道石狩市 京セラコミュニケーションシステム 約33億円 約8億円 洋上風力(北海道)
DC 福井県高浜町 NIN 約47億円 約19億円 原子力・水力(福井)
DC 島根県松江市 計算資源開発島根 約823億円 250億円 原子力(島根)
DC 鹿児島県薩摩川内市 薩摩川内DCエネルギーマネジメントセンター 約2,532億円 250億円 原子力・地熱(鹿児島)
GX地域共創補助金1次公募の採択事業(社名の「株式会社」「合同会社」は略した)出典: 経済産業省「GX地域共創補助金(1次公募)を採択しました」(2026年10月30日)

事業の規模には大きな開きがある。最も大きい薩摩川内市のDCは補助対象経費が約2,532億円で、11件の経費を足した約5,060億円の半分を占める。最も小さい石狩市のDCは約33億円だった。製造設備投資型の7件は、経費の合計が約1,630億円、申請額の合計が約540億円。データセンター設備投資型の4件は、経費が約3,440億円、申請額が約530億円で、件数は少ないが申請額では製造設備投資型とほぼ並んだ(いずれも公表された概数を足した値)。

電気をつくる地域に企業を呼ぶ仕組み

この補助金は、経産省が2025年8月に創設した「GX戦略地域制度」の4つ目の類型「脱炭素電源地域貢献型」にあたる。GXはグリーントランスフォーメーションの略で、脱炭素と経済成長を同時に進める政策を指す。制度はコンビナートや地域に偏在する再生可能エネルギー・原子力などの脱炭素電源を核に、新たな産業集積をつくることを狙う。類型の①〜③(コンビナート等再生型、データセンター集積型、脱炭素電源活用型)は自治体などの地域を選ぶのに対し、④のこの補助金は個々の事業者を選ぶ。地域を選ぶ類型では、9月に第1弾の認定があった(「GX戦略地域」第1弾を認定 川崎臨海部2800ヘクタール、石狩・苫小牧、柏崎 跡地・再エネ・原発を産業集積の核に)。

補助を受けるには、使う電気を100%脱炭素電源でまかない、その電源が立地する地域に貢献することが条件になる。経産省の2026年度予算の説明資料によると、2026年度当初予算に400億円を計上し、複数年度にわたって支払いを約束する国庫債務負担行為を含めて、2030年度までの5年間で総額2,100億円を支援する。補助率は2分の1から5分の1、補助上限額は50億〜250億円の幅で、次の3つの観点から決める。①使う電源の立地地域にどれだけ貢献するか(工場などを立地するか)、②電源との結び付き(自家発電や、発電事業者と長期の電力購入契約〈PPA〉を結ぶか)、③電源の種類(新設や再稼働の電源か)。

2026年2月の事業者向け説明資料では、電源の立地都道府県に工場を構えるのが最も高い支援につながり、別の地域に立地する企業でも、地域共生基金への拠出や企業版ふるさと納税で電源立地地域に貢献すれば一定の支援を受けられる仕組みを示していた。資料は、DCについては電源の立地都道府県への立地を必須とする考えも示していた。今回採択された4件のDCは、いずれも主な電源と同じ道県に建てる計画だ。

原子力の4件、秋田の洋上風力を遠くの工場が使う

主な電源の種類を見ると、原子力を挙げたのは11件中4件だった。佐賀県有田町の日本触媒の工場、福井県高浜町のNINのDC、島根県松江市の計算資源開発島根のDC、鹿児島県薩摩川内市のDCで、交付申請額250億円の2件のDCはどちらも原子力の電気を使う。薩摩川内市のDCは地熱も、高浜町のDCは水力も組み合わせる。

洋上風力を挙げたのは5件で、最も多い。このうち3件は秋田の洋上風力を使い、宮城県松島町、石川県能美市、三重県津市と、いずれも秋田県の外で事業を行う。松島町の事業は宮城県の地熱と太陽光、能美市の事業は石川県の陸上風力と太陽光、津市の事業は三重県の太陽光も組み合わせ、地元の電源と遠くの洋上風力を併用する形だ。新潟県聖籠町のグローバルウェハーズ・ジャパンは新潟の洋上風力、石狩市の京セラコミュニケーションシステムは北海道の洋上風力を使う。

このほか、山梨県南アルプス市の武蔵エナジーソリューションズは山梨の水力、愛媛県西条市のアドバンテックは愛媛の太陽光を使う。アドバンテックの計画は、次世代型のペロブスカイト太陽電池を電源に含む。

1回目の申請額は5年分の約半分

11件の交付申請額を合計すると約1,070億円になり、5年間の総額2,100億円の約半分にあたる。上限の250億円で申請した3件を除くと、申請額は補助対象経費の2分の1から4分の1程度だった。経産省の発表は申請額を示しており、実際の交付額は今後の交付決定で確定する。

同じ説明資料では、補助の対象を建物費(土地代を除く)や機械装置費とし、DCでは建物や冷却設備、受電設備などを対象に、計算を担うGPU(画像処理半導体)は除くとしていた。松江市と薩摩川内市のDC2件は補助対象経費が800億円を超え、上限の250億円で申請している。

経産省の予算資料は、制度の背景として「グローバル企業を中心とした脱炭素電源の活用ニーズは着実に拡大」していると記し、国際情勢が変わるなかで国産の脱炭素電源の供給力を高めることを課題に挙げた。電力を使う企業が電源の近くに立地し、PPAで発電事業者の投資を支えれば、脱炭素電力の供給増と国内投資の拡大を同時に進められるというのが経産省の説明だ。

第2回公募は11月、中堅・中小の扱いを変更へ

経産省は第2回公募を11月に始める予定で、詳細は事務局のホームページで知らせるとしている。事務局が8月20日に公開した「2次公募に関する公募前のご案内」では、1次公募から変える点として、申請者の区分を挙げた。1次公募では、申請者の親会社が資本金5億円以上の大企業の場合、申請者にも大企業の補助率が適用されたが、2次公募では同じ場合でも中堅・中小企業の補助率を適用する予定だという。2026年2月の説明資料では、補助率の上限を中堅・中小企業は2分の1、大企業は3分の1とする想定を示していた。

同じ案内は、2次公募は1次公募より受け付けの期間が短くなると注意を促した。応募には、国の補助金申請システム「Jグランツ」のアカウント取得と、事業ポータルからの申請の2段階が必要で、補助対象になるのは交付決定日以降に発注や契約をした経費に限られる。案内の時点では公募開始を10月中旬、締め切りを11月末、採択先の公表を2027年2月中旬頃と見込んでいたが、経産省は10月30日の発表で開始を11月とした。締め切りなどの日程は事務局の公表を待つ必要がある。

1次公募で約半分の申請額が積み上がったことで、残る枠をどの地域のどんな事業が使うかが次の焦点になる。地域を選ぶ類型①〜③の有望地域も事業計画の作り込みを続けており、経産省は計画の熟度が高まった地域から順次、GX戦略地域に認定するとしている。