自由民主党は、10月7日の衆議院本会議で井上信治衆院議員が、8日の参議院本会議で青木一彦参院幹事長が、高市首相の所信表明演説に対する代表質問に立った。党が公式サイトに掲載した質問の全文によると、両氏はいずれも、2年間に限って飲食料品の消費税を下げる措置を、給付の仕組みが整うまでの「つなぎ」と位置づけ、2年後に税率を元に戻すことを首相に確認した。政府側の答弁は、本稿の執筆時点で国会会議録検索システムに会議録が掲載されておらず、確認できていない。

代表質問は、首相の所信表明演説などを受けて、各会派の代表が本会議で政府の方針をただす場だ。衆議院の審議中継によると、7日の衆院本会議では中道の岡本三成氏、自由民主党・無所属の会の井上氏、日本維新の会の金村龍那氏の順に質問し、高市首相のほか片山財務相、中司内閣府特命担当相、小野田経済安全保障担当相が答弁に立った。参議院によると、8日の参院本会議では立憲民主・無所属の田名部匡代氏と、自由民主党・無所属の会の青木氏が質疑を行った。

食料品の減税は「つなぎ」、本丸は給付付き税額控除

井上氏は、政府が先に基本方針を決めた「給付付き税額控除」について、所得に応じたきめ細かな対応ができ、中・低所得者の負担軽減や手取りの増加、働き控えの解消が期待できると評価した。そのうえで、恒久的な制度には恒久的な財源が要るとして、財源の確保を含めた制度設計を首相に問うた。政府が本格導入を令和11年度(2029年度)に目指しているのは、所得の把握など多くの課題があるためだと理解していると述べた。

そのうえで、首相が本格導入までの「つなぎ」として、2年間に限って飲食料品の消費税を下げる方針を掲げたことに触れ、「改革の『本丸』は給付付き税額控除です」と強調した。消費税は社会保障や地方の重要な財源だとして、「2年後に確実に税率を戻し」、給付付き税額控除へ「切れ目なく移行させなければなりません」と述べ、減税措置の位置づけを首相にただした。

青木氏も同じ枠組みを取り上げた。衆院選後に設けられた超党派の「社会保障国民会議」で、中低所得の現役勤労者に的を絞った「支援金」と、それまでの2年間に限った「つなぎ」の消費税減税という枠組みがまとまったことを「画期的な成果と評価します」と述べた。2年後に飲食料品の税率が8%に戻っても「就業者負担軽減支援金」が本格的に始まり、中低所得層では支援金の額が税率を戻す影響を上回ると想定されるとして、国民に分かりやすく説明するよう首相に求めた。減税と大綱の中身は食料品の消費税1%、大綱を閣議決定 2027年4月から2年間 支援金の額は決定後も「検討し定める」のままで伝えている。

青木氏は、1年前の参院選について、党が即効性のある給付や的を絞った物価高対策を掲げたものの、他党が消費税減税を公約にする中で「国民の十分なご理解を得られず」、参議院で少数与党となる「厳しい結果を招きました」と振り返った。

財源は「赤字国債に頼らず」 財務相に指示の明言を求める

財源について青木氏は、飲食料品の減税と支援金の先行導入に必要な額を「1年で5兆円、2年間限定であれば10兆円」と見込んだ。社会保障国民会議などで、財政が悪化すれば国債価格の下落、つまり金利の上昇や為替への悪影響につながるとの懸念が出ていたことも認めた。

そのうえで、政府が特例公債に頼らず、日本版DOGEをはじめとする租税特別措置や補助金の徹底見直し、特別会計や基金からの歳入確保、歳出の効率化で財源を捻出する方針を示していると指摘した。「特例公債、つまり赤字国債に頼らなくても財源は確保する」ことが市場の信認をつなぎとめるうえで極めて重要だとして、代替財源の確保に向けた方針を首相に問うた。さらに片山財務相に対し、首相の命で財務当局に代替財源をきっちり確保するよう指示していることを「明らかにしていただきたい」と求めた。特例公債の仕組みは首相が言う「特例公債に頼らず」の特例公債とは 財政法が原則禁じる赤字国債 2026年度は当初22兆8680億円、補正後は25兆9815億円 発行には5年ごとの特例法が要るで解説している。

井上氏も、「責任ある積極財政」には財政の持続可能性が不可欠だとし、「財政規律に緩みが生じるのではないか」との懸念がある中で、持続可能性をどう確保するのかを財務相に分かりやすく説明するよう求めた。予算編成では、補正予算を前提とした編成から抜け出し、恒常的な施策を当初予算に計上する首相の方針に触れた。

物価高対策では、青木氏がガソリン価格の抑制や電気・ガス料金の支援を評価しつつ、「多額の財源を要する」として支援の持続可能性にも目配りするよう求めた。青木氏は、米国のベッセント財務長官が「タカイチノミクス」に言及したことを挙げ、首相自らが国際金融市場に「『タカイチノミクス』の日本は買いだ」と発信してはどうかとも提案した。

衆院は定数削減と憲法改正、参院は地方と原発

井上氏は、日本維新の会との連立政権合意に掲げ、先の衆院選でも約束した衆議院議員の定数削減について、実現に向けた首相の決意を問うた。選挙制度や定数は「民主主義の根幹に関わる」として、幅広い理解を得られるよう丁寧に進める必要にも触れた。憲法改正では、首相が来年春までに発議への道筋をつける目標を掲げていることを挙げ、「前進するための議論」を行うべきだと述べた。

このほか井上氏は、年内の改定を目指す安保関連3文書、外国人による土地取得への懸念を踏まえた重要土地等調査法の実効性(小野田担当相に質問)、資源・エネルギー戦略、AIの安全性とルールづくり、非上場株の評価方法の見直し(財務相に質問)、「地域未来戦略」などを取り上げた。

青木氏は、地元の鳥取・島根両県で人口減少が加速しているとして、地方の産業集積への支援や、「ふるさと住民登録制度」と「ふるさと納税」の連携による関係人口の拡大を求めた。有人国境離島の振興では、運賃の低廉化や新造船計画への財政支援を挙げた。防災では、2021年8月に国道9号が地滑りで通行止めになった際、並行する山陰自動車道が迂回路になった例を挙げ、高速道路網の多重化を求めた。AIの普及で電力需要が増えるとして、原発の再稼働や小型モジュール炉(SMR)の開発に力を入れるよう首相の考えをただした。

青木氏は最後に、参議院が対外的な英語表記を「セナト」に改めることを決めた経緯にも触れ、来年に創設80年を迎える参議院に政府がどのような議員外交の役割を期待するかを首相に問うた。