人が住んでいない住宅に市町村が税を課す仕組みと、取得から2年以内に売る住宅への重い課税を政府に求める議員立法が、衆議院で審議されている。衆議院の議案情報によると、法案名は「非居住住宅税及び超短期所有住宅等の譲渡に係る事業所得等の課税の特例の創設等に関する法律案」で、第221回国会に衆法第36号として提出され、第222回国会の議案一覧でも審議状況は「衆議院で審議中」と記載されている。議案審議経過情報によると、付託年月日は令和8年(2026年)10月5日、付託委員会は国土交通委員会で、提出者は森ようすけ氏ほか3名、提出会派は国民民主党・無所属クラブである。
市町村が人の住んでいない住宅に課す新税
要綱と提出時法律案によると、この法案は政府に二つの課税の仕組みを作らせる内容で、法案そのものが税を定めるわけではない。一つ目が「非居住住宅税」である。
第4条は、基本方針として次の内容を挙げる。市町村は、住宅の供給の促進に関する施策に要する費用に充てるため、その市町村の区域内の住宅価格等高騰地域にある非居住住宅に対し、その非居住住宅と敷地になっている土地の価格を課税標準として、所有者に非居住住宅税を課することができる。使途を住宅供給の施策に限っており、使い道を定めずに一般財源とする形ではない。
課税の対象となる「非居住住宅」は、第2条で「人の居住の用に供されていると認められない住宅」と定義されている。「住宅」は「人の居住の用に供される家屋又は家屋の部分」で、一戸建てだけでなく集合住宅の一戸も含む書き方になっている。
空き家であれば一律に課すわけではない。第4条は、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情によってその所有する住宅が非居住住宅となった者には、非居住住宅税を課することができないとしている。単身赴任や入院で住まなくなった住宅を課税から外す趣旨である。
税率については、第4条は「住宅価格等高騰地域において住宅の投機的取引がもたらす非居住住宅の保有に起因する住宅の供給の減少により住宅の価格及び家賃が高騰している状況の是正のため実効性のあるものとなるよう定める」とするだけで、数字は書かれていない。家屋と土地の価格を課税標準に置く組み立ては固定資産税と同じで、固定資産税では家屋の評価そのものの基準が国の側で見直されている(家屋の固定資産税、2027年度の評価基準を引き上げへ 木造1.11から1.16に 総務省が改正案、10月20日まで意見募集)。
2年以内に売ると個人は分離、法人は上乗せ
二つ目が、短期間で転売される住宅への課税の特例である。対象となる「超短期所有住宅等」は、第2条で「個人又は法人が他の者から取得をした日の翌日から引き続き所有していた期間が2年以下である住宅」と、その敷地になっている土地または土地の上に存する権利と定義されている。相続や新築ではなく、他人から取得して2年以内に手放す住宅が線引きの対象になる。
第5条は、個人と法人で別の方式を挙げる。個人が超短期所有住宅等を譲渡した場合は、その譲渡による事業所得と雑所得を他の所得と区分し、その金額に応じて所得税と住民税を課す。条文が挙げるのは事業所得と雑所得で、譲渡所得は書かれていない。法人が譲渡した場合は、その譲渡益について、通常の法人税とは別に特別の税率で追加の課税を行う方式か、他の所得と区分して通常の法人税率に加算した税率で課税する方式のいずれかによって法人税を課すとしている。
国や地方公共団体、これらに準ずる法人に対する譲渡による事業所得等には課することができない。公共用地の取得などに応じた売却を対象から外す規定である。税率等についても、非居住住宅税と同じく「是正のため実効性のあるものとなるよう定める」という書き方で、数字は入っていない。
対象地域は特別区・指定都市・保養地 誰が線を引くかは書いていない
第1条は、この法律が対象とする場所を「都の特別区及び地方自治法第252条の19第1項の指定都市並びに保養地の所在する市町村の区域内の一定の地域」と定めている。東京23区と政令で指定された大都市、それに保養地がある市町村に限った法案で、全国一律に空き家へ課税する内容ではない。
ただし、課税の対象となる「住宅価格等高騰地域」の定義は、第2条の「住宅の投機的取引及びこれがもたらす非居住住宅の保有に起因する住宅の供給の減少により住宅の価格及び家賃が高騰している地域」という説明だけである。どの地域が該当するのかを誰がどの手続で決めるのかは、条文に書かれていない。「保養地」についても定義の規定はない。
課税がいつ始まるのかも、この法案だけでは決まらない。第3条は、非居住住宅税と譲渡の課税特例を創設するために必要な法制上の措置を「この法律の施行後1年以内を目途として講ずる」としており、法律自体の施行は附則で公布の日とされている。成立しても、実際に課税するための法律は改めて政府が用意する段取りになる。第6条は、政府が高騰の実態に係る調査を行うと定めている。
第7条では、国が市町村による非居住住宅税の徴収等の確保や、住宅の供給の促進等のための法定外普通税・法定外目的税の新設等を支援し、自治体が講ずる住宅供給の促進策に要する費用を補助するとしている。提出理由には「住宅価格等高騰地域への居住を希望する者の需要に応じた住宅の供給を促進するため」と記されている。
全国の空き家は900万2000戸 東京都の空き家率は10.9%
空き家そのものは増え続けている。総務省が令和6年9月25日に公表した令和5年住宅・土地統計調査の確報集計によると、2023年10月1日現在の空き家は900万2000戸で過去最多となった。2018年の848万9000戸から51万3000戸増え、総住宅数に占める空き家の割合は13.6%から13.8%に上がって過去最高となった。1993年から2023年までの30年間で空き家数はおよそ2倍になっている。
| 空き家の種類 | 戸数 | 空き家総数に占める割合 |
|---|---|---|
| 総数 | 900万2000戸 | 100.0% |
| 賃貸用の空き家 | 443万6000戸 | 49.3% |
| 二次的住宅(別荘など) | 38万4000戸 | 4.3% |
| 売却用の空き家 | 32万6000戸 | 3.6% |
| 上の3種類を除く空き家 | 385万6000戸 | 42.8% |
内訳をみると、借り手や買い手を探している住宅と別荘を除いた空き家は385万6000戸で、2018年から36万9000戸増えた。この区分は総住宅数の5.9%にあたる。法案が課税対象に置く「人の居住の用に供されていると認められない住宅」は、統計上のこれらの区分とは定義が一致しないため、どの範囲にどれだけ課税されるのかは統計からそのまま読み取ることはできない。
地域差も大きい。同じ確報集計では、東京都の空き家率は10.9%で、全国の13.8%を下回っている。東京都は総住宅数に占める共同住宅の割合が71.6%で全国で最も高く、住宅の形も他の地域と違う。価格と家賃が高い地域の空き家率がむしろ低いという関係になっており、法案が狙う地域で課税対象がどれだけあるかは、国の側の調査を待つことになる。
価格の実態調査を求める一方、国の価格指数は公表が止まっている
法案は政府に住宅価格と家賃の高騰の実態調査を求めているが、国が毎月公表している住宅の価格指数は、現在は更新が止まっている。国土交通省の不動産価格指数のページには令和8年9月28日付で公表延期の告知が出ており、「不動産価格指数(令和8年6月・第2四半期分)」については算出時のプログラムに不具合が発生し、原因の確認作業のため指数の算出と精査に時間を要していると説明している。同じ理由で、令和8年4月以降に公開を予定していた令和8年1月から5月分、令和7年第4四半期分、令和8年第1四半期分についても公表を延期しているとしている。
このため、同ページの更新情報で最も新しい公表は令和8年3月31日の「令和7年12月・第4四半期分」である。この指数は2010年平均を100として住宅と商業用不動産の価格の動きを示すもので、国が住宅価格の動きを定点で把握する数値である。実態調査を求める法案の審議と、その土台になる指数の公表が止まっている状況が重なっている。
審議の進み方も遅い。法案は10月5日に国土交通委員会に付託されてから2週間余りが経ったが、議案審議経過情報の審査終了年月日と審査結果の欄はいずれも空欄で、委員会での採決には至っていない。議員立法が付託の段階にとどまる例は他にもあり、経済産業委員会に付託された自動車の脱炭素化を進める法案も同じ状態にある(自動車の脱炭素推進法案、衆院経産委に付託 電動自動車の補助拡充と推進計画の策定を国に求める)。賛成者は24人で、参議院側の受理や付託の記録はまだない。
