防衛省の令和8年版防衛白書によると、防衛生産基盤強化法に基づいて防衛大臣が認定した「装備品安定製造等確保計画」は、2025年度が計164件だった。内訳は大企業が39件、中小企業などが125件で、中小企業などが大企業の3倍を超えた。白書は、防衛事業からの撤退や事業規模の縮小を決断する企業が断続的に現れているとして、装備品を作る裾野の企業を支える必要性を強調している。

中小企業などの認定が2年で13件から125件へ

図表「装備品安定製造等確保計画の認定実績」によると、制度が始まった2023年度の認定は大企業23件・中小企業など13件の計36件だった。2024年度は大企業46件・中小企業など75件の計121件、2025年度は大企業39件・中小企業など125件の計164件で、2年で4.5倍に増えた。白書は、2025年度の164件のうち124件が中小企業による取組だったと記している。中小企業などの125件には一般社団法人1件が含まれる。

認定金額の伸びはさらに大きい。中小企業などへの認定額は2023年度が8億円、2024年度が80億円、2025年度が121億円。大企業は91億円、154億円、133億円と推移しており、2024年度には2倍近い差があったが、2025年度は133億円対121億円まで縮まった。年度合計では99億円、234億円、254億円となる。

国が直接契約して対価を払う仕組み

防衛生産基盤強化法は2023年に施行された。装備品を作る事業者が「特定取組」の計画を出し、防衛大臣が基本方針に従って認定すると、防衛省が認定後に事業者と直接契約を結び、契約の定めに従って遅滞なく対価を支払う。民間向けと併用する設備の取得でも認定を受けられる。

特定取組は4つに分かれる。原材料の国産化・備蓄や代替素材の研究開発にあたる「供給網強靱化」、最新設備の導入や人工知能による検査工程の自動化を含む「製造工程効率化」、情報システムの強化や社内人材育成の「サイバーセキュリティ強化」、製造設備の整備や技術・ノウハウの習得を通じた「事業承継など」である。

白書は、安定的な製造を損なうリスクとして、外国政府の輸出規制で原材料の輸入が難しくなること、老朽化した設備が更新されず納入遅延や要求性能未達になること、工程にマルウェアやスパイウェアが混入した部品が入ること、サイバー攻撃で性能情報が流出すること、そして事業継続が困難になって防衛事業から撤退することの5つを挙げた。

戦闘機は1000社以上、護衛艦は8000社以上

日本は装備品を製造する国営工場(工廠)を持たない。白書は、防衛省から直接受注を受ける大企業(プライム企業)だけでなく、サプライヤーと呼ばれる多くの中小受託事業者に大きく依存していると説明し、戦車や戦闘機は1000社以上、護衛艦は8000社以上の企業が各種部品の製造や組立てに携わっているとも指摘されている、と記した。

企業が投資に踏み切りにくい理由も並べた。顧客が基本的に防衛省・自衛隊のみであるため生産数が極めて限定的で、投資回収の機会が限られること。多品種少量生産を求められ、装備品の運用期間が長いため長期にわたる製造体制の確保が要ること。高度な機能・性能の要求や情報保全措置への対応に多大な経営資源が要ること。そして防衛事業に忌避観やレピュテーションリスクを抱く企業が依然として存在すること、である。

サイバー攻撃の脅威も具体例を挙げて記された。2021年には中国軍が関与している可能性が高いとされるサイバー攻撃集団によって、防衛関連企業を含む国内の約200の企業や研究機関などに大規模なサイバー攻撃が実行されたことが公表された。2024年には日本の研究機関が管理する通信機器が侵害され、サーバが不正アクセスを受けて業務に関する情報が漏えいしたことが公表されている。

政府は2022年12月に策定した国家安全保障戦略で、防衛生産・技術基盤を「わが国の防衛力そのもの」と位置づけ、抜本的に強化する方針を示した。認定制度はその具体策の一つにあたる。装備品そのものの価格も上がっており、防衛装備品の取得価格、3年で5〜7割上昇 哨戒艦は1隻89億円から143億円に 計画の為替前提は1ドル108円、今年7月は157〜163円台で示したとおり、限られた予算でどれだけの数をそろえられるかという問題と裏表になっている。予算の規模そのものについては日本の国防費は892億ドル、対GDP比1.28% 主要9か国で下から2番目 一人当たりは約7万円で米国の3分の1以下 令和8年版防衛白書で扱った。