厚生労働省の社会保障審議会生活保護基準部会が10月6日に開かれ、生活保護費に上乗せされる児童養育加算・母子加算・冬季加算と、年末に支給される期末一時扶助について、金額が妥当かどうかをどう検証するかの方法が示された。母子加算をめぐっては、金額の検証と合わせて「制度趣旨や給付対象の実態に即した名称への見直し」を検討する方針も盛り込まれた。
加算は本体で賄えない分を別に足す仕組み
生活保護のうち日常の食費や光熱費にあたるのが生活扶助で、年齢・世帯人数・地域(級地)で決まる第1類費・第2類費が「本体」にあたる。部会の資料は、この本体を、冬の暖房費や年末年始の出費といった季節的な需要を除いた平均的な消費を賄う水準として位置づけており、本体では賄えない分を加算や一時扶助で別に手当てしてきた、と整理している。検証の対象になった4つは、いずれもこの「本体の外」の部分だ。
母子加算は、ひとり親世帯(母子世帯・父子世帯等)の受給世帯に支給される。令和8年4月時点の月額は、在宅で児童1人の場合、1級地が1万8800円、2級地が1万7400円、3級地が1万6100円。児童が2人の世帯は1級地で4800円を加え、3人以上は1人増すごとに2900円を加える。入院患者や施設入所者は児童1人で1万9820円となっている。
母子加算は「ひとり親相当」に換算して差を測る
母子加算の金額は、ひとり親だからこそ余計にかかる費用(かかり増し費用)をいくらと見るかで決まる。前回の平成29年検証では、夫婦と子1人の世帯の消費構造から、ひとり親と子1人の世帯が同程度の生活を送るのに必要な生活扶助相当支出を13.0万円と算出し、実際のひとり親世帯の生活扶助本体11.3万円との差額1.7万円をかかり増し費用とした。
今回示されたのは、この考え方を令和6年全国家計構造調査のデータで組み直す案である。資料は、生活扶助本体の検証と同じ回帰式に「ひとり親ダミー」を足すだけの方法に3つの懸念があるとした。子のいない世帯との差も混ざって係数の解釈が難しくなること、同じ3人世帯に夫婦子1人とひとり親子2人が混在するため親の人数とこどもの人数を分けて制御できないこと、ひとり親世帯は所得が低い傾向があるので係数に「生活水準の違い」が混ざることだ。
そのうえで、ふたり親世帯の支出を「ひとり親に換算した額」に置き換えて被説明変数とし、世帯人員ではなくこどもの人数で調整し、世帯年収の対数を説明変数に加える方法を提案した。対象は年収階級第1・十分位のうち、子を1〜3人持つ勤労者世帯に限る。名称については、9月の第61回部会で「父子世帯も支給されているので、中立的な名称でひとり親加算とするなど、名称変更をしてはどうか」との意見が出ていた。
児童養育加算は塾代や月謝で見る
児童養育加算は、こどもの貧困対策の観点から、健全育成にかかる費用として「学校外活動費」に着目して検証する。夫婦と子1人の世帯で、低所得世帯(年収階級第1・十分位)と中位所得層(第3・五分位)の支出の差を測る方法だ。合わせて第1・十分位とその近くの第2・十分位の差も確認し、中位所得層の水準を参照することが妥当かどうかを検証する。学校外活動費には、塾や予備校の補習教育費、スポーツ・音楽・語学の月謝、書籍代、映画・演劇の入場料などが含まれる。文部科学省の子供の学習費調査で、学校段階別・年収階級別の支出の分布も補足的に確認する。
検討課題には「名称の変更も含め、こどもの健全育成のために使われるようにするための効果的な方策の検討」が挙がった。第61回部会では、実費支給にすると申請手続や自治体の事務負担が大きくなるため定額支給でよいという意見、ほかの保護費とは別振り込みにして使い道を誘導する案、「学校外活動費加算」のように中身を反映した名称にする案が出ている。子どもの貧困は数字の上では改善の方向にあるが、ひとり親世帯に限ると様子が違う。相対的貧困率15.0% 2021年の15.4%から低下 子どもの貧困率は11.0% 貧困線は年138万円 2025年国民生活基礎調査のとおり、子どもがいる現役世帯のうち大人が一人の世帯員の貧困率は44.7%で、ほぼ動いていない。
冬季加算と期末一時扶助は10〜11月との差で測る
冬季加算と期末一時扶助は、季節による出費の増え方で測る。全国家計構造調査の調査月が10〜11月であることを踏まえ、低所得世帯のその2か月の平均支出を基準にして各月と比べる。冬季加算は、冬(12〜3月)に増える費目と期間、世帯人数別の較差(3人世帯を100とした指数)、地区別の水準を順に確認し、夏(7〜9月)に増える支出も合わせて調べる。期末一時扶助は、冬季加算の対象費目を除いて12月に増える支出だけを取り出し、世帯人数別(単身世帯を100)と級地別(1級地の1を100)の較差と水準を見る。資料によると、夫婦と子1人の勤労者世帯(年収第1・十分位)では、12月の生活扶助相当支出が10〜11月平均に比べて2割増と突出している。いずれも家計調査の2021〜2025年の特別集計を使う。
同じ日の部会には、生活扶助本体の年齢・世帯人数・地域別の体系をどう検証するかの資料も出された。こちらは従来の手法を踏襲し、令和6年全国家計構造調査の個別世帯データで回帰分析を行う。サンプル4万653世帯のうち、生活保護を受給していると推察される世帯は343世帯だった。回帰分析では標本抽出に応じた集計用乗率で重み付けをする点が、前回の令和4年検証から改められる。部会は10月6日時点で検証の方法を詰めている段階で、加算額そのものの結論は出ていない。
