総務省は10月9日、「公的要請に応える郵便局データ活用に関するアドバイザリーボード」の第1回会合をWEB会議で開いた。郵便局が業務で持つデータを、公的機関の求めに応じて提供する際の考え方や運用について有識者から助言を得る場で、初回の議題には「総務省統計局からの要請について」が立った。統計局は、日本郵便が持つ「配達原簿」の情報を国勢調査に使いたいとして、2027年6月の試験調査で実際にテストする考えを示した。

統計局の要請は「配達原簿」の情報

配達原簿は、郵便物や荷物の配達に必要な配達先の情報を記録した管理簿だ。統計局の資料によると、想定する使い道は二つある。

一つは国勢調査の郵送名簿づくりだ。住民基本台帳などの行政記録をもとに作った名簿では、住民票を置いていない世帯などを捕捉できない。その穴を埋めるため、日本郵便から配達原簿情報の一部の提供を受け、できる限り正確な名簿を作る。未回答の世帯が実際に住んでいるかどうかの確認にも使う。

もう一つは、事業所に関する統計調査の対象を抽出する「事業所母集団データベース」の整備だ。配達原簿から空き家(空き室)になっていると推定される情報を得て、廃業したとみられる事業所の把握に役立てる。

いずれも日本郵便に対し、対応できるかどうかの検討を含めて依頼している段階だという。

調査員が集めきれなくなっている

要請の背景には、国勢調査を支える調査員の担い手不足がある。2025年の令和7年国勢調査は過去最少の59.3万人の調査員で実施した。インターネット回答は47.3%(速報値)と最も多い回答方法になり、調査員による回収は19.3%(同)まで下がった。調査の実測人口は日本の人口は2026年9月時点で1億2265万人 1年間で54万人減 2025年国勢調査の実測は1億2297万2528人で、推計より24万6496人少なかったで伝えている。

一方で調査員の確保は難しさを増し、市町村が職員を回している。調査員に占める市町村職員の割合は令和2年調査の14.1%から令和7年調査は17.2%になった。約4分の1の市町村は職員を動員せずに済んだが、約2割の市町村では調査員の半数以上を職員が占めた。

統計局は令和7年調査で、市町村が調査書類を郵送する「郵送配布方式」を一部地域で試した。茨城県と東京都のオートロックマンションのほか、能登半島地震で調査員の確保が難しかった石川県輪島市、珠洲市、穴水町でも併用した。次の令和12年(2030年)調査に向けて、この方式の拡充やインターネット回答の拡大を検討し、行政情報や民間データの活用も視野に入れる。

2027年6月の試験調査で検証

統計局は2026年12月ごろに「令和12年国勢調査有識者会議」を立ち上げる予定だ。第1次試験調査は2027年6月29日を期日とし、調査員が書類を配る方式(約1万1400世帯)と、配達原簿情報を活用した郵送配布方式(約4200世帯)を比べる。郵送配布方式は大阪市天王寺区、島根県松江市、同県邑南町で行う。

日程案では、10〜12月にアドバイザリーボードで審議して試験調査の計画案を作り、12月から2027年3月にかけて総務大臣への承認申請と、配達原簿情報を使った郵送名簿の整備を進める。結果を踏まえ、2028年・2029年の試験調査や2030年の本調査での活用を検証する。

「他人の秘密」との線引きが論点

郵便法は8条で、日本郵便が扱う信書の秘密を侵してはならないとし、郵便の業務で知り得た「他人の秘密」を守る義務も定めている。総務省の資料によると、転居届や配達原簿に関する情報は、個々の信書の内容が推し量られるものではないため信書の秘密には当たらないが、「他人の秘密」には当たると整理されてきた。

他人の秘密は原則として第三者に提供できない。ただ、情報を使う利益が秘密を守る利益を上回ると比べて判断できる場合には提供できるとされ、総務省と個人情報保護委員会が所管する郵便分野の個人情報保護ガイドラインの解説に事例を定めている。これまでに、空き家の所有者の連絡先を探す自治体への転居届情報の提供(2020年3月運用開始)、大規模災害時の被災者情報の提供(2024年1月の能登半島地震で運用)、弁護士会照会への提供(2023年6月運用開始)、地方税の調査への提供(2026年4月運用開始)が認められた。いずれも、住民票を移さずに転居して所在がつかめない相手などの新住所を、個別の照会に応じて伝える形だ。

新しいアドバイザリーボードは郵政行政部長の懇談会として開かれ、構成員の任期は2年。検討事項には、新たな公的要請を踏まえたガイドライン解説の改訂と、既存の4事例(空き家、災害、税、弁護士会照会)の具体的な運用への助言を挙げた。会議は原則公開とし、資料と議事要旨も原則として総務省のホームページで公表する。統計局の要請は、この助言の枠組みのもとで、年内に試験調査の計画案へ落とし込まれる。