総務省統計局が10月9日に公表した2026年8月の家計調査(二人以上の世帯)によると、1世帯あたりの消費支出は31万975円で、物価の上昇分を除いた実質で前年同月より3.1%減った。前年を下回るのは2025年12月から9か月連続となる。名目の金額は1.0%の減少で、1年前の31万3977円をわずかに下回った。

9か月続けて前年割れ 減少幅は3%台が3か月続く

家計調査は、全国から選んだ世帯に家計簿をつけてもらい、収入と支出を毎月集計する統計である。消費支出は、食料や住居、光熱費、交通、教育、娯楽など、暮らしのために実際に使ったお金の合計で、税金や社会保険料は含まない。景気の判断では、この消費支出を物価の変動で割り戻した「実質」の増減率が注目される。金額が同じでも、物価が上がっていれば買えたモノやサービスの量は減っているからだ。

8月は、名目では1.0%減にとどまったのに対し、実質では3.1%減と下げ幅が大きくなった。この差は、物価の上昇によって同じ金額で買える量が目減りしていることを示している。統計局は実質化に、消費者物価指数のうち「持家の帰属家賃を除く総合」(2025年基準)を使っている。

月ごとの実質増減率をたどると、2025年は8月が2.3%増、9月が1.8%増と前年を上回っていたが、10月に3.0%減へ転じた。11月は2.9%増と持ち直したものの、12月の2.6%減から再びマイナスが続いている。2026年に入ってからは1月1.1%減、2月1.8%減、3月2.9%減、4月0.5%減、5月0.4%減と推移し、6月は3.3%減、7月は3.6%減、8月が3.1%減だった。減少幅が3%を超えたのは6月から3か月続いている。当月を含む直近3か月の平均で見た実質増減率は3.3%減で、7月の2.5%減から下げ幅が広がった。

一方、季節による支出の増減をならした季節調整値では、8月は前月より実質0.1%増えた。季節調整済み実質指数(2025年=100)は、5月の102.4から6月に95.9へ大きく落ち込み、7月が96.4、8月が96.5とほぼ横ばいが続く。前月から急に悪化したわけではないが、6月に下がった水準から戻っていない。5月分の結果は5月の家計支出0.4%減 6か月連続マイナス 自動車関連が最大の重し 食料は4か月ぶりプラスで伝えた。

年単位で見ると、二人以上の世帯の消費支出は2023年が実質2.6%減、2024年が1.1%減で、2025年は0.9%増と3年ぶりにプラスに戻っていた。2026年は8月までの8か月すべてが前年を下回っている。

10費目のうち9費目が減少 増えたのは「交通・通信」だけ

統計局は消費支出を10の費目に分けて公表している。8月に実質で前年を上回ったのは、自動車関係の支出が伸びた「交通・通信」(4万3647円、実質0.2%増)だけで、4か月ぶりの増加だった。残る9費目はすべて実質で減った。

交際費などを含む「その他の消費支出」(寄与0.75%の押し下げ)を除くと、全体の減少への寄与が最も大きかったのは「教養娯楽」で、3万6572円と実質4.3%減り、全体を0.51%押し下げた。品目では国内パック旅行費が全体を0.31%押し下げた。国内パック旅行費を含む教養娯楽サービスは実質4.9%減で、全体を0.38%押し下げた。

「食料」は10万4220円で、名目では1.7%増えたが、実質では1.4%減と3か月連続のマイナスだった。名目で支払いが増えても、値上がりを差し引くと買った量は減ったことになる。品目では魚介類が実質6.7%減、飲料が6.6%減となった。

「光熱・水道」は1万9835円で実質5.2%減り、6か月連続の減少だった。このうち電気代は実質7.8%減で、全体を0.31%押し下げた。

「教育」は6230円と実質12.3%減った。私立大学の授業料が全体を0.44%押し下げ、品目別では最大の下押し要因となった。このほか「被服及び履物」は7754円で実質8.7%減、「家具・家事用品」は1万3880円で6.3%減、「住居」は1万8267円で5.8%減、「保健医療」は1万5699円で1.9%減だった。交際費や諸雑費を含む「その他の消費支出」は4万4872円で、統計局の参考値では実質5.1%減となる。

自動車購入が唯一の大きな押し上げ 除く住居等は4.2%減

品目別で全体を最も押し上げたのは自動車購入で、寄与は0.87%だった。これがなければ、全体の減少幅はさらに大きかった計算になる。中分類では、自動車等関係費のほか、大学生などへの国内遊学仕送り金を含む仕送り金、高校生向けの補習教育・予備校も増加に寄与した。

自動車や住宅のリフォームのように金額が大きく、たまにしか発生しない支出は、調査対象の世帯で買った人がいるかどうかで月々の数字が大きく動く。そこで統計局は、「住居」のほか「自動車等購入」「贈与金」「仕送り金」を除いた消費支出も併せて公表している。この「除く住居等」の8月の値は27万4095円で、実質4.2%減と3か月連続のマイナスだった。全体の3.1%減より下げ幅が大きく、自動車購入などの振れを除いた日常の支出の弱さがより鮮明に表れている。

このように、8月の減少は特定の費目に偏ったものではない。旅行や外出に関わる支出、食料、光熱費、衣料、家具と、生活の幅広い分野で前年を下回った。

働く世帯の手取りは名目で増えたが、実質は減少

家計調査は収入も調べている。世帯主が会社や役所などに勤める勤労者世帯(二人以上の世帯)の8月の実収入は、1世帯あたり61万6704円で、名目では前年同月より1.3%増えた。しかし物価の上昇分を除いた実質では0.9%減で、2か月連続のマイナスだった。帰属家賃を含む消費者物価指数の「総合」で実質化した場合も0.6%減となる。7月の実収入は実質3.8%減だった。

内訳を見ると、世帯主の収入は41万620円で実質0.4%増、このうち毎月決まって支払われる定期収入は39万299円で実質1.0%増と、世帯主の給料は物価の伸びを上回った。一方、配偶者の収入は10万43円で実質2.5%減り、実収入全体を0.42%押し下げた。

実収入から税金や社会保険料などの非消費支出(10万3087円)を差し引いた可処分所得、いわゆる手取りは51万3617円で、名目1.4%増、実質0.8%減だった。これに対し、勤労者世帯の消費支出は33万1134円で実質6.8%減と、6か月連続で減っている。手取りの減り方よりも、支出の減り方の方がはるかに大きい。

手取りのうちどれだけを消費に回したかを示す平均消費性向は64.5%で、前年同月の68.6%から下がった。季節調整値で見ると59.8%で、前月の63.0%から低下した。賃金の動きや物価の中身と家計の消費を並べた全体像は物価と賃金の全体像 実質賃金は8か月連続プラス、それでも家計の消費は実質3.1%減にまとめている。

次回は11月10日 四半期の実質値は基準改定を反映

9月分の結果は、7〜9月期の平均とともに11月10日に公表される予定である。統計局によると、四半期の実質増減率を載せる表のうち、2026年1〜3月期と4〜6月期の値については、消費者物価指数の2025年基準への改定に伴う遡及改定値を、この7〜9月期平均の公表時に反映する。実質増減率は割り戻しに使う物価指数で変わるため、四半期の数字を過去と比べるときは改定後の値を見る必要がある。

なお、季節調整値は例年1月分の公表時に過去にさかのぼって改定される。家計調査の月次結果は世帯ごとの支出のばらつきの影響を受けやすく、統計局は、すう勢を見るために当月を含む直近3か月の平均の増減率も参考として示している。8月時点ではその3か月平均でも3.3%減で、減少の流れは続いている。