農林水産省は10月30日、9月の米穀流通の動向(集荷、販売、民間在庫)を公表した。9月末の全国の民間在庫は255万玄米トンで、前年同月より58万トン多い。農水省は「最も高い在庫水準」としている。このうち前年に収穫した令和7年産米(1年古米)が105万トン残り、前年同月の44万トンの2倍を超えた。一方、産地の出荷業者が9月末までに卸売業者などと結んだ令和8年産米(新米)の契約数量は66.9万トンで、前年同月の54%にとどまった。9月末の数字が残る平成26年産以降で最も少ない。
9月末の在庫255万トン、うち前年産が105万トン
民間在庫は、全農や経済連、農協、集荷業者が持つ「出荷段階」と、卸売業者などが持つ「販売段階」の在庫を合わせたものだ。毎月の調査の対象は、年間の玄米仕入れが500トン以上の出荷業者と、4000トン以上の卸売業者などで、農水省によると民間の流通在庫全体のおよそ8割をとらえている。令和7年3月以降は、政府が売り渡した備蓄米の数量も含む。量はもみすりをした後の玄米に換算して示す。
9月末の内訳は、出荷段階が206万トンで前年同月より61万トン多く、販売段階は50万トンで3万トン少ない。収穫年で分けると、令和8年産が142万トン、令和7年産が105万トンだった(年産の特定できない未検査米などがあるため、合計は255万トンと一致しない)。
9月末の在庫を過去6年と比べると、令和8年の多さは前年産の残りによるところが大きい。新米の量は前年同月の146万トンを下回るが、1年古米は令和2年以降の9月末で31万〜77万トンだったのに対し、今年は105万トンに上る。
| 9月末 | 民間在庫(計) | うち当年産 | うち1年古米 |
|---|---|---|---|
| 令和2年 | 190万トン | 124万トン | 61万トン |
| 令和3年 | 214万トン | 129万トン | 77万トン |
| 令和4年 | 199万トン | 112万トン | 71万トン |
| 令和5年 | 199万トン | 131万トン | 56万トン |
| 令和6年 | 149万トン | 112万トン | 31万トン |
| 令和7年 | 198万トン | 146万トン | 44万トン |
| 令和8年 | 255万トン | 142万トン | 105万トン |
出典: 農林水産省「民間在庫の推移(速報)」
前年産の残りは、主に産地側に積み上がっている。出荷段階の1年古米は76万トンで、前年同月の26万トンのおよそ3倍。販売段階でも1年古米が29万トンと前年同月の18万トンより多く、卸売業者などが持つ新米は15万トンと前年同月の29万トンのほぼ半分にとどまる。
農水省は、需要見通し(令和8年7月〜9年6月で695万〜712万玄米トン)に対する在庫の割合である在庫率を36〜37%と試算している。
新米の集荷は前年並み、契約は前年の54%
出荷業者が令和8年産米を9月末までに集めた量(集荷数量)は98.9万トンで、前年同月より4.1万トン多い。前年同月の104%にあたる。これに対し、卸売業者などと数量を決めて契約した量(契約数量)は66.9万トンで、前年同月より57.3万トン少ない。契約のあと実際に引き取られた量(販売数量)は7.4万トンで、前年同月の61%だった。
契約数量には、確認書などで数量だけを決めた契約も含まれる。平成26年産以降の9月末では110万〜155万トンで推移し、毎年その時点の集荷数量を上回っていた。令和8年産は66.9万トンで、集荷数量の98.9万トンを初めて下回った。
出荷業者の新米の契約数量(9月末時点)(万トン)
数値で見る(単位: 万トン)
| 項目 | 万トン |
|---|---|
| 2021 | 141.4 |
| 2022 | 146.5 |
| 2023 | 154.7 |
| 2024 | 142.6 |
| 2025 | 124.2 |
| 2026 | 66.9 |
産地別では、集荷量が最も多い新潟が15万1300トンで前年同時期の97%だったが、契約数量は6万6900トンで37%にとどまった。北海道は集荷8万9100トン(前年同時期の84%)、契約17万7500トン(94%)と、契約が集荷を上回った。青森は集荷3万9600トンで前年同時期の49%、契約は27%だった。農水省は、集荷量に対する契約や販売の比率は「集荷が一定程度進んだ段階で掲載」するとしている。
小売向けの販売価格、前年同月の81.4%
年間の玄米仕入れが5万トン以上の米穀販売事業者を対象に、精米の販売数量と販売価格を前年同月と比べた指数も公表された。対象事業者の取扱量は年間約150万トンで、令和7年産の生産量747万トンの約2割にあたる。売り渡された政府備蓄米も含む。
9月の販売価格は、スーパーなど小売事業者向けが前年同月の81.4%、中食・外食事業者向けが109.5%だった。小売向けは令和8年1月の124.5%から下がり続け、8月に91.9%と前年を下回った。資料に載る令和5年1月以降で、小売向けが前年同月を下回ったのは8月が初めてで、9月はさらに下がった。中食・外食向けも1月の150.3%から縮んでいる。
前年の令和7年は、小売向けの販売価格が4月に前年同月の187.3%まで上がり、9月も138.7%だった。今年9月の81.4%は、その前年からの下げにあたる。
9月の販売数量は全体で前年同月の98.4%。小売事業者向けは104.4%と前年を上回り、中食・外食事業者向けは91.4%だった。小売向けの数量は4月に84.7%、5月に85.0%まで落ちていたが、7月に101.0%と前年を上回り、8月103.3%、9月104.4%と増えている。新型コロナウイルス感染症の前の令和元年同月と比べた参考値では、9月の販売数量は全体で86.8%だった。
新米の価格と在庫の行方
民間在庫は例年、新米の集荷が進む10月から12月にかけて増え、年明けから減っていく。令和7年の9月末は198万トンで、12月末には340万トンまで増えた。今年は9月末の時点で255万トンあり、前年産の105万トンを抱えたまま新米の集荷が本格化する。
前年産の在庫は、7月末の152万トンから8月末に126万トン、9月末に105万トンと、2か月で47万トン減った。前年の同じ時期は7月末の83万トンから9月末の44万トンへ39万トン減っており、今年の方が減った量は多いが、出発点が高かったため9月末でも前年の2倍を超えて残る。
9月の新米の卸値(相対取引価格)は、新米の取引価格、60キロ2万1293円 前年同月より42%安く 民間在庫は最高水準で伝えた。今年の収穫量の見込みは2026年産米の予想収穫量710万トン、7万6000トン減 作況単収指数102 福島・新潟・秋田で減少にまとめている。
前年産が多く残る中で、卸売業者などが新米の契約をどこまで結ぶかは、10月以降の集荷・契約の数字に表れる。契約数量が集荷数量を下回ったままなら、出荷段階の在庫はさらに膨らむ。
