政府は10月9日、租税特別措置・補助金・基金の徹底見直しに関する関係閣僚等及び副大臣会議の第3回会合を首相官邸で開いた。各府省庁が自己点検の結果を反映して8月末に出した令和9年度の税制改正要望では、点検対象の国税47項目のうち廃止を求めたのは2項目、地方税は74項目のうち1項目にとどまり、残りはすべて延長を求めていた。木原稔官房長官は会議の締めくくりで「決して十分なものではない」と述べ、年末の予算編成と税制改正に向けて見直しを深めるよう各府省庁に指示した。
官房長官「あくまで第一段階」
会議は木原官房長官が開き、片山さつき財務相兼租税特別措置・補助金見直し担当相、中司宏行政改革担当相、遠藤敬首相補佐官(連立合意政策推進担当)らが出席した。議題は「自己点検結果の要求・要望への反映状況と今後の取組」。
木原氏は、4月の片山氏の要請に基づく自己点検について「その結果を要求・要望に反映していただきましたが、決して十分なものではないと私もそのように考えております」と述べた。そのうえで「これはあくまで第一段階」とし、令和9年度予算では租税特別措置・補助金・基金の見直しを徹底して施策の優先順位を洗い直し、民間投資を誘発する「真に効果的な施策」に大胆に重点化する必要があると強調した。
木原氏は「高市内閣の挑戦を成し遂げられるかどうかは、各府省庁自らの積極的な取組にかかっている」とも語り、片山氏を中心に、この日示された「基本的な考え方と見直しの着眼点」に沿って「年末にかけて更なる『見直し』の深掘りに取り組んでまいりましょう」と呼びかけた。与党とも連携して進めるよう求めた。
政府は2025年11月25日、内閣官房に租税特別措置・補助金見直し担当室を置いた。この会議は第1回が2025年12月2日、第2回は今年4月10日に開かれている。4月の会合で片山氏が各府省庁に自己点検を指示し、その結果を概算要求と税制改正要望に反映させる段取りだった。
税の特例、廃止要望は国税2・地方税1項目
租税特別措置は、特定の政策目的のために税を軽くしたり控除を設けたりする特例を指す。今回の点検は、令和8年度末に適用期限が来るなどして、令和9年度の税制改正で議論が想定される措置が対象になった。片山氏の提出資料によると、国税47項目のうち、自己点検の段階で廃止の方向を示したのは1項目だけで、8月末の要望では廃止が2項目になった。地方税は74項目のうち自己点検で廃止の方向を示したものは無く、要望段階で1項目が廃止に回った。資料は、延長を求めた国税45項目と地方税73項目について「年末の税制改正プロセスに向けて更なる『見直し』が必要」と記している。法人税関係の租税特別措置の規模や適用の実態は「日本版DOGE」で洗い直す租税特別措置、法人税関係は76項目 適用は延べ251万3286件 研究開発減税1兆69億円のうち3032億円は上位10社にまとめた。
廃止を求めた例として資料が挙げたのは、祖父母や親から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合に1,000万円まで贈与税を非課税とする特例(こども家庭庁所管、平成27年度創設)だ。自己点検では、「結婚・子育て支援信託」の認知率を令和8年に30.0%とする目標に対して実績は22.9%、利用者の負担が軽くなったと答える割合の目標90.0%に対して74.8%と、短期から長期までの目標がいずれも未達成だった。利用は令和7年に219件にとどまり、資料は「政策効果は限定的」として、信託等ができる期間の終了とともに廃止するとした。
ほかに、経済産業省所管の、認定を受けた事業再編計画に基づく登記の登録免許税を軽くする措置は「活用が見込めない」として、地方税ではローカル5G設備の固定資産税を軽くする特例(総務省所管)が「十分に活用されていない」として、それぞれ廃止とした。
補助金・基金は「出口」と滞留資金を点検
補助金でも、各府省庁は全事業について自己点検を行った。資料が示した例では、厚生労働省の人材確保等支援助成金(テレワークコース)とテレワーク相談センターの運営を、テレワークが一定程度浸透したことを踏まえ令和8年度限りで廃止する(令和8年度当初予算額は約1.6億円)。資料は補助金についても、自己点検に基づく見直しは「あくまで第一段階」だとしている。8月末に出そろった概算要求の全体像は令和9年度の概算要求143.1兆円 新設の「強く豊かな日本」投資枠に12.2兆円 片山財務相「大幅な増加との指摘は当たらない」で伝えた。
この日示された「基本的な考え方と見直しの着眼点(案)」は、補助金・基金への「過度な依存は是正すべき」とし、支援の出口を明確にするよう求めた。特に補正予算での措置が長年続いてきた補助金・基金について、それを前提とした予算編成と「決別していく」と記した。着眼点には、外部有識者やEBPM(証拠に基づく政策立案)を使った費用対効果の検証、民間が負担すべきリスクまで公的支援に頼っていないか、目的や手段が近い事業が重なっていないか、などを並べた。
基金については、金利の上昇で資金を寝かせておく機会費用が増えていることを踏まえ、滞留している資金を国庫に返し、複数年度にわたって支出を約束できる国庫債務負担行為に切り替えられないかを点検する。行政改革推進会議は7月30日、基金の新たな予算措置を「3年程度」とするいわゆる「3年ルール」を適用しないと決めており、その代わりに国庫返納の仕組みなどを予算編成の過程で具体化するとしている。見直しを進めるため、会議の下に関係府省庁でつくる「幹事会」を新たに置く。考え方の文書は、令和9年度予算を「予算編成改革元年に相応しい、無駄をそぎ落とした筋肉質な予算」にするとうたった。
賃上げ税制と軽減税率、データで効果を検証
税の特例では、中小企業向けの措置が焦点になる。片山氏の資料「租税特別措置の見直しの進め方」は、賃上げ促進税制や中小企業の法人税の軽減税率などについて、行動を変える効果が実際に出ているかを検証しつつ、財源確保の必要性も踏まえて検討するとした。
検証の場の一つが、政府税制調査会の「税制のEBPMに関する専門家会合」だ。9月1日の第7回会合では、賃上げ促進税制をめぐり、財務省が源泉徴収データを使った約94万社分の全数分析を示した。税額控除の要件となる賃上げ率1.5%や、控除率が上乗せされる2.5%の前後に企業が集まる現象(バンチング)が見られないことから、税制は賃上げにつながっていないと主張した。これに対し中小企業庁は、約1,200社のアンケートを基に、その水準を境に企業数が大きく増えていると反論した。委員からは「中小企業向けについても、廃止が適当である」との意見が出たと資料は記している。
軽減税率については、財務省がリーマン・ショック時の経済対策として導入された経緯を説明し、所得の高い企業にも一律32万円の減税効果が及ぶと指摘した。中小企業庁は、増えた手元資金が人件費や設備投資に使われていると主張したが、委員からは「中小企業の資金繰りは既に正常化しており、廃止が適当」との声が上がった。
専門家会合は10月9日の第8回で事業承継税制を取り上げ、11月上旬の第9回で再び中小企業関係の措置を議題にする予定だ。各府省庁の要望を残すか削るかは、年末の税制改正と予算編成の過程で決まる。
