農林水産省は10月30日、11月の野菜の生育状況と価格の見通しを公表した。東京都中央卸売市場に入る主な野菜15品目のうち、だいこん、はくさい、キャベツ、ブロッコリー、レタスの5品目は、11月を通じて卸売価格が平年を上回って推移する見込みだ。にんじん、ねぎ、きゅうり、ピーマンも月の前半か後半に平年を上回る。9月の長雨や日照不足、台風の影響で、秋冬の出荷を担う関東などの産地で生育が遅れているためだ。一方、たまねぎとさといもは平年を下回り、ほうれんそう、なす、トマト、ばれいしょは平年並みとみている。

鍋物の野菜、産地の切り替わりで出荷が減る

11月は多くの野菜で、夏から秋に出荷していた北海道・東北や長野、群馬などから、千葉・茨城などへ主な産地が移る時期にあたる。農水省が主産地や卸売会社から聞き取った結果では、この移り先の産地で9月の天候不順の影響が出ている。

だいこんは、北海道産・青森県産の出荷が減り、千葉県産・神奈川県産が中心になる。前年11月の東京都中央卸売市場への入荷シェアは千葉が58%、神奈川が23%を占めた。両県では9月の長雨や台風で種をまけなかった畑があるほか、生育の遅れや生理障害も出ており、11月の出荷量は平年を下回り、価格は平年を上回る見込みだ。

はくさいは長野県産が11月中旬に出荷を終え、茨城県産が中心になる。前年11月の入荷シェアは茨城が77%だった。茨城県産は9月の長雨と日照不足で、生育の遅れや肥大の鈍化がみられる。キャベツも群馬県産が11月上旬に終わり、千葉・茨城・愛知の各県産に切り替わる。3県とも苗の植え付けや生育が遅れ、小玉の傾向がある。いずれも11月の出荷量は平年を下回り、価格は平年を上回るとみている。

ねぎは北海道・東北産の生育は順調だが、出荷が増える茨城県産に生育不良がみられる。11月前半は平年並みで、後半は出荷量がやや平年を下回り、価格はやや平年を上回る見込み。にんじんも千葉県産が8月の豪雨や9月の台風でまき直しを迫られ、後半に価格が平年を上回るとしている。

レタス・ブロッコリーも高め、果菜は後半に落ち着く

葉物と果菜類でも、9月の長雨の影響が残る。レタスは長野県産から茨城県産へ切り替わる。茨城は前年11月の入荷シェアの77%を占めた。9月の長雨と日照不足で小玉の傾向があり、前半は価格が平年を上回る。10月はおおむね好天だったため、長雨の後に植えたものが11月中旬ごろから出荷を迎え、後半は「やや平年を上回る」程度になるとみている。ブロッコリーは埼玉・香川・熊本・長崎の各県産が中心で、主産地で生育が遅れ、11月を通じて平年を上回る見込みだ。

きゅうりは関東産から宮崎県産へ移る。関東産は長雨で株の勢いが落ち、出荷量が減っている。前半は価格がやや平年を上回るが、宮崎県産の生育はおおむね順調で、後半は平年並みに戻る。ピーマンも茨城県産に長雨の影響が続き前半はやや高いが、宮崎・高知の両県産の出荷が後半に増え、平年並みになる見込みだ。

平年並みとされたのは、ほうれんそう、なす、トマト、ばれいしょの4品目。ほうれんそうは群馬・茨城の両県産、なすは高知県産が中心で、いずれも生育はおおむね順調だという。トマトは関東・東海産で長雨による着果不良が出ており、実の数が減るおそれがあるが、熊本県産が順調なため、全体では平年並みとみている。

たまねぎ・さといもは平年を下回る

価格が平年を下回る見込みなのは、たまねぎとさといもの2品目だ。たまねぎは前年11月の入荷シェアの90%を北海道産が占める。生育はおおむね順調で大玉の傾向があり、出荷量は平年を上回る。さといもは埼玉県産と愛媛県産が中心で、出荷量はやや平年を上回るとしている。

10月の実際の卸値も、品目ごとの差が大きかった。農水省が添付した市場価格の資料によると、10月24日の1キロ当たりの価格は、キャベツが139円で平年の146%、はくさいが104円で142%、レタスが312円で155%だった。だいこんは10月初めは平年を下回っていたが、北の産地の出荷が減るにつれて上がり、24日は120円で平年の128%になった。これに対し、たまねぎは86円で平年の64%と、月初めから平年の7割台以下で推移した。

品目 10月1日 10月24日 11月の見通し
だいこん 129円(94%) 120円(128%) 平年を上回る
はくさい 188円(177%) 104円(142%) 平年を上回る
キャベツ 155円(149%) 139円(146%) 平年を上回る
レタス 457円(230%) 312円(155%) 前半は平年を上回り、後半はやや上回る
ブロッコリー 676円(123%) 441円(88%) 平年を上回る
ねぎ 497円(98%) 411円(99%) 前半は平年並み、後半はやや上回る
にんじん 129円(96%) 113円(84%) 前半は平年並み、後半は上回る
ほうれんそう 1010円(134%) 538円(94%) 平年並み
トマト(大玉) 533円(85%) 598円(96%) 平年並み
たまねぎ 92円(74%) 86円(64%) 平年を下回る
さといも 462円(131%) 360円(110%) 平年を下回る
東京都中央卸売市場の1キロ当たり卸売価格(かっこ内は平年比)と11月の価格見通し出典: 農林水産省「野菜の生育状況及び価格見通し(令和8年11月)について」・添付資料「東京都中央卸売市場における指定野菜の価格及び平年比」

はくさいとレタスは、農水省が9月30日に公表した10月の見通しでも、価格が平年を上回る品目として挙げられていた。10月の卸値は、はくさいが13日に平年の202%、レタスが9日に260%まで上がった後、下旬にかけて下がったが、24日時点でもなお平年の1.4〜1.6倍の水準にある。

「平年」は過去5年の平均、店頭価格とは別

この見通しは、天候不順で野菜の価格の変動が大きくなっていることを受け、農水省が2011年(平成23年)から主産地や卸売会社への聞き取りをもとに公表している。産地が出荷の量や時期を判断し、消費者が買い方を選ぶ材料にしてもらい、供給と価格の安定につなげるのが目的だという。

数字の読み方には注意が要る。比べる対象の「平年」は、過去5か年の平均だ。見通しの「平年並み」は、平年との比率がおおむね90%以上110%以下であることを指す。添付資料の平年比は、日ごとの価格を過去5か年の旬別価格の平均と比べたものだ。対象は東京都中央卸売市場で取引される卸売価格で、スーパーなどの店頭価格そのものではない。農水省は資料の中で、2025年基準の消費者物価指数で9月の総合指数が102.2、食料が103.6と上昇傾向にあることに触れたうえで、この見通しは主産地や卸売会社からの聞き取りをもとに過去5か年平均を基準に作ったものだと断っている。

物価への関心は高い。内閣府の世論調査では、政府に力を入れてほしいこととして物価対策を挙げた人が最も多かった(政府への要望、物価対策が72.5%で4年連続首位 防災は31.1%から37.5%へ 内閣府世論調査)。主食の米の店頭価格はスーパーの米、5kg平均3,160円 1年前より604円安く 卸値はなお前年比16%高で伝えた。

11月の見通しでは、鍋物に使うだいこん、はくさい、ねぎのうち、だいこんとはくさいは月を通じて平年より高く、ねぎは後半にやや高くなる。たまねぎやさといもは平年より安い見込みで、品目によって値動きが分かれる。