参政党は10月30日午後1時、消費税の税率を引き下げ、インボイス制度(適格請求書等保存方式)を廃止するよう政府に求める法律案を、議員立法として参議院に提出した。消費税と地方消費税を合わせた税率を、2027年(令和9年)4月1日以後「当分の間」一律5%にする内容。食料品の税率を2年間に限って下げる政府の法案に対し、党は「政府提出法案の対案として、参議院において審議されるよう働きかけていく」としている。
法案の中身 税率は全品目5%、期限は定めず
法案の正式な名前は「消費税の税率を当分の間の措置として引き下げる等のために講ずべき措置に関する法律案」。参政党は「消費税一律減税・インボイス廃止法案」と呼んでいる。本文は4条と附則からなる。
第1条は趣旨で、「我が国経済の長期にわたる低迷に鑑み、経済の持続的な成長に資するため」に税率を下げると書く。第2条は、2027年4月1日以後の消費税(地方消費税を含む)の税率を「当分の間、一律に百分の五とする」と定める。第3条は、税率の引き下げに伴ってインボイス制度を廃止すると定める。
いまの税率は、国税庁によると標準税率が10%(消費税7.8%、地方消費税2.2%)、酒類と外食を除く飲食料品や定期購読の新聞に適用する軽減税率が8%(消費税6.24%、地方消費税1.76%)。法案が成立して措置が取られれば、どちらも5%にそろい、税率の区別がなくなる。
ただし、この法案は消費税法の税率を直接書き換えるものではない。第2条と第3条はいずれも、政府が「このために必要な法制上の措置を速やかに講ずるものとする」と定めており、具体的な改正は政府に委ねる形をとる。施行は公布の日とした。
財源と地方への手当て
第4条は財源を扱う。1項は、税率引き下げとインボイス廃止の前に消費税収で賄うこととされていた社会保障給付などの経費について、政府が「引き続きその財源が確保されるよう必要な措置を講ずる」と定める。2項は、地方公共団体の財政状況に「悪影響を及ぼすことのないよう必要な措置を講ずる」とする。
いずれも政府に措置を求める規定で、どの税や歳出で減収を埋めるのか、金額はいくらになるのかは、要綱と本文のどちらにも書かれていない。地方消費税の減収を何で補うのかも示していない。
インボイス制度は、2023年(令和5年)10月1日に始まった。国税庁は、税率が複数あっても事業者が消費税を正確に納められるよう、売り手が買い手に適用税率や税額を伝える仕組みだと説明している。参政党案は、税率を一律にするのに合わせて、この仕組みをなくすという組み立てになっている。
政府案との違い
政府が10月9日に国会へ出した「租税及び社会保険料による負担の軽減のための飲食料品に係る消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の支給に関する法律案」は、内閣官房の概要によると、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品の消費税率を0.78%(地方消費税と合わせて1%)にする。地方消費税の減収は地方特例交付金で補う。あわせて、働く人の税と社会保険料の負担を軽くする「就業者負担軽減支援金」を毎年1回支給する。
| 項目 | 政府案 | 参政党案 |
|---|---|---|
| 対象 | 飲食料品 | 全品目 |
| 税率(地方分を含む) | 1% | 5% |
| 期間 | 2027年4月〜2029年3月の2年間 | 2027年4月から「当分の間」 |
| インボイス制度 | 存続 | 廃止 |
| 地方の減収 | 地方特例交付金で補塡 | 政府が必要な措置を講ずる |
| 給付 | 就業者負担軽減支援金を支給 | 規定なし |
政府案は下げる幅が大きい一方、対象は飲食料品に限られ、期間も2年間と区切っている。参政党案は下げる幅は小さいが、外食や日用品、サービスを含むすべての取引が対象になり、期限を設けていない。参政党案には、政府案の柱の一つである支援金にあたる規定は無い。
野党の対案は参政党のものだけではない。立憲民主党は、政府の減税と支援金に代わる給付の案を示している(立憲、政府の減税・支援金に対案「生活どまんなか給付金」 非課税世帯に5万円、年収600万円まで給付)。
参院で受理、付託先は未定 政府案は衆院で審査中
参議院の議案情報によると、法案は第222回国会の参議院議員提出法案(参法)の2番目として10月30日に受理された。発議者は「神谷宗幣君 外1名」で、参院が先に審議する「本院先議」の扱い。30日時点で、付託する委員会の欄は空いている。今国会の参法の1番目は、同じ参政党が出した旧姓の通称使用に関する法案だった(旧姓の通称使用法案とは 参政党が参院に提出 夫婦同姓のまま旧姓の証明書を新設)。
国会法56条は、議員が法案を発議するには、参院では議員10人以上の賛成が要ると定めている。予算を伴う法律案は20人以上となる。参院の会派別所属議員数(10月31日現在)では、参政党は15人。
政府案は、衆議院の議案審議経過情報によると、10月9日に受理され、20日に財務金融委員会に付託された。審査終了と本会議の議決の欄は空欄で、まだ衆院を通過していない。
参院では、衆院を通過した後の審議の場として特別委員会を設けることが決まっている。立憲民主党の発表によると、同党の斎藤嘉隆国会対策委員長と自民党の磯崎国会対策委員長が10月30日に会談し、委員40人の特別委員会を参院に設けることで合意した。合意項目には「野党対案は並行して審議を行うこと」が含まれている(食料品減税・支援金法案、参院に特別委設置で与野党合意 委員40人、委員長は自民)。
参政党が法案を出したのは、この会談と同じ日だった。参政党案がこの特別委員会に付託され、政府案と並べて審議されるかどうかは、30日時点の議案情報からは確認できない。どの野党の案を並行審議の対象にするのかも、立憲民主党の発表には書かれていない。
