公正取引委員会は10月29日、業務用厨房機器を製造販売するマルゼン(東京都台東区、資本金31億6495万円)に対し、改正前の下請代金支払遅延等防止法(下請法)に基づく勧告を行った。厨房機器の製造や修理、運送・設置を委託した下請け385者に現金で代金を支払う際、代金に一定率を掛けた額を「事務手数料及び金利」の名目で差し引き、2025年4月から2026年1月までに計6088万8107円を減額したと認定した。公取委は翌30日、建設機械や自動車などに使うボルト等を製造販売する日工(大阪府八尾市、資本金3000万円)にも、下請け16者への代金から計1712万8945円を減額したとして勧告した。両社とも減額分の全額を勧告前に支払った。

385者への代金から「事務手数料及び金利」を差し引く

公取委の発表と勧告書によると、マルゼンは2024年12月から2025年12月までの間に、個人または資本金3億円以下の事業者385者に、3種類の仕事を委託していた。自社が販売し、または製造を請け負う業務用厨房機器の製造、自社が請け負う厨房機器の修理、自社が請け負う厨房機器の運送と設置である。公取委の概要資料は、対象の製品の例としてフライヤーと回転釜の写真を載せている。

マルゼンは、385者に現金で代金を支払う場合、代金の額に一定率を掛けた額を「事務手数料及び金利」の名目で差し引くことにしていた。差し引いた期間は2025年4月から2026年1月まで、総額は6088万8107円にのぼる。率の数字や1者ごとの額は、公表された資料には載っていない(勧告書の別表は添付が省かれている)。

下請法第4条第1項第3号は、下請け側に責任がないのに、発注のときに決めた代金の額を減らすことを禁じている。公取委は、マルゼンの差し引きがこれに当たると判断した。委託の当時、マルゼンは資本金3億円超の事業者で、385者は個人か資本金3億円以下の事業者だったため、下請法の「親事業者」と「下請事業者」の関係にあった。

マルゼンは2026年9月25日、385者に計6088万8107円を支払った。公取委は「不利益額の全部」が支払われたとしている。

日工は約20年前から減額 手形から現金払いへ切り替えたとき

日工の勧告書によると、同社は2024年11月から2025年11月までの間に、個人または資本金1000万円以下の事業者16者に、自社が販売するボルト等の製造を委託した。日工は資本金1000万円超3億円以下の事業者で、この場合も下請法の対象になる。

日工は2024年12月から2025年12月までの間、「自社の利益を確保するため」、代金の額に一定率を掛けるなどして得た額を「値引き」の名目で差し引いた。総額は1712万8945円で、2026年10月5日に16者へ全額を支払った。

公取委の概要資料は、減額が始まった経緯にも触れている。日工は約20年前、代金の支払い手段を手形払いから現金払いに切り替えた際に減額を始めた。概要資料によると、下請法の下では、下請け側の希望で一時的に手形払いから現金払いに切り替える場合に限り、短期の調達金利に相当する額を差し引いて支払うこと(金利引き)が認められていた。日工は切り替えた後も現金払いを長く続けていたため、公取委は「一時的な変更には該当しない」と判断した。

概要資料はさらに、下請代金の減額について、値引き、協賛金、歩引きなどの名目や方法、金額の多少を問わず、下請け側との合意があっても違反になると説明している。

1月から「取適法」 手形払いは禁止に

下請法は2025年の改正で、2026年1月から「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(取適法)に名前が変わった。公取委の資料は、2025年12月までに行われた委託には改正前の下請法を、2026年1月以降の委託には取適法を当てはめるとしている。今回の2件はいずれも2025年12月までの委託が対象のため、改正前の下請法で勧告した。マルゼンの差し引きは2026年1月まで続いたが、対象はいずれも2025年12月までに委託した仕事の代金である。

取適法は、代金の減額を引き続き禁じている(第5条第1項第3号)。そのうえで、日工の概要資料によると、取適法では手形払いが禁止されたため、手形払いから現金払いに変える際の金利引きも認められなくなった。手形での支払いを取適法違反と認めた例には、10月9日の給湯器のパーパスに公取委が勧告 手形払いで2282万円の支払い遅延 旧下請法と取適法を同時に適用がある。

用語も変わった。「下請代金」は「製造委託等代金」に、「親事業者」は「委託事業者」に、「下請事業者」は「中小受託事業者」になった。勧告の中身は、この新しい用語で書かれている。

勧告の中身 取締役会での確認と取引先への通知

両社への勧告書の主文は、いずれも5項目からなる。

1つ目は、取締役会の決議で2点を確認することだ。マルゼンについては、現金払いの際に「事務手数料及び金利」を差し引いた行為が改正前の下請法に違反するものだったこと、日工については、利益の確保のために一定率を掛けるなどした額を減額した行為が違反だったことを、それぞれ確認する。あわせて、今後は中小受託事業者に責任がないのに製造委託等代金を減らさないことも決議で確認する。

2つ目は、発注担当者に取適法の研修を行うなど、社内体制を整えるために必要な措置を講じること。3つ目は、勧告を受けたことと勧告書(別表を除く)の内容、採った措置を、自社の役員と従業員に周知すること。4つ目は、同じ内容を取引先の中小受託事業者に通知すること。5つ目は、1〜4に基づいて採った措置を速やかに公取委に報告することである。

マルゼンの件は公取委の本局(経済取引局取引部)が、日工の件は近畿中国四国事務所が担当した。

今年度の勧告19件、減額を含むのは6件

公取委の取適法勧告一覧によると、2026年度に入ってからの勧告は10月30日時点で19件ある。このうち、代金の減額を違反と認めた行為を含むのは、マルゼンと日工を合わせて6件だ。名目は「システム利用料」「調整部品」「振込手数料」などさまざまで、マルゼンの385者は6件の中で最も多い。

19件のうち11件は、型を無償で保管させた行為を含む。その代表例は王子コンテナー、下請法違反で公取委が勧告 140者に印版など9610個を無償で保管させる 13者には未払いで、取適法への改正と施行後の勧告の傾向は下請法は今年1月に「取適法」へ 施行後の勧告14件のうち9件は「金型の保管費用」 トリドールには1億4741万円の返還指示で伝えた。

勧告日 事業者 減額の名目・方法 相手 減額の総額
10月30日 日工 「値引き」(一定率を乗じるなど) 16者 1712万8945円
10月29日 マルゼン 「事務手数料及び金利」 385者 6088万8107円
10月9日 パーパス 振込手数料 一覧に記載なし 計19万830円
9月9日 トリドールホールディングス 「システム利用料」(1.1%) 37者 1億4741万1330円
7月16日 天龍工業 「調整部品」 14者 544万5240円
5月12日 琉球倉庫運輸 運賃の算定方法 16者 3777万6571円
2026年度の取適法(下請法)勧告のうち、代金の減額を含む6件(トリドールは2024年8月から2025年12月までに減じた額。パーパスは実際の振込手数料を超えて差し引いた15万7100円と、振込手数料として差し引いた3万3730円の計)

出典: 公正取引委員会「取適法勧告一覧(令和8年度)」