防衛省と内閣官房は10月12日、北朝鮮が同日午前9時台、北朝鮮内陸部から少なくとも2発の弾道ミサイルを北東と東の方向へ発射したと発表した。いずれも北朝鮮の東岸付近や日本海に落下したと推定され、日本の領域や排他的経済水域(EEZ)への飛来は確認されていない。2発目は約910キロを超えて飛んでおり、政府は変則軌道で飛んだ可能性も含めて日米韓で分析を続けている。北朝鮮の弾道ミサイル発射は10月3日以来で、この日はスポーツの日の祝日だった。
2発目は約910キロ超、変則軌道の可能性も
発表によると、1発目は午前9時19分ごろに発射され、最高高度は約20キロ程度、飛んだ距離は約220キロ程度だった。2発目は午前9時36分ごろの発射で、最高高度は約70キロ程度、飛んだ距離は約910キロを超えた。2発の間隔は17分ほどになる。
政府は2発目について、「変則軌道で飛翔した可能性を含め」、詳細を日米韓で緊密に連携して分析中だとしている。1発目は高度も距離も小さく、2発目とは飛び方が大きく異なる。
政府は付近を航行する航空機や船舶に情報を提供した。発表の時点で、被害の報告などは確認されていない。
首相は1発目の5分後に3項目を指示
首相官邸によると、高市早苗首相は午前9時24分付で総理指示を出した。1発目の発射から5分後で、2発目が発射される前にあたる。指示は、▽情報収集・分析に全力を挙げ、国民に迅速・的確な情報提供を行う▽航空機、船舶などの安全確認を徹底する▽不測の事態に備え、万全の態勢をとる――の3項目。
政府は官邸危機管理センターに置く「北朝鮮情勢に関する官邸対策室」で関係省庁の情報を集約し、緊急参集チームを招集して対応を協議した。防衛相は首相の指示を受けて、米国や韓国などと連携した情報収集・分析と、警戒監視に万全を期すことの2点を防衛省に指示した。
政府は発表で、一連の北朝鮮の行動は日本と地域、国際社会の平和と安全を脅かすものであり、弾道ミサイルの発射は関連する国連安全保障理事会の決議に違反すると指摘した。北朝鮮に対して厳重に抗議し、強く非難したという。追加で公表すべき情報が入れば、速やかに発表するとしている。
9日前の発射を上回る距離、首相指示は今年10件目
北朝鮮は10月3日朝にも弾道ミサイル1発を発射している。防衛省と内閣官房の発表では、このときの最高高度は約90キロ程度、飛んだ距離は約680キロ程度だった(北朝鮮が3日朝に弾道ミサイル1発発射 約680キロ飛翔し日本のEEZ外に落下 9月20日の約440キロ・約590キロを上回る)。
9月20日には1日に2回発射し、1回目は最高高度約60キロ程度で約440キロ程度、2回目は最高高度約70キロ程度で約590キロ程度飛んだ(北朝鮮、20日に2回弾道ミサイル発射 2発目は午後5時54分ごろで約590キロ飛翔 1発目の約440キロより遠くへ)。今回の2発目の約910キロ超は、これら3回の距離をいずれも上回る。
官邸ホームページの「総理の指示・談話など」の一覧には、2月18日以降の掲載分が並んでいる。このうち北朝鮮の弾道ミサイルの可能性があるものの発射に関する総理指示は、3月14日、4月8日、4月19日、8月6日、8月12日、8月20日、9月20日(2件)、10月3日、そして今回の10月12日で、計10件にのぼる。8月以降に7件が集中しており、10月に入ってからは2回目の発射となった。
「低空を変則軌道」は迎撃を難しくする狙い
政府が今回の2発目で可能性を指摘した「変則軌道」は、北朝鮮のミサイルをめぐって繰り返し使われてきた言葉だ。防衛省の資料は過去の例として、2022年1月11日の発射で、ミサイルが最高高度約50キロ程度を最大速度約マッハ10で飛び、左(北)方向への水平機動も含めて変則的な軌道で飛んだ可能性があると記している。
防衛省の資料「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」(令和8年8月)は、北朝鮮が近年、「低空を変則軌道で飛翔可能な短距離弾道ミサイル(SRBM)など」を繰り返し発射していると説明している。発射台付き車両(TEL)や潜水艦、鉄道といったさまざまな場所からの発射と組み合わせ、兆候の把握や探知、迎撃を困難にするなど、「より実戦的なミサイル戦力を拡充」しているとの見方を示した。資料は、低空を変則的な軌道で飛べるミサイルの開発について、迎撃を難しくしてミサイル防衛網の突破を図るものだと位置づけている。
今回の発射の詳しい分析結果は、まだ公表されていない。政府は日米韓の連携で分析を続けるとしており、新たな情報が入った段階で発表する方針だ。
