政府は10月9日午後6時から6時半まで、令和8年の第14回経済財政諮問会議を総理大臣官邸4階の大会議室で開いた。議題は「中長期経済財政計画の推進に向けた具体化」の1本である。民間の有識者議員4人は、骨太方針2026で定めた計画を、単なる将来見通しではなく、政策の実行・点検・見直しを定期的かつ継続的に行う政府全体の運営の枠組みとして具体化するよう提言した。

「中長期経済財政計画」とは何か

有識者議員の資料によると、骨太方針2026は予算編成の抜本改革と中長期の経済財政運営の方向性を「中長期経済財政計画」と位置づけた。目標として、実質1%超・名目3%超の成長率、2040年度の国内投資額250兆円、国内総生産(GDP)1100兆円弱、国と地方の債務残高の対GDP比の安定的な引き下げを掲げている。基礎的財政収支(PB)は単年度ではなく複数年度で管理する。

計画が骨太方針の原案に初めて示された段階は政府、骨太方針2026の原案を提示 「責任ある積極財政」掲げ実質1%超の成長へで伝えた。9月30日の前回会議は令和9年度予算の編成方針が主題で、その内容は経済財政諮問会議、令和9年度予算を「責任ある積極財政元年」に 補正予算依存からの脱却を提言 令和7年度補正の物価高対策約3兆円は見直し 長期金利は3%程度にまとめている。今回は、決めた目標をどう管理していくかという運用の段階に議論が移った。

提言を出したのは筒井義信、永濱利廣、南場智子、若田部昌澄の4氏である。

一つの見通しに頼らず、兆しの段階で動く

提言の中心は、経済見通しの扱い方である。中長期の経済・財政の姿は一つの見通しだけを前提にせず、成長戦略が期待した効果を十分に発揮しない場合や、生産性や成長率が想定と違った場合も含め、異なる前提に基づく複数のケースをあらかじめ分析しておくべきだとした。歳出・歳入、利払い費、国債発行額、債務残高の対GDP比がどうなり得るかを幅広く把握する。内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」の現状投影ケースも参考に使い、試算と実績を比べて分析手法の改善につなげるよう求めた。

そのうえで、債務残高の対GDP比が上がるまで見直しを待つと、後で急激な調整を迫られると指摘した。目標の実現が難しくなるおそれを示す重要な兆しが見えた段階で要因を分析し、必要に応じて成長戦略の再構築や歳出・歳入の見直しにつなげる仕組みを作るべきだとしている。

点検は毎年度行い、経済・財政の実績や政策効果、計画の進捗を分析して諮問会議に報告する。実施体制や点検の時期、公表の方法まで具体化するよう求めた。原則5年ごとには計画全体の在り方も含めて包括的に検証する。参考資料によると、最初の包括検証は原則として2030年度末までの状況に基づいて行う。推進体制は、これまで改革の進捗管理を担ってきた「経済・財政一体改革推進委員会」を発展させて再構築する。

ショックへの柔軟性と、首相の指示

提言は、景気や市場の動きに左右される指標で単年度の財政を厳格に管理するのではなく、複数年度の視点で運営すべきだとした。世界的な経済危機や感染症、大規模地震などで債務残高の対GDP比が一時的に悪化しても、経済の回復に合わせて改善させるよう計画的に取り組み、その方針を事前に示しておくべきだという。参考資料は海外の例として、政府の資産の動向まで分析するニュージーランドや、女性の就業が増えた場合に長期の財政調整の必要額が減ると試算したドイツ、経済見通しの変化が財政目標の達成に与える影響を定量的に分析するイギリスを挙げた。

個別の分野では、AIやロボットの活用と人手不足への対応、社会保障サービスの確保と現役世代の負担軽減の両立、インフラの集約・更新などを重点テーマの例に挙げた。成長戦略や地域未来戦略について、分野別の投資額の進捗管理(370兆円の全体的な進捗管理など)や翌年度以降の見直しにつなげる仕組みが、年末の予算編成の過程で作られるよう諮問会議としても後押しすべきだとしている。

首相官邸の発表によると、高市首相は会議の締めくくりに、計画の具体化の中で経済・財政の状況と政策効果を継続的に点検し、中長期の経済財政運営の考え方や見通しを「透明性高く、一貫してお示ししてまいります」と述べた。そのうえで、内閣府特命担当相(経済財政政策)の城内実氏を中心に関係閣僚が連携して計画の具体化と推進体制の再編を進め、諸外国の例も参考に検討した結果を諮問会議に報告するよう指示した。