立憲民主党の徳永エリ政務調査会長と熊谷裕人税制調査会長は10月7日、常任幹事会終了後に国会内で記者会見を開き、政府の「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入」に対する党の考え方と対案を発表した。対案は、2026年度内に住民税非課税世帯などへ給付を行い、2027年4月に「給付付き税額控除」の理念に沿った簡易版・暫定版の給付制度を導入し、2029年4月に本格的な給付付き税額控除へ移行する3段階である。熊谷税制調査会長は政府の就業者負担軽減支援金について、低所得者・無所得者が対象から外れる点などを挙げ、反対する考えを明確にした。

公約の「食料品消費税0%」から給付中心へ

立憲民主党は昨年の参院選で、本格的な給付付き税額控除を導入するまでの「つなぎ」措置として、原則1年・最大2年の食料品消費税率0%を公約に掲げていた。熊谷税制調査会長はその経緯を説明したうえで、「時間のかかる消費減税より給付の方が即効性があるのではないのか」と述べ、給付を中心とした対策に転換する理由を示した。

党が同日公表した文書「政府の『飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入』に対する考え方」は、公約を掲げた昨年時点と比べて「フェーズが大きく変わってきている」として、4つの数字を並べている。ドル円相場は2025年の年平均149.6円に対し2026年1〜9月平均が158.5円で、一時163円台を記録した。WTI原油先物価格は2025年の年平均64.73ドルに対し2026年1〜9月平均が83.76ドルで、一時112ドル台をつけた。食料品の値上げ品目数は2025年通年の2万609品目に対し、2026年は10月調査時点で2万1187品目に達している。物価上昇率に占める食料品(軽減税率の対象)以外の割合は、2025年の年平均46.6%から2026年8月には60%になった。党はそれぞれ日本銀行、日本エネルギー経済研究所、帝国データバンク、総務省の資料をもとに作成したとしている。

こうした変化を踏まえ、党の文書は、食料品消費税減税は値上げによって効果が大幅に減殺される可能性が高く、食料品以外に広がる物価高への手立てになりにくいと指摘。「効果の薄い2年間限定の『減税』に巨額の財源と多大なるコスト・労力を充てるよりも、中低所得者に対象を限定して手厚く『給付』を行う方が、政策効果は高い」としている。財源の裏付けのない減税は財政への市場の信認を一層低下させ、さらなる金利高・円安を招く恐れがあるとの懸念も示した。公約の扱いは、立憲民主党、参院選公約「食料品消費税0%」の転換を議論 政府案は2027年4月から2年間1% 熊谷税調会長「しっかりと議論をした上で」のとおり9月30日の党内会議から議論されていたもので、10月7日の常任幹事会で党の方針として了承された。

対案は3段階 2026年度内の給付から2029年4月の本格導入へ

第1段階は、2026年度内のできるだけ早い時期に、住民税非課税世帯と同世帯に属する子どもなどへ給付を行うことである。党の文書は参考として、令和6年度補正予算の低所得世帯向け給付金が0.5兆円規模で、住民税非課税世帯1世帯あたり3万円、子どもがいる場合は1人あたり2万円を加算する内容だったことを挙げた。財源には予備費の残額として中東情勢等対応予備費1.9兆円と一般予備費0.7兆円を示している。予備費の残高の推移は予備費1118億円の使用を9月29日に閣議決定 食料品の消費税1%引き下げの準備に781億円、就業者負担軽減支援金の準備に327億円 残額は7171億円で扱った。

第2段階は、2027年4月から簡易版・暫定版の給付制度を導入する。政府が2027年4月から整備する「所得に連動したきめ細かな給付」の仕組みを使い、低所得者・無所得者だけでなく中間層も対象に含める。所得が低い人ほど手厚く、所得水準が上がるにつれて給付額が緩やかに減って消える形とする。

第3段階は、2029年4月からの本格的な給付付き税額控除である。支援額は簡易版・暫定版と同じ水準とし、給付に税額控除を組み合わせる。その際に既存の所得控除を整理し、勤労所得だけでなく金融所得や資産の状況を把握する仕組みも整備するとしている。

政府案への反対理由は「対象から外れる人」と「税額控除がない」こと

政府が9月15日に閣議決定した大綱は、飲食料品の消費税率を令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間、国税0.78%と地方税0.22%を合わせた1%に引き下げる。これと並行して、令和9年4月から就業者負担軽減支援金を導入する。支援金は、所得下限額を超える勤労所得がある人を対象に、所得に応じて支援額が増える区間と減る区間を設け、定額支援額・就業促進特例加算・支援基本額・こども加算で構成する。大綱は、給付の閾値となる所得水準や給付額について「法律の規定内容や政令で定める際の考え方を記載」するとしており、金額そのものは決まっていない。制度の骨格は「給付付き税額控除」2029年度に本格導入、2027年4月から支援金で先行 閣議決定した基本方針の中身 支給額は今も「検討し定める」の基本方針から引き継がれている。

熊谷税制調査会長はこの支援金について、中低所得の現役勤労者のみを対象としているため、働いていても収入の少ない人、年金で生活する高齢者、病気や障がいで働けない人といった低所得者・無所得者が対象から外れると問題視した。2年間の減税が終わって税率が戻った際、支援金の対象外の人には負担増だけが残るとも指摘した。大綱には「純負担基準額」という基準も置かれており、税・社会保険料の負担額から公的年金等を引いた純負担が現役並みである中低所得の高齢者などを対象に含める仕組みは用意されているが、負担のない層までは届かない。

もう一つの理由は制度の性格である。党の文書は、社会保障国民会議がもともと給付付き税額控除の導入を目指して議論を始めたのに対し、今回の制度は「『税額控除』のない、就労促進を目的とした単なる『給付』」であり、仕組みとしても理念としても給付付き税額控除とは異なるとしている。党が目指す制度は、高所得者ほど減税効果の大きい所得控除から低所得者に手厚い税額控除へ転換し、所得が低い人ほど負担率が高くなる消費税の逆進性への対策を制度として組み込むものだと説明した。

財源と法案提出は今後の検討

財源について熊谷税制調査会長は、年度内の給付は予備費で賄えるとの見通しを示した。2027年度以降については、所得税や法人税、資産課税の見直し、税外収入などを検討し、赤字国債に頼らず恒久財源を確保する考えを説明した。具体的にどの財源からいくら確保するかは、今後、党内で議論するとした。

徳永政務調査会長は、具体的な給付額や対象範囲は引き続き検討するとし、給付に伴う自治体の事務負担についてはこれまで実施した方法を活用し、職員の負担をできるだけ抑える仕組みを考えたいと述べた。対案の法案提出については、他の野党との協議を踏まえて検討する方針を示した。そのうえで徳永政務調査会長は、経済情勢の変化と今回の考え方を国民に発信し「丁寧に理解していただけるように説明していきたい」と述べた。