立憲民主党の斎藤嘉隆国会対策委員長は10月30日、自民党の磯崎国会対策委員長と国会内で会談し、衆院で審議中の食料品の消費税減税・就業者負担軽減支援金法案を審議するため、参院に特別委員会を設けることで合意した。特別委員会の委員長は自民党の委員が務め、委員数は40人とする。衆院を上回る審議時間の確保、地方公聴会と中央公聴会の開催、参考人質疑、野党対案の並行審議なども合わせて合意した。立憲民主党が同日、党のウェブサイトで公表した。

合意した9項目

立憲民主党の発表によると、特別委員会の設置は、法案が財政金融の分野にとどまらず、農林水産、総務、内閣、経済産業など幅広い分野に関わることや、法案の建て付けと趣旨、過去の審議例などを踏まえ、野党が一致して求めてきたものだという。

設置のほかに合意した項目として、発表は次の9つを挙げている。

  1. 委員長は自民党の委員が務める
  2. 委員数は40人とする
  3. 衆院以上の充実した時間を確保して審議を行う
  4. 首相の複数回以上の出席について、野党の求めを最大限尊重して対応する
  5. 大臣の出席を幅広く認める
  6. 地方公聴会と中央公聴会をともに開催する
  7. 参考人質疑を行う
  8. 野党対案は並行して審議を行う
  9. 少数会派に対し、複数回の質問の機会を設けることなどを含め最大限配慮する

発表には、審議時間の具体的な長さや首相の出席回数、公聴会の日程は書かれていない。特別委員会を参院の本会議でいつ設けるかも、発表からは確認できなかった。

斎藤氏は会談後、記者団に対し、定例日のない、多くの委員が入る特別委員会の設置が決まったことで、多くの大臣に出席してもらう環境も整ったと述べた。そのうえで「衆院以上に質量ともに充実した審議ができることを期待している。国民の皆さんにはメリットもデメリットも含めて精査に理解をしていただくような場、まさに良識の府、熟議の府としての参院の役割を発揮していきたい」と語った。

委員長ポストは自民、首相出席は「最大限尊重」

この合意に先立ち、立憲民主党、国民民主党、公明党など参院の野党6党の国会対策委員長は10月27日に会談し、特別委員会を設けて審議する体制を作らない限り、法案の審議入りには応じられないとの認識で一致していた。公明党が28日に機関紙・公明新聞の記事として公表した内容によると、6党はこのとき、高市早苗首相の特別委への複数回出席、地方公聴会の開催、委員長を野党が務めることを与党に求める方針を確認し、野党対案の並行審議、衆院以上の審議時間、少数会派に配慮した質問機会の確保も要請していくと申し合わせた。公明党からは杉久武国対委員長が出席した(参院野党6党、食料品減税法案は「特別委で」 設置まで審議入りに応じず)。

27日の要求と30日の合意を並べると、特別委員会の設置、公聴会、審議時間、対案の並行審議、少数会派への配慮は、野党の要求に沿う形で合意に入った。一方、委員長は野党ではなく自民党の委員が務めることになり、首相の複数回出席は「野党の求めを最大限尊重して対応する」という表現にとどまった。中央公聴会の開催、参考人質疑、大臣の幅広い出席は、27日の申し合わせとして公明党が伝えた項目には無く、30日の合意で加わった。

項目 野党6党の要求(27日) 与野党合意(30日)
特別委員会 設置を審議入りの条件に 参院に設置
委員長 野党が務める 自民党の委員が務める
首相の出席 複数回 野党の求めを最大限尊重
公聴会 地方公聴会 地方・中央の両方
審議時間 衆院以上 衆院以上を確保
野党対案 並行審議 並行して審議
少数会派 質問機会に配慮 複数回の質問機会など最大限配慮
参院の野党6党が27日に確認した要求と、30日の与野党国対委員長会談で合意した内容出典: 公明党「消費税減税関連法案審議は特別委で」(公明新聞2026年10月28日付)、立憲民主党「【与野党国対委員長会談】消費税・支援金法案審議のため特別委員会設置で合意」

法案はまだ衆院財務金融委員会で審査中

対象の法案は、正式名を「租税及び社会保険料による負担の軽減のための飲食料品に係る消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の支給に関する法律案」という。内閣官房と財務省がまとめた概要によると、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品の消費税率を0.78%、地方消費税と合わせて1%に下げる。地方消費税の減収分は地方特例交付金で埋める。あわせて、勤労所得や合計所得金額などの要件を満たす人に「就業者負担軽減支援金」を毎年1回支給する。費用は3分の2以上を国が負担する。

衆議院の議案審議経過情報によると、法案は10月9日に衆院で受理され、20日に財務金融委員会に付託された。31日時点で、衆院の審査終了と本会議での議決の欄はいずれも空欄で、まだ衆院を通過していない。財務金融委員会ニュースの一覧には、20日、21日、23日、27日の回が載っている。委員会の質疑では、支援金の所得上限や支給額を明らかにするよう求める質問が相次いでいた(支援金法案の衆院財金委質疑、所得上限や支給額の明示求める質問相次ぐ 27日は参考人4人)。

参院は、衆院と同じ10月9日に法案を予備審査のために受理している。今回の合意は、衆院で法案が可決された後、参院のどの場で、どのような条件で審議するかを先に決めたものになる。衆院では野党が特別委員会の設置を求めたが、法案は常任委員会の財務金融委員会に付託された。

特別委員会の仕組みと参院の勢力

国会法は、各院に常任委員会を置くと定めたうえで、第45条で「各議院は、その院において特に必要があると認めた案件又は常任委員会の所管に属しない特定の案件を審査するため、特別委員会を設けることができる」と規定する。特別委員は議院が選任し、付託された案件がその院で議決されるまで任に就く。特別委員長は、委員会で委員が互選する。第46条は、常任委員も特別委員も、各会派の所属議員数の比率によって各会派に割り当てて選ぶと定めている。

特別委員会を設ければ、法案は財政金融委員会ではなくその委員会に付託され、この法案のために選ばれた委員が審査に当たる。斎藤氏は、新たに設ける特別委員会を「定例日のない」委員会と表現し、多くの委員が入ることで多くの大臣に出席してもらう環境が整ったと説明した。法案が農林水産、総務、内閣、経済産業など複数の分野に関わるという野党の主張は、所管の異なる大臣を審議の場に呼ぶことと結び付いている。

参議院の会派別所属議員数一覧(10月30日現在)によると、参院の総定数248に対し、欠員が1で、在籍は247人。最大会派の「自由民主党・無所属の会」は101人で、過半数の124人に届いていない。2番目に多いのは立憲民主・無所属の39人で、国民民主党・新緑風会が25人、公明党が21人と続く。自民党会派が単独で過半数を持たない参院では、委員会の運営や審議日程を野党と話し合って決める場面が多くなる。今回の9項目の合意も、野党が審議入りの条件として示した特別委員会の設置に、与党側が応じた形で結ばれた。

合意には「野党対案は並行して審議を行うこと」も入った。立憲民主党は政府案とは別に、給付を軸にした対案をまとめている(立憲、政府の減税・支援金に対案「生活どまんなか給付金」 非課税世帯に5万円、年収600万円まで給付)。参院の特別委員会では、政府案と野党対案を同じ場で比べながら審議することになる。