国家公務員と地方公務員が予備自衛官を兼ねやすくする特例法が、2026年6月17日に令和8年法律第40号として公布された。正式名称は「予備自衛官等の職務の円滑な遂行を図るための国家公務員及び地方公務員の兼業の特例に関する法律」で、附則は「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」と定めている。遅くとも2027年6月16日までに施行される。

予備自衛官は、退職した元自衛官などが平素はそれぞれの職業に就きながら、有事や災害の際に招集命令を受けて自衛官となる制度だ。防衛省は予備自衛官、即応予備自衛官、予備自衛官補の3つを設けている。即応予備自衛官は第一線部隊の一員として現職自衛官とともに任務につき、予備自衛官補は自衛官未経験者などから採用されて教育訓練の修了後に予備自衛官へ任用される。

予備自衛官を兼ねる公務員は約1500人

小泉進次郎防衛相は2026年5月15日の衆院安全保障委員会で、予備自衛官と即応予備自衛官の充足状況について「令和6年度末において、予備自衛官は約七割の約三万二千人、そして即応予備自衛官は約五割の約三千九百人」と答弁した。令和8年版防衛白書によると、2026年3月31日現在の法令上の定員は予備自衛官が4万7900人、即応予備自衛官が7981人、予備自衛官補が4621人である。

このうち公務員が占める割合は小さい。防衛省の廣瀬政府参考人は同じ委員会で、予備自衛官を兼業する国家公務員と地方公務員は令和6年度末時点で約1500人だと述べた。内訳は予備自衛官が約1300人、即応予備自衛官が約50人、予備自衛官補が約100人である。それぞれが全体に占める割合は、予備自衛官が約4%、即応予備自衛官が約1%、予備自衛官補が約3%だった。国家公務員と地方公務員の別では、国家公務員が約350人、地方公務員が約1110人である。

常備の自衛官も定員を割り込んでいる。防衛白書は、自衛官の定員24万7154人に対し2026年3月31日現在の現員が21万7701人で、充足率が88.1%だったと記した。詳しくは自衛官の充足率88.1% 定員24万7154人に対し現員21万7701人 最前線を担う「士」は57.8%にとどまる 令和8年版防衛白書で伝えた。常備の自衛官も予備自衛官も足りない、というのが制度全体の現状である。

招集のたびの許可が不要になる

新法の核心は、手続きの簡略化にある。法案要綱によると、一般職の国家公務員は予備自衛官などに任用されようとするときに、所轄庁の長の承認を受けることができる。この承認を受けた職員が予備自衛官の職務に従事することについては、国家公務員法が定める兼業の許可を要しない。地方公務員についても、任命権者の承認を受ければ地方公務員法の兼業許可が不要になる。

さらに、承認を受けた職員が招集命令、訓練招集命令、教育訓練招集命令を受け、勤務時間中に招集へ応じるため職場で勤務しない場合、その時間には職務に専念する義務の規定が適用されない。国家公務員の場合、勤務しなかった1時間につき勤務1時間当たりの給与額が減額される。裁判所職員にも同様の規定が準用され、自衛隊員についても準用されたうえで給与の扱いは政令で定める。

第7条は「国は、広報活動、啓発活動その他の活動を通じて、予備自衛官等の職務の重要性に対する国民の関心と理解を深めるよう努めなければならない」と国の責務を定めた。

数値目標は設定していない

法案は2026年4月3日に内閣が第221回国会(特別会)へ提出した。衆院では5月11日に安全保障委員会へ付託され、15日に委員会、19日に本会議で可決。参院では6月1日に外交防衛委員会へ付託され、9日に委員会、10日に本会議で可決された。参院本会議は押しボタン式の採決で、日本共産党と社会民主党が反対した。

施行でどれだけ増えるのかについて、政府は見込みを示していない。チームみらいの山田瑛理氏が効果予測と目標設定をただしたのに対し、廣瀬政府参考人は、勤務先や職務の内容が様々であることなどを挙げ「一概に数値目標の設定や予算規模の試算を行うことは困難である」と答弁した。小泉氏も、法案の効果は一概に答えることが困難だとしたうえで、特例によって国家公務員らの意欲向上につながり、新たに志願するきっかけになり得ると述べるにとどめた。

災害時に予備自衛官が実際に動いた規模も、委員会で示された。小泉氏によると、東日本大震災では約3か月間で即応予備自衛官1352人、予備自衛官294人が活動した。2024年の能登半島地震では予備自衛官20人が衛生支援、即応予備自衛官183人が物資輸送などに従事した。自衛隊の災害派遣そのものの件数は自衛隊の災害派遣は令和7年度339件で過去10年最少 8割超が離島からの急患輸送 山火事対応は39件で5年最多の通りである。

手当と企業向け給付金

処遇面の見直しも並行して進んでいる。防衛白書によると、2026年4月1日時点の手当は、予備自衛官が月1万3100円と訓練招集手当1日1万1600円、即応予備自衛官が月1万9700円と訓練招集手当1日1万8200〜2万7200円、予備自衛官補が教育訓練招集手当1日9300円である。1任期を優良な成績で勤務した場合の勤続報奨金は、予備自衛官が7万円、即応予備自衛官が21万5000円となっている。

雇用する側への給付金もある。即応予備自衛官雇用企業給付金は月4万2500円、予備自衛官補出身の予備自衛官が即応予備自衛官に任用された場合の即応予備自衛官育成協力企業給付金は1人あたり56万円だ。個人で事業を営む予備自衛官らに対しては、1日3万4000円の予備自衛官事業継続給付金が2025年度に新設された。

廣瀬政府参考人は、こうした処遇改善により令和7年度の退職時の志願者数が約3000人となり、前年度の約2200人から増える見通しだと答弁した。防衛省は年内に国家安全保障戦略など「三文書」を改定する方針で、小泉氏は予備自衛官補の採用促進に向けた制度の拡充や訓練実施場所の拡大を検討すると述べている。